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外資系金融勤務経験からの感想 「ゴールドマンサックスに洗脳された私」

宣伝にのせられた感じで購入、読みました。
ゴールドマンサックスといえば、金融業界の王者な会社と言ってもいいかも。
今は虎ノ門に移りましたが、六本木ヒルズにあった頃は、都内を見渡せる上層階複数のフロアにオフィスがあり、ゴールドマン専用の豪華な入口がありました。映画館にはいる階段のそばだったんですが、ご存じな方も多いかと。

実は私、だいぶ前ですが、ゴールドマンサックスに面接に行った経験があります。
アシスタントのポジションだったんですが、上司となる予定の女性が開口一番、「この会社にはいっても、外国人金融マンと結婚できませんから」って言われまして。
びっくりしすぎてほんと、口をあけたまま完全凍結していたら、その女性管理職の方がはっとされて、「ああ、ごめんなさい。そういう方の面接が続いていたものですから」と言ったんですが、いやもうその面接、他に数人会ったんですが、その言葉しか覚えてません。
階下で待っていたリクルーターの担当者にそれを言ったら、「泉さん、このお話はお断りしましょう」と言われ、結果も聞かずに辞退しています。
わーい!ゴールドマンサックスだー!と大喜びしていたので、かなりがっかりしました。
その後、外資金融企業でゴールドマンサックスから転職された人達に遭遇しています。
正直言って、あまり良い印象はありません。
なんかみんな怖いんだもん。
笑顔なんだけど、目が笑ってないって感じ。使い分けているなという印象があります。
きつい人も多かったんですが、まぁ、そうじゃないとやっていかれないんだろうなぁとも思ったりしました。
もちろん、そういうタイプばかりではないですけれどもね。

んで、本についてですが。
まずこれ、911の前から話が始まっているので、20年以上前って事になります。
いやもう20年なんて、ビジネスやテクノロジーやら考えたら、ものごっつー昔ですよ。
社会や人間の考え方もかなり変わってきています。
この本を読むにあたって、まずそこ、頭にいれておかないといけないと思います。

女性の管理職(この本でいうならマネージングダイレクター)は当時より増えています。
けれど、この本に書かれている白人主義、男性至上主義は今もあります。
ただ、この本の頃と大きく違うのは、いずれの企業も法務やコンプライアンスが当時よりもかなり厳しくなっているので、少なくとも、10年前20年前よりは改善されています。
男性至上主義、女性蔑視のオールドボーイズクラブメンバーも、一応建前はそれなりに持つようになりました。
建前程度でも、ないよりはマシ。
ちなみに、自分の部下や秘書を雇うのに、年若い美人を望む人は今もそこら中にいます。
そんなん、昔も今も全然変わってないない。

個人的に、この本の著者にはまったく共感しませんでした。
大変な事は全部ゴールドマンサックスのせいにしてるし、それを洗脳されていたと表現していますが、能力があるのであれば、同じくらいの給料を出す会社は他にもあります。
本にはいっさい出てきていませんが、能力のあるポテンシャルの高い人には、がんがんヘッドハンターから連絡がはいります。
20年いて、仕事が出来た私!と称するなら、ヘッドハンターから連絡もらわないってないんじゃないのか?って思ったのがまず最初。
なにがなんでもゴールドマンサックスな私でいたいって、正直に書いてほしかったです。
なぜ、その冠が重要だったのか、そこがたぶん一番の核なはず。

あと、読んでいて彼女、メンタルがかなり女子だなと感じました。
なんでも話せる仲間を作りたいと考えて、気の合う男性の部下となんでも共有してるあたり、甘いなぁと思ってしまった次第。女性同士だから、みたいな考え方も、いかにも女子的。
上司と不倫までしてるし、何やっとんねんという感じ。
生き馬の目を抜く世界で、自己抑制も自己管理もできてない、しょっちゅう感情の波にもみくちゃにされていて、こんなんでよくMDやってたなぁと感じました。
あと彼女、とても欲深い。
ゴールドマンサックスのタイトルのもと、もっとお金稼ぐわ!昇進するわ! でも私には家族が一番大事なの!子供ももっと欲しいし、子供との時間ももっと欲しいわ!、仕事より家族の方が大事なのに、ゴールドマンのせいで全部犠牲になってしまっているのよ!って、そりゃないぜ、べいべー。
ただで年収高いわけじゃないんですよ、みんなそれくらい仕事してるから。
ワークライフバランスという言葉が当たり前になってきていますが、これ、なんでも自分の思い通りになる、思い通りにする事を意味してるわけじゃありません。
人間みな、1日24時間しかないし、どこで何に比重を置き、どう選択するか、それぞれ考えて生きています。当然、犠牲になるものもあるし、手放さなければならないものもでてくる。
彼女の上司が、妊娠や育児に対してひじょうに冷たい言葉を彼女に放っていますが、MDになりたいのであれば、そのくらいやらないとだめだって事で。
仕事があんなに忙しくて、ただでさえ生活そのもののバランスも崩れてきているのに、予想していない妊娠のなんと多いことか。
彼女が体調を崩していたり、子供の事で仕事に向かえない時、仲良しの部下がカバーにはいってるんですよ。
それでいいのか、管理職として。
仕事が忙しすぎて、ストレスがすごすぎて流産してしまったって記述になっていて、それは確かにそうなんだけど、その前に、自己管理すべき点はやまほどある。

彼女の上司や同僚の男性陣、ものすごく嫌な連中ですが、たぶん彼女の所属した部署がたまたまそういう人達の集まりだったんじゃないかなと思いました。ゴールドマン全体がこういう感じだったって見方は失礼かと。
上司によって部内の状況、かなり変わりますから。
ちなみに上司の人、なんだかんだいって彼女を昇進させているし、彼女のやらかし(彼らにとって都合の悪い事も含めて)にも警告はしても、制裁はしていないので、そこは見るべき点と思いました。

私の所属した部門のトップが女性だったって事、何度かありますが、正直、女性だからどーしたって事はまったくありませんでした。
子供のいる女性管理職もけっこういましたが、みなさん、驚くほど、家庭や育児関係を仕事に影響させておりませんで。
海外出張も深夜勤務も、笑顔でこなしていらっしゃいました。
見えないところで、ものすごい努力をしているのだと思います。
そういえば、私の知る限り、管理職の女性が産休育休取ったというのは見た事がありません。アソシエイトレベルの方、秘書やアシスタントには産休育休取る人は多くみています。年齢的なものももちろんあるとは思いますが。

ゴールドマンサックスから転職してきた二十代男性、「入社の時、通勤してる時間なんてないから、会社から徒歩で通える場所に住まいを探せと言われた」と言ってました。
会社から補助でるから、港区一等地にも部屋は借りれますが、彼いはく「本当に寝に帰るだけだった」そうです。しかも深夜まで働いて、早朝出勤ですから。
近くの部署で、ゴールドマンサックスにヘッドハントされて退職を決めた女性がおりました。
ひじょうに能力の高い、人としてもとても良い方で期待されていたので直属の上長がとても惜しんでおられましたが、「ゴールドマンだもんなぁ。止める理由がどこにもないよ」と言っておられました。
ゴールドマンサックス、世界にその名を轟かす企業ですから、それだけの理由がそりゃあもうあります。

一番印象に残ったのは、最後の部分でした。
長い間願っていたゴールドマンサックスの退職後、子供のげろとおしっことうんちにまみれ、喧噪と掃除に追われる日々。
あれだけ望んでいた子供との時間が、今度は彼女を苦しめる事になります。
「こんなはずじゃなかった。何十億ものお金を動かしていた私が、いったい今、何やってるっていうの?」
これって、仕事してるしてないにかかわらず、世界中のお母さんたちが感じる事ではなかろうかと思いました。

私の感じたことは、あくまでも外資金融で働いていた経験がある、程度の視点なので、彼女と同じように第一線でがんがん働いて稼いでいた人の見方はまったく違うと思います。
ひとつ、ふと思ったのは、昨日までユニクロのスーツ買うのでもぎりぎりだった人が、いきなりハイブランドのスーツ買って当たり前の世界、しかも自分もそれ買えるくらいの給与もらえる、接待で食べるご飯がひとり数万円当たり前とかなったら、そりゃ狂うよねってそこ。
自分の価値観を崩してしまうのって、とても危険です。


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