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虎に翼 ~働く女性は今も変わらず

NHK朝ドラ、人生初めて見ておりまして、しかもこれ以上ないってくらいハマってます。
昭和前期、女性初の弁護士を目指した猪爪(佐田)寅子が主人公のお話です。

女性の自立、女性の権利、女性史には以前から興味がありました。
フェミニズムでもないし、リベラル派でもありませんが、私達の今があるのは長い歴史の中で権利や自立、そして様々な問題に対して立ち向かい、戦い、そして尽力をつくしてくださった多くの女性たちによって在ると思っています。

中学一年生の時、教科書にあった一枚の写真に目を奪われました。
小柄な女性が、高い場所に座る裁判長に向かって何か伝えている写真でした。
背中しか映っていないその女性のスカートの裾から、シミーズの裾が出ていました。
女性の名前は市川房江さん、裁判官に敢然と抗議の声をあげた時の写真でした。
ああ、この人は女である事よりも、女としてどう見られるかという事よりも大事な、もっと大きなものを知っているのだ、そのために戦っているのだと思いました。
まだ、なぁんにもわかっていない夢見る女の子だった私に、その市川房江さんの姿はものすごく大きなインパクトをもって刻まれました。

「虎に翼」、寅子へのプロポーズを断念した花岡が、地元佐賀に戻った後婚約した事、先んじて法廷に出る事となった久保田先輩が結婚、妊娠によって社会的に認められる機会を得た事から、寅子が両親にお見合いを頼むシーンがありました。
既婚者であるという事は、社会で信用を得るには必要な事であるという事、今もまだまだ残っている価値観だと思います。
そして今度は、久保田先輩が弁護士を辞める決意を寅子に伝えました。
女である事がハンデとなった弁護士への道、弁護士になったら今度は結婚していない女はだめだと言われ、結婚したら今度は子供がいない女はだめだと言われ、次には妻として、母として完璧である事を求められる。
その終わりなき要求に、久保田先輩も中山先輩も疲れ果て、心を折りました。
そうかと思えば、寅子が初めて法廷に立つ事となった案件、依頼者は弱者を演じたいわゆる毒婦。夫ではない相手の子供をふたりも産み、それを夫の子供として育て、挙句夫の資産をわがものにして愛人と共に暮らす。
寅子の最初の勝訴は、彼女に騙されたという苦い形で残りました。

いやはや、どれもこれも、戦前の話じゃないだろ? 令和の今もあるだろ?ってものばかり。
もちろん、そのままというわけではないけれど、今も脈々と残っている話ばかりです。
ただ、単純に男が悪い、社会が悪いと言い切れないのが現実。
世の中、そんな単純なものでないし、だからこそ、簡単に解決できない問題なのだろうと思います。

私は未婚で、子供もいません。
それをやり玉にあげて誹謗中傷、あるいはマウンティングかけてくる、女として人としての価値がないと言ってきたのは、概ね女性でした。
いつの時代かよ!と思いますが、それは今もあります。
まぁ、男性陣は私の知らぬところで何やら言っていただけかもしれませんが、本人前にして言わないだけまだましと思います。
女性陣は笑顔で、堂々と本人に向かって言ってきます。
外資系エグゼクティブの友人は、某所でそれをやられ、彼女にしては珍しくガチキレしたそうで、「私は自立しているし、あなたのご主人よりも高い年収で高額納税者ですから、とやかく言われる筋合いはありません」と言ったそうで。
そんな啖呵きれるのは、彼女くらいなものだと思いますが。

出産についての話もいろいろあります。
Excel、マクロを使いこなすマスターレベルのスキルで、とんでもなく仕事ができる人が社内にいましたが、妊娠を機に、会社を辞めました。産休を取りたかったのですが、契約社員だったため、その権利はなく。
なんとか戻れるようにと、上司が上にかけあいましたが、だめでした。
しかし同じ部門で、まったくお仕事しない、秘書なのに上司のスケジュール管理すらしてない人が、きっちり一年産休育休取りました。なぜなら彼女は正社員だったから。戻ってきてからも、育児理由にまともに出社すらしてこず、もちろん仕事もさらにいい加減になりましたが、容認されていました。
先に辞めていった契約社員の女性、「本当に悔しいです」と怒りに震える声で言っていたのを今でも覚えています。
別で、一年半の産休を取っていた女性、その間、私がカバーではいっていました。
戻ってくるなり、私には何の連絡もせずにアクセス件を停止、「私が戻って来たんだから、もうこっちの仕事には関わらないでください」と言いまして。
人の仕事の分までやって一年半、夜十時近くまで残業してたりした私に、礼のひとつもなくそれかよ! と思い、以後、産休の方への優しい気持ちがきれいさっぱり消えました。
それが拭えたのはその後、出産後、他に迷惑かけられない、自分も早く仕事に復帰したいと、本当に大変な想いをしながらものすごくがんばっていた方たちの姿を見たからです。

夫の転勤で、やむをえず仕事を辞める女性もまだまだ多く。
営業や専門職も、今は女性がいるのは普通ですが、事務職(秘書やアシスタント)のポジションには男性はいません。
注:アメリカには男性の秘書やアシスタントは数は少ないけれどいます
家の事は、どうしても女性の方に負担が大きいというのも普通。
結婚を機に仕事を辞める女性はいても、辞める男性はおりません。

会社でも、上の地位にいる人や高い年収を得ている人の奥さんたちは、ほぼ専業主婦でした。
別に働く必要はないというのもあるでしょうが、それだけのポジションや年収になると、本当に仕事の負荷がかなり大きいので、家の事に関わっている余裕も時間もありません。
よって、分担せざるをえないというのも、確実にあります。
ただ、女性の管理職も当然いるし、年収の高い人達もいます。
一時ついたCEOは女性でしたが、お子さんがふたりいらっしゃいました。ご主人は外資系のエグゼクティブ。
おふたり、協力して子供関係の事はやっておられましたが、家事関係は全部外注でやっておられました。
外資金融での元上司の奥様は、ご自身が会社社長で、夫なる上司よりも年収高かったです。ふたりとも超多忙でしたが、ふたりは休みが別々で、働く時間をずらして、家の事やお子さんのことをやっていました。
ちなみに、私の知っている外国人エグゼクティブの奥様は、全員専業主婦です。

女性って、常に二択をせまられるなと思っています。
仕事か結婚か。
仕事か出産か。
身体もつらいし、大変な事も多い。
でも、なんというか、それを男と女の対立にもっていくのは、個人的にはちょっと違うかなと思っています。

寅ちゃんの姿を見ていると、ああ、私も通ってきた道だなと思うところがあります。
よねちゃんの姿にも、そう思います。
以前、図書館にで借りた本に、「女性である事を負の武器にして戦ってはいけない」と書かれたものがありました。
「女性には男性にはない特技がある。それは協調性で、調和を生み出す力だ。戦いの場を和ませ、着地点を見つけ、調和を作り上げる力を持っているのは女性だ。それをフルに活かし、自分の存在を意義あるものにし、そうしたうえで己の力を発揮すれば、あなたは思う存分自分の能力を示す事ができる」
残念ながら、タイトルは忘れてしまいましたが、マッキャベリズムをベースにアメリカ人女性が書いた本でした。

私の知る中で、奥様が働いて、ご主人が家事をやっているという人が二組います。
「私が働いた方が稼げるんで」と笑って言っておられました。
ふたりとも激務の人で、仕事が深夜まで及ぶ事もよくあるため、夫なる方たちは「だったら僕が家事やるよ」という事になったのだそうです。
これからは、そういう形も当たり前になっていくといいなと思います。



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