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KILLING ME SOFTLY【小説】46_人形の自分を全部壊す

夏輝は私をコントロールしたかったのだろうか。容姿端麗の人気美容師・啓裕も本能の赴くままに奪っておきながら何食わぬ顔で私と仲良しごっこを続けた。浮気性の彼に別れを告げられるそう遠くない将来を見据え、先手を打ち、私を含めた他の女にマウントを取り、啓裕の退路まで断つ。


実際のところ彼には大して相手にされていなかったが、私が〈元カノ〉だからこそ躍起になる。
たかが〈りーちゃん如き〉に振り回されているのは、他でもなく夏輝自身だ。
自分にとって何より大事なSNSのゴテゴテ、キラキラした投稿のように親友を装飾品か付属物だと勘違いしており、私に新たな恋人ができても、自らのそれより格上ならば気に食わず、そのくせ田舎に住む大学生など到底許せない。
一体、千暁のどこが分かるのやら。


長年の付き合いがあり、何しろこちらは夏輝曰く〈男の趣味が悪い〉らしいので、余計な世話を焼き、無理にでも美形バンドマンと交際させればようやく満足する。
残念ながら私は、深澤莉里という人間、よって、あなたのおもちゃではない。


思い通りに行かなければ逆恨みして裏切られたと大騒ぎ、暴走を始め、事実を捻じ曲げて罪を着せ、私を社会的に抹殺した。

よく考えてみると、そもそも売れっ子の彼女と対等な関係を築くとは、不可能なことだった。





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