山本博幸

長崎を舞台にした小説や童話、短歌などを作っています。物語の舞台になった場所を思い浮かべ…

山本博幸

長崎を舞台にした小説や童話、短歌などを作っています。物語の舞台になった場所を思い浮かべて、読んでもらえれるとうれしいです。興味があるのは、千々石ミゲルと伊東静雄と野呂邦暢、諫早一揆、それに核兵器廃絶と世界平和。これからも作品をアップしていきますので、ご意見をお願いします。

最近の記事

短 歌 随 想 ⑾『 斎 藤 茂 吉 』

  わ が 病      や う や く 癒 え て 心 に 染(し) む               朝 の 経 よ む 穉(おさな) 等(ら) の こ ゑ     斎  藤   茂  吉    1920年、長崎医専教授だった茂吉はスペイン風邪にかかり、50日近く病に伏した。  日本でも38万人が死亡したが、第1次世界大戦の最中、特にドイツ軍で広がり、敗因の一つとなった。  パリ講和会議では、独り賠償金に反対していたウィルソン米大統領が、スペイン風邪

    • 俳句とエッセー⑯『 海 山 村 Ⅱ - 小 鳥 来 る 』 津 田 緋 沙 子

        小 鳥 来 る 初 秋 刀 魚 父 の 忌 日 の 近 づ き ぬ 大 釜 を 磨 く 媼 ら 小 鳥 来 る 小 鳥 来 る 開 け 放 た れ し 農 具 小 屋 渡 り 鳥 龍 の ご と く に 明 け の 空 草 刈 る 手 止 め て 見 送 る 渡 り 鳥 黒 板 に 広 が る 世 界 夜 学 生 帆 船 の 来 る 海 原 の 蝶 の ご と   父 と 私 と 秋 刀 魚  秋刀魚は子どもの頃よく食べた魚である。父の好物だったせい かも知

      • 俳句とエッセー⑮『 海 山 村 Ⅱ - 峡 の 空』 津 田 緋 沙 子

         峡  の  空 立 秋 に 届 き し 手 紙 手 漉 き 和 紙 鮭 の 身 の 立 つ ほ か ほ か の に ぎ り 飯 三 さ い の お て が み ご つ こ ほ う せ ん か 燕 帰 る そ の 日 を 記 し 農 暦 秋 燕 や 青 深 深 と 峡 の 空 燕 帰 る 幼 ひ と り の そ を 知 れ り 鈴 虫

        • 短 歌 随 想 ㈩『 松 下 竜 一 』

            泥のごとできそこないし豆腐投げ 怒れる夜の まだ明けざらん    松  下  

        短 歌 随 想 ⑾『 斎 藤 茂 吉 』

          短 歌 随 想 ㈨『 与 謝 野 晶 子 』

            金 色 の ち ひ さ き 鳥 の か た ち し て                 銀 杏 ち る な り 夕 日 の 岡 に    与 謝 野  晶 子  一斉に黄葉する銀杏は、大樹ともなればその神

          短 歌 随 想 ㈨『 与 謝 野 晶 子 』

          俳句とエッセー⑭『 海 山 村 Ⅱ - あ れ や こ れ』 津 田 緋 沙 子

           あ れ や こ れ 若 竹 の 箸 の 香 れ り 山 の 飯 渓 谷 を 七 曲 り 来 る 鮎 の 川 古 里 の 川 に 父 と 子 鮎 を 釣 る 笹 芭 の 鮎 届 き た る 解 禁 日 金 魚 み な 名 前 で 呼 ば る 小 学 校 金 魚 屋 の 主 バ ッ ハ を 聴 く 青 年 空 蝉 や 子 の 残 し

          俳句とエッセー⑭『 海 山 村 Ⅱ - あ れ や こ れ』 津 田 緋 沙 子

          『 ウ ク ラ イ ナ 』

           論文の修正がやっとひと段落したところで、朝美からラインが届いた。〈また、ロシアが核兵器をちらつかせて、脅しをかけているわ。許せん!〉〈ほんと、ひどいね!狂気としか思えない〉 〈私たちも抗議の意思を示すべきだよ〉 〈会長に同感!何をやろうか?〉 〈そこなのよ、問題は。和葉の考えは?〉 〈うーん……ダメ。今は脳死状態だわ〉 〈微力だけど、無力じゃない……違う?〉 〈懐かしい。高校生の頃を思い出す〉 〈何か新しい取り組みができないかな、世界の人たちと一緒にさ〉 〈やっぱり、SNS

          『 ウ ク ラ イ ナ 』

          俳句とエッセー⑬『 海 山 村 Ⅱ - 僕 の 名 刺』 津 田 緋 沙 子

            俺 の 名 刺 集 落 を あ げ て 野 焼 く や 峡 深 く こ の 土 が 俺 の 名 刺 と 春 田 打 つ 終 電 の 出 て が が ん ぼ の 駅 と な る ひ と り ぼ つ ち 水 族 館 に 海 月 見 る 蟇 鳴 く や 里 い ち め ん の 水 明 り 耕 転 機 ゆ る り と 止 ま り 蟇

          俳句とエッセー⑬『 海 山 村 Ⅱ - 僕 の 名 刺』 津 田 緋 沙 子

          短 歌 随 想 ㈧『 高 橋 恵 子 』

             原 爆 忌       青 田 連 な る 畦 道 に             無 心 に 祈 る 農 夫 が 一 人  高 橋 惠 子  ミレーの「晩鐘」をほうふつとさせる静かで真剣な祈りの情景が、絵画的な風景の中に見事に表現された印象的な一首である。  標歌は、昨年の諫早市民短歌大会の選者選第1位の一つであり、なおかつ、出詠者による互選でも第1位を獲得した歌である。  この大会で選者選出の入賞歌は12首あったが、互選入賞歌6首と重なったものはこの歌のみだ

          短 歌 随 想 ㈧『 高 橋 恵 子 』

          短 歌 随 想 ㈦『 寺 山 修 司 』

            マ ッ チ 擦 る      つ か の ま 海 に 霧 ふ か し         身 捨 つ る ほ ど の 祖 国 は あ り や   寺山 修司  昭和29年の短歌研究新人賞『チェホフ祭』の一首。  ここでの「祖国」は、国家、国民を挙げて戦争に盲進した挙句の無条件降伏から9年後の日本。  日本人だけで戦没者は310万人を数え、うち240万人が海外での死没。私たちの生命や暮しを守ってくれるはずの国家が、逆に私たちに忍従を強い、生活を破壊し、人殺しを命令し、命の

          短 歌 随 想 ㈦『 寺 山 修 司 』

          短歌随想㈥『重信房子と宮沢賢治』

             銃 口 に       ジ ャ ス ミ ン の 花 無 雑 作 に           挿 し て 岩 場 を 歩 き ゆ く 君   重 信 房 子                作者は言わずと知れた女性テロリストで、日本赤軍の元最高幹部。  服役中にがんを患い、昨年5月に懲役20年の刑期を満了して出所した。  拘置所の房の前にある桜を花守のように愛でて短歌を詠み出したという。カリスマ革命家は、被害者への謝罪や闘争方針の誤りを述べたが、胸のどこかに道半

          短歌随想㈥『重信房子と宮沢賢治』

          俳句とエッセー⑫『 海 山 村 Ⅱ - 海 は 青』 津田緋沙子

            海  は  青 パ ン ジ ー の あ ふ れ ゐ る 町 新 開 地 パ ン ジ ー を 植 ゑ る さ み し さ 消 す や う に 福 分 け と 媼 の く れ し 蕗 の 薹 遠 き 日 の 恩 師 の 声 や 蕗 の 薹 ス マ ー ト ホ ン に 白 旗 上 げ て 春 炬 燵 春 光 に 凱 旋 し て

          俳句とエッセー⑫『 海 山 村 Ⅱ - 海 は 青』 津田緋沙子

          俳句とエッセー⑪『 海 山 村 Ⅱ - 白菜と赤子 』 津田緋沙子

            平 成 三 十 一 年 ・ 令 和 元 年   白 菜 と 赤 子 星 月 夜 豚 売 ら れ ゆ く 高 速 道 磁 石 も て 針 さ が し を り 冬 日 向 白 菜 売 り 赤 子 と 重 さ 競 ひ を り 畔 話 白 菜 ひ と つ 手 渡 さ れ 悼 み 来 て 空 見 上 ぐ れ ば 枇 杷 の 花 ケ セ ラ セ

          俳句とエッセー⑪『 海 山 村 Ⅱ - 白菜と赤子 』 津田緋沙子

          俳句とエッセー⑩『 海 山 村 Ⅱ - 黒葡萄 』 津田緋沙子

             黒  葡  萄 鶏 頭 と 犬 と 眺 む る タ 焼 空 ソ リ ス ト の 喉 す べ り ゆ く 黒 葡 萄 葡 萄 売 る テ ン ト の 列 や 麓 ま で 竜 胆 や 媼 の 背 な の 寵 に 揺 れ 山 下 り る 子 ら 竜 胆 を 振 り な が ら カ タ カ ナ の 電 報 遠 く 文 化 の

          俳句とエッセー⑩『 海 山 村 Ⅱ - 黒葡萄 』 津田緋沙子

          俳句とエッセー⑨『 海 山 村 Ⅱ - 五人と一匹 』 津田緋沙子

             五 人 と 一 匹 鼓 打 つ ご と く 叩 き て 西 瓜 売 る 撫 子 や 稜 石 積 み て 鳥 の 墓 風 に 揺 る る 長 吉 長 兵 衛 へ ち ま 棚 草 の 花 子 に 従 は ず 鄙 暮 し 無 言 て ふ 万 の 声 あ り 草 の 花 分 校 は 五 人 と 一 匹 草 の 花 天 高 し 神

          俳句とエッセー⑨『 海 山 村 Ⅱ - 五人と一匹 』 津田緋沙子

          俳句とエッセー⑧『 海 山 村 Ⅱ - ショパンのリズム 』 津田緋沙子

             シ ョ パ ン の リ ズ ム 雨 だ れ の シ ョ パ ン の リ ズ ム 梅 熟 る る 勢 ひ で 買 ひ た る 実 梅 一 抱 へ 昼 顔 や ろ ば の パ ン 屋 の 通 り ゆ く 昼 顔 や 海 を 争 ふ 日 々 百 年 百 日 紅 若 き 師 の 説 く 近 未 来 フ ラ ス コ の 花 瓶 に 岩

          俳句とエッセー⑧『 海 山 村 Ⅱ - ショパンのリズム 』 津田緋沙子