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蓮の花―ある物書きの自由文集―

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2017/04~2017/09にかけて書き綴った詩のような。散文のような。 ライターとしてではない。一個人、”私”として書こう。 誰の目も気にしない。私は私の思ったままを、感じ…
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独りよがりの騎士になりたかったわけじゃない。

独りよがりの騎士になりたかったわけじゃない。

パパは私を”物わかりのいい子”だと言う。

ママは私を”手のかからない子”だと言う。

違うの。私はそんな子じゃない。

パパにもママにも笑っていてほしいだけ。

大好きなんだもの、私のことで悩ませたくない。困らせたくない。

大好きなんだもの、本当の気持ちを出して、怒られたくもない。

(本当は感じたままに泣きたい。喚きたい。甘えたい。)

私はワガママも言わない。我慢だってする。

そうすれば

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秘密の季節を歩む先には

秘密の季節を歩む先には

最初は何がきっかけだったのだろう。今となっては思い出せない。

メール、電話、交わした言葉。それとも、行動、価値観。

人には感情がある。心がある。

そうは言っても脳内物質だって影響してる。

もしかしたら、それが原因だったのかもしれない。

もしかしたら、違うかもしれない。

そこら中で聞き飽きるほど耳にする”釣った魚にエサはやらない”。

それなのかも。

愛の言葉を囁きながらも、あなたは私

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幽霊になった僕。幽霊が見えるあなた。

幽霊になった僕。幽霊が見えるあなた。

否定されることも多かった。見下されることも多かった。

僕の心も、生きた道程も、何も知らない。そんな人たちから。

馬鹿にされることも珍しくない。掌を返されることも珍しくない。

僕が何をしたというの。ただ目立たないよう、馴染めるようにしていただけなのに。

嫌われ、嘲笑われ、罵られ。

最初は理解してもらおうともした。

それでも終わらないから、今度は存在を消すようにした。

でも、足らない。変

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模倣と追放と逃亡

模倣と追放と逃亡

誰かが笑ったら、みんなが笑う。

誰かが罵ったら、みんなで罵る。

誰かの意見に合わせるんだ。

あいつが笑ったものが、僕には笑えないものでも。

あいつが罵った誰かが、僕には正しく思えていても。

本当は、僕だって僕の意見がある。

本当は、僕だって僕の主張がある。

それでも、みんなと同じように動かなければいけない。

じゃなきゃ、僕は輪から追放される。

顔で笑って、心で泣いて、自分を押し殺

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丸呑みしたのは〇〇。ただそれだけ。

丸呑みしたのは〇〇。ただそれだけ。

たった一言、たった一言。

君に伝えたいのに伝えられない。

伝えられやしないもの。

君を困らせたくはない。そんなお節介のような想い。

君を失いたくははない。そんなわがままな僕の想い。

だから、ふとした瞬間にその言葉が零れてしまわないように。

だから、僕が抱えている言葉が何かを勘の鋭い君に悟られないように。

僕はその一言を隠した。

隠してしまえば何もない。

隠してしまえば何も変わらな

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私の大嫌いな人間(=ワタシ)

私の大嫌いな人間(=ワタシ)

人間は簡単に裏切る。

金のため、名誉のため、自分の身を守るため、自分の愛する人を守るため。

手の平返しなんて、街を見回せばそこら中で起こってる。

ほら、君が気付いていないだけで、君の隣の人も今誰かを裏切った。

人間には欲がある。情がある。愛がある。

だから、裏切られることで傷を負う。

だから、裏切られることで涙を流す。

だから、裏切られることで腸を煮えくり返す。

裏切りは、誰かを傷

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透明な首輪

透明な首輪

束縛は嫌い。

あたしにはあたしの時間がある。

あなたにはあなたの時間がある。

あなたと一緒にいる時間は二人の時間。

だけど、一緒にいない時には互いに別の時間を個として生きている。

その瞬間まで縛り付けないで。

興味の赴くままに足を運び、新たな知識を得ようと書に目を通す。

友達との他愛のない話だって必要。社会から与えられた仕事に努めるのも避けられない。

それは、全てあたしに必要な要素

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人間なんて〇〇だから―Side D―

人間なんて〇〇だから―Side D―

人間なんて、所詮は別々の生き物で。

同じような境遇、同じような経験、同じような立場

共通項を持っていたって、同じ人間にはならない。

誰もが違う考え方を持っていて、

誰もが違うことに魅かれ、

誰もが違うことに怒りや悲しみを覚えて。

自分の物差しこそ正義。

思い通りにならないなら排除すればいい。

理解を示さないというなら攻撃だって厭わない。

従わないなら屈服させるまで。

誰もが違う

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人間なんて〇〇だから―Side S―

人間なんて〇〇だから―Side S―

人間なんて、所詮は別々の生き物で。

同じような境遇、同じような経験、同じような立場

共通項を持っていたって、同じ人間にはならない。

誰もが違う考え方を持っていて、

誰もが違うことに魅かれ、

誰もが違うことに怒りや悲しみを覚えて。

駅で電車を持つサラリーマン。

仲間と笑い合いながら登校する学生達。

重そうな買い物袋を下げて歩く主婦。

神社で静かに手を合わせる老人。

誰もが違う人間

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美しい悪魔

美しい悪魔

君を想う。

だから、僕は書く。

君との言葉のやり取りで、君との繋がりを感じられるから。

君との言葉のやり取りで、君のことをもっと知ることができるから。

澄んだ瞳をしている君。

世の中ならば目もくれない風景に目を細め、いくつもの感情やストーリーを感じ取る君。

大多数に蔑まれても気に留めず、自ら信じたものを大切にする君。

ささやかな時間の中に幸せを見付け出す君。

そんな君は眩しくて、美

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君臨するのは、恋。

君臨するのは、恋。

様々な価値観を持ち合わせる多くの人間の波の中で出会い、

魅かれるようになることは奇跡にも近い。

誰かに魅かれれば、相手の一言が、相手の一瞬の表情が、相手の手から伝わる温度が、その一つ一つが自分の心に刺激を与える。

ワルツのような華やかさ。ノクターンのような憂い。レクイエムのような静かな祈り。

恋はいくつもの顔を持っているのだ。

舞い上がるような春。焦がれるような夏。満たされるような秋。心

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続く眠りと終わりの死

続く眠りと終わりの死

彼は言った。

「眠りは死と似ている」のだと。

眠りの世界に落ちれば、起きている時のような意識は無くなり、

心も体も無の状態になる。

それが、死と似ているのだと。

けれど、眠りから覚めれば、また新たな一日を迎えられる。

それが幸せに満ちた日になるか、涙する日になるかはわからないけれど、

必ず新たな一日を迎えられる。

死はどうだろうか。

死を迎えたら、もう新たな一日が訪れることはない

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金木犀

金木犀

金木犀は昼の庭の香り。

幼い私を一番愛してくれた人と並んで過ごした庭の香り。

いつだって、あの人は私を愛してくれた。

子どもには、その愛の大きさを理解できなかった。

それでも、あの人の隣が心地よかった。

どんな悲しさに襲われても、悪夢から目覚めて泣いていても、

あの人は私の頭を大きな掌で撫でてくれた。

皺だらけの手の平。目を細めるあの人の優しい笑顔。

そんなあの人が大好きだった。

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午後9時、渋谷にて。

午後9時、渋谷にて。

雑踏は思考を、感情を惑わせる。

笑い声。怒鳴り声。かしましい話し声。赤ん坊の泣き声。

どれもその人達が生きている時間の中だけのものであって、

私には何も関係はない。

それでも、音は容赦なく耳から脳へと突き進み、

私の胸の奥にざわめくような波を立たせる。

道行く人々がそれぞれの時間を生きているように、

私は私の時間を生きている。

だから、そっとしておいてくれ。

うるさいのは苦手なん

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