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30代で父親の認知症介護をスタート。認知症や介護の話題は“できるだけ避けたいこと”だと…

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30代で父親の認知症介護をスタート。認知症や介護の話題は“できるだけ避けたいこと”だとは思うけど、心の準備を少しでもしておくといいですよってことを。フリーで編集&ライターをしています。https://twitter.com/borntobenehan

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  • 雑感という名のプロフィール

    書きたいことは出し惜しみしない。今できることはすべて出す。そのときの自分がいちばんオリジナル!というスタンスで、脳内をさらけ出した雑感です。

  • 推しがいるから生きられる

    呼吸するだけ、心臓が動いているだけで、生きてるってことなら、もうゾンビじゃないですか。じぶんの感情を揺さぶるものとの出会いこそ、わたしの血となり肉となる。それが生きる意味だったりするわけです。推しこそすべて。

  • 実家の親が元気という幻想は人類のバグ

    アルツハイマー型認知症の父を介護するなかで生まれた葛藤やたくさんの人にたすけてもらった感謝をコラム形式で書いてます。「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」そんなお気持ち。

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真夏の相棒はクマ色

真夏の相棒はクマ色

我が絶望の先輩、太宰先生はこういいました。
「生きてゆくから、叱らないで下さい。」

ほんとうは叱られたくないし、叱りたくもないのですが、先の感染症によって生活が一変してしまったおかげで、Twitterでは叱りたい人たちがニワトリの前に放り出されたミミズのようにうねっておいでです。
さて、先生なら、この現代にどんな絶望の言葉を残されたでしょうね。

……とだいぶ気が狂いそうな毎日をおくっているため

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介護者から見た「俺の家の話」。クドカンよ、やっぱあんたすげーよ

介護者から見た「俺の家の話」。クドカンよ、やっぱあんたすげーよ

TBS金曜ドラマ「俺の家の話」が面白すぎてしんどい。

長瀬智也演じる寿一のセリフに、ナレーションに、家族たちのせめぎあいに、毎回共感して笑って泣いている。

2021年にして、ようやく“介護”を扱った真っ当なエンターテインメントに出会えたことがうれしい。クドカン流にいうなら、うれしさ過失致死である。わたしは長いこと、このときを待っていたのだ。

認知症の父親を介護をするようになってから、あらゆる

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不  時  着  し  た  ら  梨  泰  院  だ  っ  た

不 時 着 し た ら 梨 泰 院 だ っ た

タイトルを見ただけでピンとくる人は、おわかりだろう。
これから総括しますよ、韓流ドラマ沼に首までつかった2020を。

韓国ドラマにここまでハマるなんて、まったくの想定外だった。
「睡眠不足が否めない。そろそろ上司にバレそうだ…。寝ていないのは韓国ドラマを深夜まで見ているせいだなんていえない!!」
と毎日震えながら、手のひらサイズのスマホの画面を “全集中、キュンの呼吸” で見つめ続けた。

ここ

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クマ色への愛をこじらせたで候。

クマ色への愛をこじらせたで候。

前に書いたコーヒーゼリーへの愛をぶつけたコラムは、なんだかいろんな方に読んでもらえて至福の極みでやんす。ありがとうございます。

それに続く、都内の厳選コーヒーゼリーを紹介したこちら↓

ここでいちばん最後に紹介した「蕪木」さんのコーヒーゼリーが、今年も解禁になりました。
ということで、さっそく食しに行ってきた報告を。
よく考えれば(記憶がただしければ)毎年6月に解禁されているのでコロナ禍は関係な

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名前を呼ばれないことがかなしいんじゃない

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アルツハイマー型認知症の父・やっさんについてのコラムです。
前回まではこちらから。

2018年6月2日(土)。そうか、もう2年になるのか。
この日はたのしくて思い出すたびに笑っちゃうから、きっと生涯忘れない。

時系列でいうとちょっと先のおはなし

やっさんの認知症と本格的にかかわるようになってから9ヶ月後のこと。
朝からきいろい太陽の光がアスファルトを突き刺すように注いでいた。
そんな夏のよう

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当たりまえだけど、母は社会の一員だった

当たりまえだけど、母は社会の一員だった

アルツハイマー型認知症の父についてのコラムです。
前回まではこちらから

今回は母のことを。

介護うつになった母が入院したことでやっさんの介護がはじまったのだけれど、母からは最初に釘を刺されていたことがあった。

「◯◯さんと◯◯さんには事情を説明していい。でも◯◯さんには言わないでほしい。あと入院しているのが精神病院ということも知られたくない」

言い分はわかる。
地方の人間関係については、ま

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その手を離さない

その手を離さない

アルツハイマー型認知症の父についてのコラムです。
前回まではこちらから

先の感染症の影響で、1.5ヶ月に一度のやっさんの検診がついに電話診療となった。検診をしないと薬が処方されないので致し方なし。
電話もやっさんとの会話ではラチがあかんということで姉がかわりにお医者さまと話をつけるらしい。
うむ、病院でZOOMはできないのだろうか?

前回のコラムでついにやっさんの介護生活に光が射し込んだことを

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都内で食す愛すべきコーヒーゼリー3選

都内で食す愛すべきコーヒーゼリー3選

「わたしの血液にはコーヒーゼリー液が流れているの」と死ぬ前に一度は言いたい。いや、きっという。

さて先日、永年にわたって愛し続けているコーヒーゼリーへの偏愛を綴りました。

すると、今まで食べてきたコーヒーゼリーを紹介したい欲がふつふつふつふつと湧いてしまい、BEST3ならぬ3選、自信を持ってご紹介します!

その前に、コーヒーゼリーを愛でるポイントが以下3点。

①かたさ(かたいのが好き。噛み

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煮たまご、それは母性。

煮たまご、それは母性。

家にいる時間が長い。
というか1日中家にいる。
必然的に料理をする時間が増えた。
SNSではやたらとクッキーが焼かれ、パンが焼かれているのを見かける。
街からはホットケーキミックスが消えた。強力粉も薄力粉も片栗粉でさえ手に入らない。
“心が落ち着かないときに何かを焼きたがる”というのは、人間の本能がそうさせるのであって、一種の自己防衛なのかもしれない。

それに関していえば、身覚えがありあまる。

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「たすけて」といえた相手はSNSの人でした

「たすけて」といえた相手はSNSの人でした

強く生きることを求められる時代に
 Planetというとってもとってもマイナーで、やさしいSNSアプリがあることをご存知だろうか。

2016年公開の「リップヴァンウィンクルの花嫁」という映画のなかで登場人物たちが使用したSNSを実用化したものである。

​事前に抽選で当選した人と、その当選者には3人まで招待枠が与えられており友人を招待できる(現在も招待は可能)。

2020.3.31追記:先着1

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もし衛生兵だったら、わたしはわたしを助けただろうか

MOTTAINAI 忘れもしない、いきなり電子レンジでゆで卵を温めようとして爆発させたあの日の衝撃から、やっさんの行動が自分の理解の範囲を越えていることはなんとなくわかった。認知症というのはそういうものなのだ。

朝になると「ごはんは?」と5時すぎには起こされ、夜は夜で寝たかな?と思って様子を見にいくと、電気を煌々と灯して部屋の中でぶつぶつとなにかを喋りながら探し物をしていたりした。
「なに探して

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Re i wa

Re i wa

 「平成って何年まででしたっけ?」
職場の同僚に唐突に問われて「ん?」「ん?ん?」とオコジョみたいな顔をしてやり過ごそうとしたけど本格的に思い出せなかった。アーメン。

 あたらしい元号が発表されるという、人生のなかで何度も体験できることではない瞬間は、会社の倉庫でひとり作業中だった。
一応、日本人たるもの、ひとりの成人した大人の振る舞いとして、ここはしかと聞くべきではないかと思い i Phone

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ワタミの宅食・石本さん

ワタミの宅食・石本さん

 認知症であるやっさんの食欲モンスターっぷりは以前に紹介しているとおり。満腹中枢が機能していないので、1日中なにかを食べていないと落ちつかない。
やっさんの抗えない食欲と供給する側としての果てしない戦いは、一生続くだろうと思われていた…が! 世の中にはすばらしいシステムが爆誕していた。
宅食サービスである。はい、神です、神。

調理済みのお料理をレンジであたためるだけ、の多忙なママや単身者には特に

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歌になるぐらいだからよほどの山でしょう?

歌になるぐらいだからよほどの山でしょう?

スポーツ観戦が好きだ。突きつめていくとどうやら団体競技が好きらしい。

例えば夏の甲子園。
アルプススタンドでメガホンを握りしめながら声を張り上げる下級生たちは自分の分身を見ているようだし、ひりひりした炎天下のグラウンドで土や汗にまみれながら白球を追いかける球児は、いつだって“憧れのセンパイ”だ。

あるいは箱根駅伝。
「好きなスポーツはなにか」と問われたら今のところ好きの頂点である。
往復200

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やっさんとのお風呂戦争②

やっさんとのお風呂戦争②

やっさんとのお風呂戦争①のつづきです。

なにがなんでもお風呂にはいることを拒否するやっさんの言動にゲンナリしてたわたしは、母にそっこうでチクることにした。

すると「身内がいると甘えが出るから、その場にいなくていい」との助言が飛び出す。
どうやら何度も来ている看護師さんたちは、わが家の内部やお風呂場の仕様を熟知しているので、まかせてしまったほうがうまくいきやすいとのこと。
いやいや、それはやくお

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やっさんとのお風呂戦争①

やっさんとのお風呂戦争①

 今もなお、解決策が見つからず、われら家族を悩ませつづける認知症患者にありがちな厄介な問題がある。
「やっさんがお風呂にはいってくれない」だ。

家族としては衛生面が気になるのはもちろんだけれど、元来、風呂好きなのを知っているのでなぜそんなにも拒否をするのかがわからない。戸惑うしかない。

こちらが「お風呂にはいったら?」「最近着がえてないよ」などと言おうものなら決まって「風呂は自分ではいりたいと

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