透明な首輪

透明な首輪

束縛は嫌い。

あたしにはあたしの時間がある。

あなたにはあなたの時間がある。

あなたと一緒にいる時間は二人の時間。

だけど、一緒にいない時には互いに別の時間を個として生きている。

その瞬間まで縛り付けないで。

興味の赴くままに足を運び、新たな知識を得ようと書に目を通す。

友達との他愛のない話だって必要。社会から与えられた仕事に努めるのも避けられない。

それは、全てあたしに必要な要素であって、あたしの時間。

そんな時まで自由を奪わないで。

あたしがあたしの時間に何をするかを制限しないで。

あなたが勝手に思っているような危険なことも、

あなたが勝手に想像しているような人にも触れてなんていないんだから。

あたしがあたしの時間を生きるから、あなたが愛するあたしが存在することができるんだ。

だから、あたしは縛り続けられることなんて求めていやしない。

あなたを縛り付けることだって求めてなんかいやしない。

首輪も鎖も大嫌い。

だけど、たまに不安に駆られるの。

あたしの時間を終えて、あなたとの時間に戻った時。

そこであなたは待っていてくれるの?

あたしを受け止めてくれるの?

「おかえり」と迎えてくれるの?

だから、首輪も鎖もいらないけれど、一つだけ欲しい。

あなたが待っていてくれる証が欲しい。

形も色もなくていい。

そう、あたしが欲しいのは、まるで透明な首輪のようなもの。

重さもない。繋がれてもいない。

だけど、あなたが待っていてくれる証。

束縛は大嫌い。

だけど、形も重さも色もない透明な首輪だけ、あたしは欲しい。