マガジンのカバー画像

この本いいよ!

258
これまで私がnoteに投稿した読書感想記事をまとめたマガジンです。本選びの参考になればいいなと思います。
運営しているクリエイター

#生きづらさ

『君の青が、海にとけるまで』が素敵な話だったので紹介する

『君の青が、海にとけるまで』が素敵な話だったので紹介する

いぬじゅんさんの『君の青が、海にとけるまで』(角川文庫)という作品を読みました。

主に高校生たちの恋を描いたお話が多かったいぬじゅんさんの作品ですが、今作は社会人が主人公の居場所をテーマにした物語となっていて、これまでの作品とはひと味違う優しさを感じる内容でした。

念願の看護師になったものの、職場でのトラブルで心が病み、休職することになった胡麦。物語は休職中に胡麦がSESTAというカフェに訪れ

もっとみる
カワイソウ、って言ってあげよっかw(NetGalleyより)

カワイソウ、って言ってあげよっかw(NetGalleyより)

夏原エヰジさん『カワイソウ、って言ってあげよっかw』という小説を読みました。この作品は、発売前の本などのゲラが読めるサイト「NetGalley」にて読んだものとなります。講談社から単行本が11日に発売とのことです。

ここ近年、生きづらさをテーマにした小説にかなり関心があるので、性格の悪そうなタイトルと合わせてどのような物語が展開されるのか、めちゃくちゃ気になりました。

外国の文化への憧れ、働く

もっとみる
最近読んで印象に残った小説まとめ!

最近読んで印象に残った小説まとめ!

しばらく小説の感想がお休み気味だったので、今回はここ最近読んで「いいな」と思った小説を一挙まとめて紹介します!

花火みたいな恋だった

(著者:小桜菜々さん)

今作は短編集となっていて、高校生から社会人まで複雑な恋に悩む女性たちの成長が描かれていました。青春小説らしいピュアな恋もあれば、ドロドロしたちょっと大人めの恋もあり、それぞれのエピソードが刺激的でした。

付き合って初めて気付いた「運命

もっとみる
これからも読みたい作家さんがまた増えました。

これからも読みたい作家さんがまた増えました。

砂村かいりさんの『黒蝶貝のピアス』を読みました。数年前に『アパートたまゆら』という既刊を読んだ時、文章表現や作中での思考に惹かれるものがあり、それ以来ずっと気になっていた作家さんの今年発売された作品です。

アパートたまゆらは深夜ドラマのような雰囲気の恋愛ものでしたが、今作は女性たちの生き様と絆を描いた物語となっており、また新たな砂村さんの魅力に出会えた1冊でした。

『黒蝶貝のピアス』感想

もっとみる
ずっと気になっていた青春小説のアンソロジーを読みました

ずっと気になっていた青春小説のアンソロジーを読みました

高校生の頃によく読んでいたような青春小説が社会人になった今でも大好きです。

いろんな青春小説を読んできた中、最近は切ない恋愛だけでなく、今を生きる人々の悩みと向き合い、解決を後押ししてくれる作品も多いと感じています。その中には私が高校生の頃にはなかった新たな常識に触れている作品も少なくはなく、今読んでも学びとなる作品も数多くあります。

先日、私が読んだスターツ出版文庫の『君の傷痕が知りたい』と

もっとみる
今を生きる私たちへ大切なメッセージがこの本にはある。(汐見夏衛:『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』)

今を生きる私たちへ大切なメッセージがこの本にはある。(汐見夏衛:『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』)

今回は私が好きな作家さんの最近読んだ新しい本を紹介します。
今回紹介するのは、汐見夏衛さんの『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』という作品です。noteで汐見さんの本を紹介するのは9冊目となります。(アンソロジー『卒業』も含めれば10冊)
最近はアンソロジー収録の短編作品が多かったので、汐見さんの長編作品を読むのはとても久しぶりな感じがします。

誰からも愛される男子生徒・鈴白く

もっとみる
暗闇の中に希望を感じる話が好き(町田そのこ:『52ヘルツのクジラたち』)

暗闇の中に希望を感じる話が好き(町田そのこ:『52ヘルツのクジラたち』)

町田そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』を読みました。
数年前に本屋大賞を受賞した作品というのもあり、いつか読んでみたいと思っていました。

今作は主人公の貴瑚(通称:キナコ)が、親から「ムシ」と呼ばれ、虐待を受けている少年を助けたところから物語が動き出します。

傷ついた少年の姿と自分の過去が重なって見えたキナコは、大半には聴こえないけど、いつか出会う仲間に届くように祈っている「52ヘルツのク

もっとみる
美しくない世界と戦う力をくれる物語(冬野岬:毒をもって僕らは)

美しくない世界と戦う力をくれる物語(冬野岬:毒をもって僕らは)

冬野岬さんの『毒をもって僕らは』という作品を読みました。

生きづらさと戦う青春小説が私は大好きなので、ポプラ社のサイトで表紙とあらすじを見て発売前から凄く読みたかった1冊です。

★★★

今作は入学早々に学校での居場所をなくし、更には尿路結石と診断されお先真っ暗となってしまった主人公・道歩が、病院で知り合った綿野という少女との交流を通じて、生きる希望と世界の美しさを見出していく物語となっていま

もっとみる
人とのつながりが「奇跡」を生む(村瀬健:『神様の絆創膏』)

人とのつながりが「奇跡」を生む(村瀬健:『神様の絆創膏』)

2023年1冊目の読書感想文!今回の本は、村瀬健さんのライト文芸作品『神様の絆創膏』です。一昨年読んだ前作『西由比ヶ浜駅の神様』が凄く良かったので、新作も引き続き読んでみました。

個人的には、前作の2話目(親子の絆の物語。上記感想文でも触れています。)が特に心に残っていたので、このエピソードのあるシーンを深掘りしたような今作の内容には強く惹かれましたね。

前作同様、各エピソードで登場する人物の

もっとみる
「悩み」はひとりでは乗り越えられない(佐原ひかり:『人間みたいに生きている』)

「悩み」はひとりでは乗り越えられない(佐原ひかり:『人間みたいに生きている』)

今回の本は、佐原ひかりさんの『人間みたいに生きている』という作品です。この作品、なかなかの衝撃作です。

あらすじに「吸血鬼」という言葉があったので、ファンタジーっぽい話かと思っていましたが、実際は生きづらさを描いた青春小説でした。

今作は「食べる」という日常的な行為を嫌う女子高生の成長を描いた物語です。自分にはわからない感覚を知れるのも物語ならではの魅力かと。
生きづらさに溢れた今の世の中だか

もっとみる
現代の吸血鬼の姿から考える「人間」の課題(万城目学:『あの子とQ』)

現代の吸血鬼の姿から考える「人間」の課題(万城目学:『あの子とQ』)

読んでいてとても楽しい気持ちになれた作品があるので紹介します。
今回の本は、万城目学さんの『あの子とQ』という作品です。

レトロでポップなカバーイラストと魅力的なキャッチコピーに惹かれて手にしてみた1冊。カバーだけでも仕掛け満載で(例えば帯を外すと違う弓子の姿が現れます)、読む前からわくわくした気持ちでいっぱいになりました。

今作は「青春小説」や「ファンタジー」のジャンルにカテゴライズできる作

もっとみる
現代を生きる尊さを感じる物語(二宮敦人:『さよなら、転生物語』)

現代を生きる尊さを感じる物語(二宮敦人:『さよなら、転生物語』)

読むと今の自分に自信が持てる物語に出会ったので紹介します。
今回の本は、二宮敦人さんの『さよなら、転生物語』(TO文庫)という作品です。

今、この感想文を読んでいるあなたは、「他の時代の人間に生まれてみたい」と思ったことがありますか?今作では不思議な力によって、過去を生きる人間に転生した現代人たちの物語が描かれます。

転生というとラノベなどでは定番のモチーフですが、転生を通して時代ごとの価値観

もっとみる
自分で選ばなければ掴めない「幸せ」もある(凪良ゆう:『汝、星のごとく』)

自分で選ばなければ掴めない「幸せ」もある(凪良ゆう:『汝、星のごとく』)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、凪良ゆうさんの『汝、星のごとく』という作品です。
私は凪良さんの作品で描かれる「少し変わった人間関係の形」がとても好きで、作品を読むたびに「世の中にはいろいろな考えがあっていいんだな」と気付かされます。

今作は遠距離恋愛を描いた物語なだけでなく、これまで凪良さんが既刊で描いてきた「少し変わった人間関係の形」に対するひとつの「答え」のようにも私は感じられました

もっとみる
第177回:大学時代に出会いたかった物語(真下みこと:『茜さす日に嘘を隠して』+α)

第177回:大学時代に出会いたかった物語(真下みこと:『茜さす日に嘘を隠して』+α)

こんにちは、あみのです!
今回の本は、真下みことさんの『茜さす日に嘘を隠して』という作品です。

今作は青羽悠さんの『青く滲んだ月の行方』という作品と同一の世界観で描かれており、真下さんの作品はその女性視点のお話となっていました。

男性視点となる青羽さんの作品も読んではいるのですが、個人的には『茜さす日に~』の方が印象深かったので、今回の感想ではこちらの作品について触れたいと思います。

あらす

もっとみる