記事一覧
【小説】あなたの人生に幸多からん事を 四歳六か月
「何? 結局、お母さんが行くの?」
玄関で靴を履いている美和子に、居間から出てきた娘の弥生が言った。
大学から東京に出た弥生は、そのまま就職して都内で一人暮らしをしている。
週末、高校の同級生の結婚式があるというので、久しぶりに帰郷していた。
「仕方ないじゃない。あんたに頼めないでしょ?」
美和子が靴紐を結びながらそう言うと、「うーん、お父さんの指定ルート、私、わからないからなぁ
【小説】あなたの人生に幸多からんことを 第三話 二歳三か月
ヨガのクラスが終わった後、時間を取ってほしいと真紀子からLineに連絡がきたのは、木曜日の夜だった。
ヨガスタジオで親しくなった真紀子は、夫の転勤で、一か月後に日本を離れてはタイで暮らすことになっている。
初めての外国暮らしとあって、悩みや不安も尽きないらしく、以前にも増して真紀子からの誘いは多くなったが、明るく前向きな彼女と話すことは、香にとっても楽しい時間だった。
レッスンが終わ
【小説】あなたの人生に幸多からんことを 第二話 生後三日
「ゆかり、お姉ちゃんになったの」
病院に着くなり、誰かれとなくそう言うゆかりに人々は笑顔を向ける。
「まぁ、すごいわねぇ。ゆかりちゃんはいくつ?」
杖をついた老女が訊ねると、ゆかりは5本の指を前に出して、「五歳」と大声で答えた。
隣にいる父親が「すみません」と笑いながら言うと、老女が「お子さん、お生まれになったの?」と尋ねる。
父親は「昨日の夜生まれまして。今日は、娘連れてきたんで
【小説】あなたの人生に幸多からんことを 第一話 生後二十七分
目的の廃墟は、思っていた以上に山の奥深くにあった。
人が通らなくなった細い道には草が生い茂り、木が覆いかぶさっている所もあったが、存在はうっすらと残っていた。
― さすが、モールスさんの情報は確実だな
教えられた道をたどりながら、春樹は高揚する気持ちを抑えられない。
廃墟ML(メーリングリスト)のメンバーのモールスはこの近所に住む人間で、休日はバイクで近隣の山をまわり廃墟探
外資系金融勤務経験からの感想 「ゴールドマンサックスに洗脳された私」
宣伝にのせられた感じで購入、読みました。
ゴールドマンサックスといえば、金融業界の王者な会社と言ってもいいかも。
今は虎ノ門に移りましたが、六本木ヒルズにあった頃は、都内を見渡せる上層階複数のフロアにオフィスがあり、ゴールドマン専用の豪華な入口がありました。映画館にはいる階段のそばだったんですが、ご存じな方も多いかと。
実は私、だいぶ前ですが、ゴールドマンサックスに面接に行った経験があります。