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KILLING ME SOFTLY【小説】49_明日が終わるなら今日は共に

宿泊代が休日料金に切り替わり、私のホテル生活もこれにて終了。というのも、仲間内で集まるところへ加わるばかりか美弥が1人暮らしをするアパートに招待された。今夜は彼女とは初の〈パジャマパーティ〉を楽しむ。


私と眞紀子さんの会話を知る由もない千暁は昨晩、付箋だらけのガイドブックを広げてこちらに見せ、ここに行きたいんだけど、とか土産はこれが定番、など目を輝かせながら話すので釣られて私も純粋に満喫しようと思えた。彼は余程ワクワクしているらしく、就寝の前にも電話が掛かってくる。


私も明日が待ち遠しい一方、永遠に訪れなければいいのにと考えてしまう。2人きりの旅がどれだけ素敵でも、魔法は解け、何の武装もせず生きていく上での保証もない東京で、ゼロからやり直す。
現実と向き合う分だけ不安の種が芽吹いた。


自らを奮い立たせ、久々にしっかりと化粧を施し、フロントにて借りたヘアアイロンで髪を整えるとメッセージアプリの通知が届く。
千暁、(じゅん)、知成、真司、美弥(元々、彼らは千暁の友人である)、私がメンバーのグループチャットルームを通して真司が発言した。
『予定変更、美弥の家に集合。夕飯は各自持ち寄って鍋にします』


当初はゲームセンターやカラオケで遊び、しゃぶしゃぶを食べるという計画だったが、真司・美弥以外はアルバイトの退勤後に合流、誰かしらの都合がつかなかったのかも知れない。

どちらにせよ歳上の私はゲストであり、美弥の世話になる為、了解と送信する。



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