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KILLING ME SOFTLY【小説】167_全てを笑え!主人公はわたし

例の動画は賛否を巻き起こして波紋が広がり、啓裕は二股どころではない女性関係が暴かれ、菅原さんの過激なファンはターゲットを夏輝に変えて叩き、私には伊東が付き纏い、許せるかと問い詰める。


相変わらず外野はゴチャゴチャとうるさいが、私は絶対に謝罪しなかった夏輝が詫び言を述べたと衝撃を受け、記憶に刻印され、ようやく本音を聞いて胸のつかえが下り、眠れない夜が減った。
インターネットで不必要な情報を仕入れず、掲示板は見ない、コメント欄も閉じる。


夏輝は相応の罰を与えられ、修羅の道を行く。振り返ると並んでいた筈の足跡がいつしか1つになり、消え失せる刹那で、また少しだけ交わった。
「莉里さん、大丈夫?」
恋人を心配した千暁が電話越しに尋ねる。
当然ながら彼にも飛び火してきたとはいえ、バンドの名が売れた。


「んー、壮大な茶番。だって何あれ、あんな子供染みた理由で炎上させられたとか、ヘコんだら馬鹿みたい、直接言えっつーの。……今後どんなことがあっても、笑い話にしてやろうって感じ。逆に、私の物語を盛り上げてくれてありがとうございます的な。
栄光と挫折を味わい、激動の一年を過ごした部屋を眺めつつ、決意を新たにする。


「つえー!悟り開いちゃった?ま、莉里さんが無理なく笑ってくれるなら嬉しいよ。見てると俺まで幸せなんだよね。」
耳元から心に響く言葉、彼に共感を覚えた。





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