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KILLING ME SOFTLY【小説】45_果たしてアイツは特別か

きのピは恋敵ではなく千暁の友人に過ぎなかったが、彼女と接するうちに夏輝が発した〈住む世界が違う〉との言葉を痛切に感じ、息苦しくなる。

たった一言のメッセージを千暁に送り、身を引く決意をしたと知るや否や、夏輝は本気で私と菅原さんを恋仲にすべく目の色を変えた。


招待されたから一緒にツアーへ行こう、と声を掛けては何度も開場前にキャンセルを喰らい、仕方なく単独でライブを観たり、菅原さんが愛用しているというブレスレットを誕生日の贈り物に選び、私がSNSに載せるよう仕向け、コネを使って彼のバンドが前座を務める大型フェスに関係者の枠で入り(偶然にも千暁に出会う)、毎回イベントの打ち上げに誘われる(結局のところ片想いを諦め切れずに断った)。私は夏輝に嘘を吐いて、菅原さんとは顔を合わせない道へと進む。


さして自分以外の人間に興味がなく、私が誰かに絆されて交際を始め長続きせず別れる度に、
「りーちゃんは男の趣味が悪い!」
などと扱き下ろし嘲笑うまでがお決まりの彼女にしてはやけに熱心で奇妙だった。


啓裕から菅原さんに乗り換えるつもりかと問い掛ければ、すぐさま
「は?有り得ん。てか面倒臭そう。けど、りーちゃんとスガくんはどっちも綺麗なお人形みたいなルックスだし、めちゃくちゃお似合いだよね!」
私自身を蔑ろにするかの如く答えた為に距離を置き、どうしても好きでその背中を追いかけ、最終的には千暁と恋人同士になったことを彼女には伏せる。


恐ろしくて、とても打ち明けられなかった。



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