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KILLING ME SOFTLY【小説】127_鏡に向かって指を刺せ

毛布に包まり微睡む、夜半の夢現つでライブ配信の通知が届き、スマートフォンを掴んで飛び起きた。写真共有SNSを開くと、そこにはかつての親友がいる。

「あーこんばんはー。みんな元気?これ、ホントはやるつもりなかったんだけど。うん。そう、ナツね、啓裕くんとお別れしちゃったの……。」


鼻声、涙で崩れた化粧、美しい顔面にも及ぶ多量のピアス、知らぬ間に増えたタトゥー、だらしない服装。アルコール度数が高い缶チューハイを飲みながら画面に向かって語りかける姿が同情を誘い、私という捌け口を失った夏輝の現状を無残にも見せられる。


ところがしばらくして視聴者に乗せられ、啓裕を罵った為に呆れ返り、閉じたアプリをアンインストールした。私の次は怒りの矛先が〈元カレ〉に転じて汚名を着せられるようだ。


醜態を演じる夏輝のとんだ茶番劇に群がる者は純粋なファンなどではなく、大半が〈人の不幸を糧に生きる〉蛆虫だろう。それらの玩具と化し、泳がせられ、特定の人物を攻撃すれば墓穴を掘り、繕ってきた化けの皮が1枚ずつ剥がれて、破滅する。


しかし、夏輝は懲りない。
あれと分かり合う?土台無理な話だった。



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