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KILLING ME SOFTLY【小説】59_漫画みたいに巡り会う運命

夏輝は親友であろうともプライベートに踏み込まれることをひどく嫌い、〈写真映え〉するという流行の洒落たホテルやテーマパーク・遊園地の敷地内に併設されたところへ泊まりたがったので、友人宅の風呂に入るなど有り触れた経験をこの歳で初めてした。


来客用の布団を敷くと、スナック菓子を台所から掻き集めた美弥が積極的に話を振り、互いの〈彼氏には内緒〉なガールズトークに花を咲かせる。
「莉里ちゃん、東京に帰っちゃってもずっと友達でいてね。」
「それ、私でいいの?」
彼女が年の離れた私を屈託も無く友達だと言い表せば絶妙に涙腺が緩んだ。


「自己肯定感低過ぎ。頑張って誰かと比べちゃう?もっと自信持って認めな、ありのままの莉里ちゃんで、最高に素敵なんだよ。美弥は、莉里ちゃんがだーい好き。でも美弥だけじゃないの、だってね、莉里ちゃんはちー先輩の彼女でしょ?あっちが高校生の時から変わらずにホンッッット愛されてる。何回も相談聞いてた。つまり、うちらが想ってる莉里ちゃん自身のことも大切にしよ、ね?」


気付かされて思わず息を呑む。
私には友人がいないのではなく、幾度もこのような親切心を踏み躙った為に周囲の者が離れていき、数えきれぬ種を蒔いては、水を遣らずに枯れさせたのだった。


すぐに否定したり、自分なんて、と謙遜ばかりか卑屈にまでなると、こちらに好感を持つ相手に対して失礼極まりない。
嘘吐きで男に依存しながら生き抜いたが、何者にもなれず、おまけに逃げ癖が付く私をどうも愛せなかった。


しかし自分すら愛せない弱虫が何故、他人から愛されるのだろう。
変わりたい、変われる。
決めつけ、諦めるには時期尚早。
もう、1つも芽を摘んだりはしない。



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