山本博幸

長崎を舞台にした小説や童話、短歌などを作っています。物語の舞台になった場所を思い浮かべ…

山本博幸

長崎を舞台にした小説や童話、短歌などを作っています。物語の舞台になった場所を思い浮かべて、読んでもらえれるとうれしいです。興味があるのは、千々石ミゲルと伊東静雄と野呂邦暢、諫早一揆、それに核兵器廃絶と世界平和。これからも作品をアップしていきますので、ご意見をお願いします。

記事一覧

俳句とエッセー⑲『 海山村Ⅱ - 種を蒔く - 小さな仏壇の話 』 津 田 緋 沙 子

  種 を 蒔 く 目 覚 ま し 時 計 胸 に 抱 き ゐ し 朝 寝 か な 種 蒔 や 育 苗 箱 の 長 き 列 遠 山 は む ら さ き 里 は 種 …

山本博幸
2日前
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俳句とエッセー⑱『 海山村Ⅱ - 掌 の か た ち - 子 年 考 』 津 田 緋 沙 子

  掌 の か た ち 少 年 の ひ み つ 鳥 の 巣 見 つ け た る 鳥 の 巣 や 窪 め た る 掌 の か た ち し て 春 分 の 日 の ペ …

山本博幸
12日前
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津 田 緋 沙 子 と い う 抒 情

俳句とエッセー 津田緋沙子『海山村Ⅱ』              写真とキャプション 山本博幸   平 成 二 十 九 …

山本博幸
2週間前
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崩 れ ゆ く 時 間 の 果 て に

我等が町へようこそ。 あるいは「我らが町」という言い方は間違いかもしれない。 かつて我らのものだったこの町も今や君たちのものだ。 君たちが唯一の住人であり、君たち…

山本博幸
2週間前
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俳句とエッセー⑰『 海山村Ⅱ - 幸行のごとく-文字とは日本語とは 』 津 田 緋 沙 子

  行 幸 の ご と く 初 小 春 日 や ホ ー ム の 窓 の み な 開 き し 師 の 文 の 青 き イ ン ク 字 竜 の 玉 渓 流 の 鴛 鳶 …

山本博幸
2週間前
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短 歌 随 想 ⑾『 斎 藤 茂 吉 』

  わ が 病      や う や く 癒 え て 心 に 染(し) む               朝 の 経 よ む 穉(おさな) 等(ら) の こ ゑ     斎  藤   茂  …

山本博幸
3週間前

俳句とエッセー⑯『 海 山 村 Ⅱ - 小 鳥 来 る 』 津 田 緋 沙 子

  小 鳥 来 る 初 秋 刀 魚 父 の 忌 日 の 近 づ き ぬ 大 釜 を 磨 く 媼 ら 小 鳥 来 る 小 鳥 来 る 開 け 放 た れ し 農 具 小 屋 渡 り 鳥 龍 の ご と く に …

山本博幸
3週間前

俳句とエッセー⑮『 海 山 村 Ⅱ - 峡 の 空』 津 田 緋 沙 子

 峡  の  空 立 秋 に 届 き し 手 紙 手 漉 き 和 紙 鮭 の 身 の 立 つ ほ か ほ か の に ぎ り 飯 三 さ い の お て が み ご…

山本博幸
1か月前
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短 歌 随 想 ㈩『 松 下 竜 一 』

  泥のごとできそこないし豆腐投げ 怒れる夜の …

山本博幸
1か月前
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短 歌 随 想 ㈨『 与 謝 野 晶 子 』

  金 色 の ち ひ さ き 鳥 の か た ち し て                 銀 杏 ち る な り 夕 日…

山本博幸
1か月前

俳句とエッセー⑭『 海 山 村 Ⅱ - あ れ や こ れ』 津 田 緋 沙 子

 あ れ や こ れ 若 竹 の 箸 の 香 れ り 山 の 飯 渓 谷 を 七 曲 り 来 る 鮎 の 川 古 里 の 川 に 父 と 子 鮎 を 釣 る 笹 …

山本博幸
2か月前
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『 ウ ク ラ イ ナ 』

 論文の修正がやっとひと段落したところで、朝美からラインが届いた。〈また、ロシアが核兵器をちらつかせて、脅しをかけているわ。許せん!〉〈ほんと、ひどいね!狂気と…

山本博幸
3か月前
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俳句とエッセー⑬『 海 山 村 Ⅱ - 僕 の 名 刺』 津 田 緋 沙 子

  俺 の 名 刺 集 落 を あ げ て 野 焼 く や 峡 深 く こ の 土 が 俺 の 名 刺 と 春 田 打 つ 終 電 の 出 て が が ん ぼ の …

山本博幸
4か月前
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短 歌 随 想 ㈧『 高 橋 恵 子 』

   原 爆 忌       青 田 連 な る 畦 道 に             無 心 に 祈 る 農 夫 が 一 人  高 橋 惠 子  ミレーの「晩鐘」をほうふつとさせ…

山本博幸
4か月前

短 歌 随 想 ㈦『 寺 山 修 司 』

  マ ッ チ 擦 る      つ か の ま 海 に 霧 ふ か し         身 捨 つ る ほ ど の 祖 国 は あ り や   寺山 修司  昭和29年の短歌研究新人賞『…

山本博幸
5か月前

短歌随想㈥『重信房子と宮沢賢治』

   銃 口 に       ジ ャ ス ミ ン の 花 無 雑 作 に           挿 し て 岩 場 を 歩 き ゆ く 君   重 信 房 子              …

山本博幸
5か月前
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俳句とエッセー⑲『 海山村Ⅱ - 種を蒔く - 小さな仏壇の話 』 津 田 緋 沙 子

俳句とエッセー⑲『 海山村Ⅱ - 種を蒔く - 小さな仏壇の話 』 津 田 緋 沙 子

  種 を 蒔 く
目 覚 ま し 時 計 胸 に 抱 き ゐ し 朝 寝 か な
種 蒔 や 育 苗 箱 の 長 き 列
遠 山 は む ら さ き 里 は 種 を 蒔 く
剪 定 の 鋏 の 音 や 二 人 ら し
風 船 の バ ス に 乗 り く る 日 曜 日
二 人

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俳句とエッセー⑱『 海山村Ⅱ - 掌 の か た ち - 子 年 考 』 津 田 緋 沙 子

俳句とエッセー⑱『 海山村Ⅱ - 掌 の か た ち - 子 年 考 』 津 田 緋 沙 子

  掌 の か た ち
少 年 の ひ み つ 鳥 の 巣 見 つ け た る
鳥 の 巣 や 窪 め た る 掌 の か た ち し て
春 分 の 日 の ペ ン 先 の 影 淡 し
段 畑 の そ の 天 辺 の 揚 雲 雀
揚 雲 雀 ナ ナ ハ ン バ イ ク 疾 走

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津  田  緋  沙  子  と  い  う  抒  情

津 田 緋 沙 子 と い う 抒 情

俳句とエッセー 津田緋沙子『海山村Ⅱ』
             写真とキャプション 山本博幸

  平 成 二 十 九 年

  巡 礼 の 旅
鉛 筆 も 子 の お さ が り や 春うらら

巡 礼 の 旅 の 終 は り の 薮 椿

聖 人 の 赦 し の 眼 致 命 祭

山 峡 の 秘 湯

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崩 れ ゆ く 時 間 の 果 て に

崩 れ ゆ く 時 間 の 果 て に

我等が町へようこそ。
あるいは「我らが町」という言い方は間違いかもしれない。
かつて我らのものだったこの町も今や君たちのものだ。
君たちが唯一の住人であり、君たちが法だ。
君たちはここへ何をしに来たのだろうか。
何を見に来たのだろうか。
何であるにせよ 君たちの好きなようにすればよい。
例え君がこの町に火をはなちもやし尽くそうとも誰も口出しはしない。
しかし君は何をしたとしても、すべてがうまくいく

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俳句とエッセー⑰『 海山村Ⅱ - 幸行のごとく-文字とは日本語とは 』 津 田 緋 沙 子

俳句とエッセー⑰『 海山村Ⅱ - 幸行のごとく-文字とは日本語とは 』 津 田 緋 沙 子

  行 幸 の ご と く
初 小 春 日 や ホ ー ム の 窓 の み な 開 き し
師 の 文 の 青 き イ ン ク 字 竜 の 玉
渓 流 の 鴛 鳶 追 う て ゆ く タ 日
行 幸 の ご と く 大 河 の 鴛 鴛 の 列
綿 虫 や 迷 ひ 込 み た る

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短 歌 随 想 ⑾『 斎 藤 茂 吉  』

短 歌 随 想 ⑾『 斎 藤 茂 吉 』



  わ が 病
     や う や く 癒 え て 心 に 染(し) む
              朝 の 経 よ む 穉(おさな) 等(ら) の こ ゑ  

  斎  藤   茂  吉

 
 1920年、長崎医専教授だった茂吉はスペイン風邪にかかり、50日近く病に伏した。
 日本でも38万人が死亡したが、第1次世界大戦の最中、特にドイツ軍で広がり、敗因の一つとなった。

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俳句とエッセー⑯『 海 山 村 Ⅱ - 小 鳥 来 る 』 津 田 緋 沙 子

俳句とエッセー⑯『 海 山 村 Ⅱ - 小 鳥 来 る 』 津 田 緋 沙 子

  小 鳥 来 る
初 秋 刀 魚 父 の 忌 日 の 近 づ き ぬ
大 釜 を 磨 く 媼 ら 小 鳥 来 る
小 鳥 来 る 開 け 放 た れ し 農 具 小 屋
渡 り 鳥 龍 の ご と く に 明 け の 空
草 刈 る 手 止 め て 見 送 る 渡 り 鳥
黒 板 に 広 が る 世 界 夜 学 生
帆 船 の 来 る 海 原 の 蝶 の ご と




  父 と 私 と

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俳句とエッセー⑮『 海 山 村 Ⅱ - 峡 の 空』 津 田 緋 沙 子

俳句とエッセー⑮『 海 山 村 Ⅱ - 峡 の 空』 津 田 緋 沙 子

 峡  の  空
立 秋 に 届 き し 手 紙 手 漉 き 和 紙
鮭 の 身 の 立 つ ほ か ほ か の に ぎ り 飯
三 さ い の お て が み ご つ こ ほ う せ ん か
燕 帰 る そ の 日 を 記 し 農 暦
秋 燕 や 青 深 深 と 峡 の 空

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短 歌 随 想 ㈨『 与 謝 野 晶 子  』

短 歌 随 想 ㈨『 与 謝 野 晶 子 』



  金 色 の ち ひ さ き 鳥 の か た ち し て
                銀 杏 ち る な り
夕 日 の 岡 に
  

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俳句とエッセー⑭『 海 山 村 Ⅱ - あ れ や こ れ』 津 田 緋 沙 子

俳句とエッセー⑭『 海 山 村 Ⅱ - あ れ や こ れ』 津 田 緋 沙 子

 あ れ や こ れ
若 竹 の 箸 の 香 れ り 山 の 飯
渓 谷 を 七 曲 り 来 る 鮎 の 川
古 里 の 川 に 父 と 子 鮎 を 釣 る
笹 芭 の 鮎 届 き た る 解 禁 日
金 魚 み な 名 前 で 呼 ば る 小 学 校
金 魚 屋 の 主 バ ッ

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『 ウ ク ラ イ ナ 』

『 ウ ク ラ イ ナ 』

 論文の修正がやっとひと段落したところで、朝美からラインが届いた。〈また、ロシアが核兵器をちらつかせて、脅しをかけているわ。許せん!〉〈ほんと、ひどいね!狂気としか思えない〉
〈私たちも抗議の意思を示すべきだよ〉
〈会長に同感!何をやろうか?〉
〈そこなのよ、問題は。和葉の考えは?〉
〈うーん……ダメ。今は脳死状態だわ〉
〈微力だけど、無力じゃない……違う?〉
〈懐かしい。高校生の頃を思い出す〉

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俳句とエッセー⑬『 海 山 村 Ⅱ - 僕 の 名 刺』 津 田 緋 沙 子

俳句とエッセー⑬『 海 山 村 Ⅱ - 僕 の 名 刺』 津 田 緋 沙 子

  俺 の 名 刺
集 落 を あ げ て 野 焼 く や 峡 深 く
こ の 土 が 俺 の 名 刺 と 春 田 打 つ
終 電 の 出 て が が ん ぼ の 駅 と な る
ひ と り ぼ つ ち 水 族 館 に 海 月 見 る
蟇 鳴 く や 里 い ち め ん の 水

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短 歌 随 想 ㈧『 高 橋 恵 子 』

短 歌 随 想 ㈧『 高 橋 恵 子 』



   原 爆 忌
      青 田 連 な る 畦 道 に
            無 心 に 祈 る 農 夫 が 一 人  高 橋 惠 子


 ミレーの「晩鐘」をほうふつとさせる静かで真剣な祈りの情景が、絵画的な風景の中に見事に表現された印象的な一首である。
 標歌は、昨年の諫早市民短歌大会の選者選第1位の一つであり、なおかつ、出詠者による互選でも第1位を獲得した歌である。
 この大

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短 歌 随 想 ㈦『 寺 山 修 司 』

短 歌 随 想 ㈦『 寺 山 修 司 』


  マ ッ チ 擦 る
     つ か の ま 海 に 霧 ふ か し
        身 捨 つ る ほ ど の 祖 国 は あ り や   寺山 修司

 昭和29年の短歌研究新人賞『チェホフ祭』の一首。
 ここでの「祖国」は、国家、国民を挙げて戦争に盲進した挙句の無条件降伏から9年後の日本。
 日本人だけで戦没者は310万人を数え、うち240万人が海外での死没。私たちの生命や暮しを守っ

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短歌随想㈥『重信房子と宮沢賢治』

短歌随想㈥『重信房子と宮沢賢治』


   銃 口 に

      ジ ャ ス ミ ン の 花 無 雑 作 に

          挿 し て 岩 場 を 歩 き ゆ く 君   重 信 房 子              


 作者は言わずと知れた女性テロリストで、日本赤軍の元最高幹部。
 服役中にがんを患い、昨年5月に懲役20年の刑期を満了して出所した。
 拘置所の房の前にある桜を花守のように愛でて短歌を詠み出したとい

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