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その手を離さない
アルツハイマー型認知症の父についてのコラムです。
前回まではこちらから
先の感染症の影響で、1.5ヶ月に一度のやっさんの検診がついに電話診療となった。検診をしないと薬が処方されないので致し方なし。
電話もやっさんとの会話ではラチがあかんということで姉がかわりにお医者さまと話をつけるらしい。
うむ、病院でZOOMはできないのだろうか?
前回のコラムでついにやっさんの介護生活に光が射し込んだことを記述した。介護のプロからいただいた助言からやるべきタスクは以下3点。
①デイサービスの利用検討
②老健さん(介護老人保健施設)に申し込む
③グループホームを探す
①デイサービスの利用検討
デイサービスを簡単に説明すると“おじいちゃんおばあちゃんたちの茶飲み場”と受けとってもらっていいと思う(個人的見解)。
自宅までマイクロバスで迎えがきて施設まで連れて行ってもらい、そこで高齢者同志で一緒に半日ほどを過ごし、夕方また自宅まで送り届けてもらう。
施設内ではゲームなどのレクリエーションや、介護予防の軽めの運動、入浴が可能な場合も。
お昼ごはんやおやつもありで「至れりつくせりで最高じゃん!」と、デイサービスを受けてほしい側、送り出したい側は目をキラキラさせて期待をしてしまう。
が、期待は裏切られるが定説。
自分のおうち最高!なやっさんにとってはなんのメリットもない。
他人と関わるのが大嫌いで、知らない場所にいくのも嫌い。
好きなものを好きなときに食べることができないなら、やっさんにはデメリットの方が大きい。
自分が介護されているとはつゆほども思っていないので、いくら家族や友人が説得をしても頑なに拒否の姿勢を貫いていた。
介護に相容れない要素はたくさんあるけれど、この意思疎通ができないことで介護する側はメンタルをゴリゴリ削られるのである。
「少し自由になれる時間がほしい」という言い分が、まったく通じない。
「介護する側とされる側にはマントル並の深い亀裂がある」
デイサービス制度の役割として、利用者とその家族の負担を互いに減らすという側面がある。うまく利用することができれば、家族の負担が相当軽くなることはわかっていた。
やっさんが週に何度かデイサービスを使うことで、母がまた一緒に暮らせるのではないか、という姉とわたしの思惑もあった。
「母さえみてくれれば職場復帰できる」願いはこれひとつだった。
どこに行けばいいんだろう
とにかくやってみないことにははじまらない。
ケアマネさんから「本人に向いてそうなデイサービス、ピックアップしてもらえますか?」との連絡を受け、どこならば本人の性質にあっているのか内容などを吟味して何箇所か候補を渡した。
〔希望〕
・運動やレクリエーションを強制しないところ
・でもできれば身体を動かしてほしい
・お風呂に入らせてくれるところ
するとケアマネさんからの返事は「自宅から距離があるところは送り迎えができないのでダメです」とのこと。なんてこったい。
同じ市内なら行けると踏んでいたのだが、まったく読みは外れた。
すると自宅から歩いて5分ほどの場所にデイサービスを行っているグループホームがあることを知らされる。え、早く言ってよ。
もう、灯台下暗しもいいところである。家の真裏の少し坂を登った先にそんな施設があることを知りもしなかった。
自宅が高台の麓にあることから、それまで坂の上に上がるのはゴミ捨てぐらいしかなかったのである。
調べてみると施設は比較的あたらしく、設備もしっかり整っているように感じた。
直接電話をかけたところ「明日の午前中に見学にいらしてください」との返事をもらえたため、ちょうど帰省していた姉と一緒に訪問することにした。
いけると思う? やるしかないっしょ!
すでに何箇所かの施設の見学に行っていたこともあり、この施設の設備の充実さや職員たちの対応にはまったく問題がなかった。
大きなお風呂もある。やっさんが銭湯に来たような感覚で入ってくれたら…と期待は膨らむ。
しかも我が家から目をつぶっても行けそうな距離。
デイサービスというシステムに慣れてもらうためにもマイクロバスでの送迎はお願いしたかったが、何かあったら歩いて迎えに行ける。
すぐにお試しをさせてほしい旨をケアマネさん経由でお願いし、やっさんを連れていくことが決まった。
トライ&エラーの先にあるもの
大人になったって初めて体験することには不安がつきまとう。
無理になんて引きはがせないから、施設から配布された準備物を記載するA4用紙をながめながら少しずつ持ち物をチェックした。
この日のために着替えやタオルなどの持ち物には名前を書き、指定された運動靴も買い揃えた(サンダル、スリッパはNGでかかとのあるもの)。
すっかり小学校の入学式で子どもを見送る母の気分である。
(めちゃくちゃ反抗的な態度をとる子どもですけどー)
買ったスニーカーを試し履きさせたところ、「つま先キツイ」と言い出しアセる
当日は、わたしが一時的に関東圏に戻っていたときで、入れ替わりで姉が対応していた。
姉からLINEがくるたびに、どういう状況なのか不安になって落ち着かない。
「迎えのバスには乗った」
「後から追いかけるって言っといた」
「昼ごはん完食したって」
「様子を見に行ってきた。やっぱりお風呂ダメだった」
「でも軽い体操を一緒にしておやつも食べてきたよ」
「ふつうにバスに乗って帰ってきた」
なんということでしょう……。あんなに嫌がっていたデイサービスに行き、ちゃんと1日を過ごしてきたなんて。
何が起きたの、でかしたよ、姉!!!
なにはともあれである。確かに第一歩は踏み出せた。
やっさんはコミュ力レベルが1上がり、姉とわたしも介護者としてのレベルが1上がった。不確かでよろよろで傷だらけでも、その先に希望があるならと思えた瞬間だった。
次はショートステイへの挑戦である。
(当たりまえのように奇問&難問が待ちうけているわけですが…)
もれなくやっさんのあんぱん代となるでしょう。あとだいすきなオロナミンCも買ってあげたいと思います。