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俳句とエッセー㉒『 海山村Ⅱ - アフリカの切手 -新米 』 津 田 緋 沙 子


   ア フ リ カ の 切 手


新  米  や  塩  む  す  び  し  て  一  日  め
新  米  の  よ  き  名  並  び  し  出  荷  か  な
み  ど  り  ご  の  初  お  目  見  え  や  秋  祭
長  老  の  杖  の  指  揮  め  く  秋  祭
百  年  を  変  は  ら  ぬ  里  や  松  手  入
ち  ぎ  れ  雲  秋  の  ゆ  き  交  ふ  交  差  点
ア  フ  リ  カ  の  切  手  見  て  を  り  文  化  の  日
 
 

  新   米


 九月末、数日で稲田の黄金色が一気に深みを増し、どつしりと
なった。 温かみのあるグラデーションが里一面に広がって、 つい
足を止めて眺めるほど美しい。もうすぐ稲刈りが始まる。今年も
ちゃんとここまできた。
 これまでは螢が飛んだら田植え、町民運動会が終わったら稲刈
りと言われてきたが、近年の異常気象でずいぶん様変わりしてい
る。今年は六月の豪雨続きでなかなか田植えができなかった。連
日水路は水が溢れるように流れ、青蛙が手足を広げて流されてい
くのを見かけたりすると切なかった。その姿が、なすすべ のない
人の姿にも思えた。
 やっと田植えをした後の猛暑、稲はぐんぐん伸びたが、水の見
回り、ジャンボタニシの駆除、消毒、畔草刈り…。農家の人の朝
は早かった。 そしてつい先日の 「これまでに例の無い猛台風」 で
ある。
 毎年収穫したばかりの新米をご近所や知人からいただく。 「う
ちのお米食べてみて」と渡してくれる笑顔が新米と同じように輝
いている。わが家ではまず塩むすびを作る。おかずは自家製漬物
と味噌汁だけ。大切なことを忘れないためのささやかな祝祭であ
る。  (了)

 下記に、これまで公開した津田緋沙子さんの俳句とエッセーをまとめましたので、ご一読いただければと思います。

 下記に第7回宮古島文学賞第1席『水平線』の掲載アドレスを掲げています。
 宮古島で生きる女性の生と死を豊かな自然と文化の中で見つめた作品です。ご一読くだればと思います。

suiheisen.pdf (miyakobunka.com)


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