見出し画像

俳句とエッセー㉑『 海山村Ⅱ - シンプルに -草刈 』 津 田 緋 沙 子


   シ ン プ ル に


草  刈  つ  て  捨  田  の  ー  つ  現  れ  し
シ  ン  プ  ル  に  生  き  む  と  思  ふ  冷  奴
ご  苦  労  と  お  の  れ  労  り  冷  奴
夏  空  や  合  宿  拠  点  の  大  食  堂
ス  リ  ッ  パ  は  ロ  コ  コ  花  柄  夏  館
ひ  つ  そ  り  と  都  の  食  堂  水  中  花
ま  だ  手  離  せ  ぬ  亡  き  母  の  流  燈  よ
 
 

  草   刈


 長梅雨、豪雨、尋常ではない雨の降り様で、私の小さな畑の草
の伸び方も尋常でない。怖るべしという勢いのまさに「席巻」 で
ある。
 たまの雨上がりに草取を決意したが、 むんむんたる湿気は耐え
難く、ぬかるみに足をとられ、根にしこたま泥を抱えてくる草の
重さに予想以上の体力を強いられた。体力、気力の限界、「今年
は畑を捨てる」とすぐに白旗、捨畑宣言である。
 雑草のせいだけではない。避難勧告や指示が度々出る日々、ト
マトも茄子もオクラも七割方倒れ実の損傷がひどい。未練と痛み
はあるが自分大事を取るのだ。
 かくて私の畑は草取りの段階を越え、かなりの草刈を必要とす
るところへきている。それでも放っている。あの草の中、南瓜や
西瓜が隠れているかもと眺めながら。
 雨の合間に絶えず草刈機の音が聞こえてくる。その威力たるや
凄い。まさに、
  草  刈  機  私  語  諸  と  も  に  薙  倒  す       谷  口       鐘
である。しかし数日すると刈り跡に早や緑がぐんぐんと…。 これ
も凄い。 この強さ、めげなさこそが今必要だなと納得である。 (了)

梅雨の晴れ間。諫早市長田町から多良連山を望む。地球は神秘に満ちている。

 下記に、これまで公開した津田緋沙子さんの俳句とエッセーをまとめましたので、ご一読いただければと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?