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KILLING ME SOFTLY【小説】54_生きたいと願う大人になりました

真司が一旦、弁当でも食べようと提案した。
しかし親子丼は喉を通らず、あらゆる負の感情ばかり咀嚼する。
「仮に犯人がその男だとして、村井は千暁にとってどういった存在なんだ?」


「うーん、隣の家に住んでる幼馴染かな。親同士が仲良くても俺らはあんま…だし、てかぶっちゃけアイツ今、二浪中。すげえ嫌われてるっぽいけど訳分かんね、こっち攻撃すんじゃなく俺の大切な莉里さんに対して、こんな真似…マジ許せん。」
千暁が肩を落とし牛丼を無理にミネラルウォーターで流し込み、咽せた。


私が黙ったまま彼の背中を摩り緩やかに呼吸をさせる合間に美弥は炒飯を平らげる。
確かにそれなら千暁の実家へ挨拶に伺った際に顔を見られていても不思議でない。
「じゃあ、ちー先輩に恨み持ってて、彼女が炎上!ラッキー、さっさと別れちまえ!って仕向けたのに実は別れてなかったからまた燃やしたの?ただの〈かまってちゃん〉だよね。」


真司がカツ丼の具を一切れ取り分けて美弥に与えながら意見を述べた。
「そこは本人だけが知るところだろう。率直に言えばあのアカウントは村井もしくは周囲の者によって作られた可能性が高いと思う。千暁の地元で盗撮して、意味ありげに声を掛ける、などおよそ賢い手段ではない上に時間的にもその後、投稿したようだが、理解不能な思考回路の持ち主だな。但し、彼でなかった場合は更に複雑で非常に危険だ。」


恐怖に支配され、蟻地獄に落ちる。
比べるまでもなく千暁より私(というか凛々香)の方が注目を浴びており、敵はあちこちで嘲笑っていた。



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