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KILLING ME SOFTLY【小説】58_予襲"復習"

恋人の千暁との〈目撃情報〉を挙げるなど、私を擁護したが為に無惨にもアンチから完膚なきまでに叩きのめされ、已むを得ずアカウントの削除に追い込まれた複数のユーザー。凛々香のファンは事実に基づく正当な主張をしていた、と幾つかのスクリーンショットを寄せ、議論を交わされる。


千暁と私の関係についても言いたい放題だが、不幸中の幸いか、現時点では彼の特定をしようという流れは一切見られなかった。
「村井とか、莉里さんに暴言吐いたヤツ全員、攻撃的って報告しとくね。」
淳が先陣を切れば、他のメンバーもそれに従う。誹謗中傷及び嫌がらせ、またはスパム(迷惑な)行為を繰り返す等により問題視されて多数の通報を受け、つぶやきアプリのルールに違反しているアカウントは強制的な対応を取られ、使用不可となってしまう可能性がある。


但しこういった場合に口汚く罵る者は、削除を覚悟の上で作成した責任逃れの卑怯な〈捨て垢〉や四六時中、何かしらの批判を浴びせては悦に入る病に取り憑かれた、執拗な…執着心の強い…オーディエンスが主で、彼らは自分自身に火の粉が降り懸かることを避け、最悪の結果、こちらから訴えられぬようにコソコソと這いずり回るのだが、仲間達の心遣いが大変ありがたかった。


案の定、掲示板は餌を与えられたかの如く狂喜乱舞とはいえ取るに足らず、特に害はなさそうだ。何はともあれ、午後10時頃。
「莉里さん、マジ美弥ちゃんと2人で大丈夫かな?うちに泊まる?」
千暁が不安のあまり帰りたくないらしい。


ちーの家は完全にアウトっしょ。また新鮮なネタ提供すんの?」
「じゃあ、どっか駅の方に行けば!」
「俺はこの近辺に車を停めて、今夜は念の為に起きている予定だから安心してくれ。」
「流石にこんな寒い中、長時間張り込んでる馬鹿はおらん。」


知成と真司に阻まれ、挙げ句の果てには玄関の扉を開けた淳に止めの一撃を喰らい、彼は項垂れながら
明日の朝、迎えに来るね。
と私を抱き締めた。



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