KILLING ME SOFTLY【小説】163_楽しませようぜ夢は生きてる
なぞっては消して、出来る訳がない、また傷付く。
「チャレンジ前に諦めちゃうの?試しにやってみたら?」
項垂れると美弥の声が聞こえた気がした。
閃き、アクセサリースタンドに飾ってある白い百合のピアスへ目を向ける。確か美容専門学生の彼女はハンドメイドも趣味な筈、まずは簡単にこのようなものから始めようか。
今年で25歳になる、少女趣味はおかしい?
普通やまともの定義すらあやふやな上に、どうせ他人が何をしても気に入らないタイプは一定数おり、〈好き〉を否定されることは辛く、とはいえ従来うっすら描かれていた〈一般的〉の何某が昨今は大きく揺れ動き、案外、型に嵌めて安心感を持つのは自分自身かも知れなかった。ならば思い切って一歩踏み出して、未来をも創れば良い。
築き上げた凛々香の看板に頼れなくとも、新たなスタートを切るには打って付けだろう。
勿論、娯楽程度で家賃は払えないが、希望や目標は大枚を叩いても買えず。
さておき、佐伯始め、世話になった東京の者達に別れを告げなければ。
「前に彼氏盗られそうになったのここで話したじゃん?それ、りーちゃんだから。幾ら何でもマジ、ムカついたよね。しかもあの子、最近メッセージ全部スルーすんだよ?有り得なくない?うちら親友なのに。」
「てか、○○のギタボの菅原さん、ああ、スガくんね。りーちゃんと付き合ってる。証拠?出そっか。」
地獄の底に突き落とされたライブ配信を忘れられぬ。私にとって避けては通れない道、乗り越えるべき壁が待ち受ける。