短 歌 随 想 ㈩『 松 下 竜 一 』
泥のごとできそこないし豆腐投げ
怒れる夜の
まだ明けざらん
松 下 竜 一
1968年自費出版の『豆腐屋の四季』より。
大分県中津市で慎ましく生きる市井の一青年の思いが社会の反響を呼び、翌年に講談社から出版された奇跡の歌集。
当時は若者たちが学生運動にのめり込んだ時代で、作者は模範的な青年像としての世間の眼差しに戸惑い、「悩みぬきヘルメット持たず佐世保へと発つと短く末弟は伝え来」と歌い、この後反公害・反開発の市民運動に取り組み、「砦に拠る」や「暗闇の思想を」や連続企業爆破事件の桐島聡が属した「狼」のリーダー大道寺将司に獄中取材した「狼煙を見よ」など渾身のノンフィクション作品を残した。
1983年3月21日、佐世保港にエンタープライズが15年ぶりに姿を現したとき、思えば私もデモ隊の中にいたのだった。
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