【超短編小説】透明なマスク

今は流行の病が小康状態となった。そんな時期。

しかし、いつまた病が大流行するか分からない。
人々はマスクを着け生活していた。

4月。希望に満ち、新たに入った大学で彼らは出会った。

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「あのー。今から言ってはいけないこと言います。」
同じ授業を受けていた一郎が横の席から乗り出して言った。

「え、急になんですか？」
と、桜子が驚いた様子にも動じず一郎が続ける。

「サンタクロースは居ません。」
少しあきれたような顔をして桜子が言う。

「居るの定義によると思いますが。」
と、そのまま桜子の反撃が始まる。

「サンタクロースの由来知ってます？？
仮にサンタ本人は居ないとしても、クリスマスの時期に子供達はサンタを待っているわけです。そして大人たちが代わりにそれを演じているわけです。
そうした場合に、子供達からするとサンタは居ることになる訳ですよね。
はっきり言って何も変わらないのだから居る居ないの結論を出す意味はない。つまりこの会話は無意味です。以上。」

気持ち強めにPCの蓋を閉じ、それをバックに詰めそそくさと講義会場を出ていく桜子。
慌てた様子の一郎がすぐに追う。

「ちょ、ちょっと待って。ゴメン。ゴメン。言ってはいけないことって大体正しいとかってよく聞くからさ、言ってみた訳さ。
それで、もう一つ言うよ。僕は君が好き。」

目を大きくパチリと瞬きし、そしてチラチラと周りを気にしつつ桜子が答える。

「え、今はまだ4月だよ。入学式から2週間くらい。
そりゃ少しは貴方と会話したけども、よくそんなこと言えるね。
それに、お互いマスク姿で一度も素顔見ていないでしょ？
本当に好きなの？？

想像してみて、仮に貴方が仮面舞踏会に参加したとして、誰かを好きになれる？
君に限っては好きになれるかもだけど、やっぱりまだ早すぎるし、今は言うべきじゃないと思うけど？

どう？私のこと本当に好き？」

「わかった。言い方を変えるよ。桜子さん、素顔を見せて。」

「なんか私がマスクドウーマンみたいな言い方だな。
また今度ね。でもマスク越しで本当に好きになるのか考えてみたらいいんじゃない？」

その夜、一郎は少し考えてみた。
ロダンの考える人って本当は考えていないって誰かが言っていたな。
まぁそれはどうでもいい。

マスクをしている彼女。僕は素顔を見たことがないのに本当に好きになったのか？

それは本当か？？

マスクをしていても人は好きになるのか？

悩んだ。

好きにならないとしたら、それってマスクのせいで一生交じりあえないってことだ。

それはつまり、マスクは僕と桜子を隔絶する透明なガラスの壁ってことになる。

嫌だ。

あぁ、透明なマスクが欲しいなぁ。

一郎はマスクのせいで、恋に焦がれる病にかかってしまっていた。

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【メッセージ】
最後までお読みいただき感謝いたします。

拙い文章ですが、ロジカルな文章よりも感情を揺さぶるような文章を書きたいと思っています。
これからも、是非ともよろしくお願いいたします。
余韻のために最後は1ページ程度の空白を置いています。何か感じていただければと。
今日は楽しかった、悲しかった、悔しかった、嬉しかったなど、そういう感情が動く体験は、
記憶され、そして未来の判断になんらかの影響を与えると思います。そうだといいな。

【プロフィール】
2児の父です。 駄文・乱文ですみませんが、普通の人生を記していきます。コッソリと・・・ 
凡人なので、フォロバ100です。人としては、フォローされるよりフォローできる人間でありたい。 
頑張ってスキ1000回目指しますので、是非ともスキしてみてください。
ちなみに自己紹介にスキはフォローＯＫと受け止めます。 
あと、noteにも感謝です。
見出しの写真やイラストはnoteユーザー様のを使わせて頂いています。こちらも感謝いたします。

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