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KILLING ME SOFTLY【小説】06_参加賞をくれよ

夏輝の暴露ライブ配信を経て、およそ数万人のフォロワーを抱えるインフルエンサー・凛々香としての写真共有SNSには夥しい誹謗中傷コメントが並んだ。


身分を明らかにせず鍵を掛け非公開に定め、個人的に楽しんでいたつぶやきアプリのアカウント〈LR〉と凛々香を結び付けるたった1足のスニーカーや、お相手とされたスガくんこと菅原(すがわら)さんがフロントマンを務めるバンドのライブへ行ったという投稿のスクリーンショット等々がいつの間にやら掲示板に晒されており、パニック状態となって、ソーシャルネットワーキングサービスを削除する。


それに伴い地道に積み重ねてきた、インターネットを通じた主な仕事の依頼は白紙に、サロンモデルだった美容室には契約を切られた。凛々香の看板を自ら下ろした為に当然の報いである。
代わりなど幾らでも揃っている世界において、わざわざ炎上中の者と関わる必要もなかろう。
イメージダウンに繋がる。


一方、メッセージアプリには不自然な程に私を思い遣る言葉が届くも、その都度返す気にもなれなかった。千暁の悲しむ姿が目に浮かび、これにて破局が訪れる筈だ、と最愛の彼から別れを告げられるのを恐れて翌日に連絡手段を絶つ。


何とか自分を奮い立たせて電車に乗り、吉祥寺のアルバイト先へと向かえば、職場すら特定されたおかげか店長が難癖を付けるメールに鳴り止まぬ電話と嫌がらせのファックスで頭を悩ませていた。
今まで親しみ合った従業員の1人が
「莉里さん、気にしないでよ!」
と励ましてくる。


彼女達から非難されることはなかったが、より一層、精神が錯乱した。



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