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今を生きる私たちへ大切なメッセージがこの本にはある。(汐見夏衛:『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』)

今回は私が好きな作家さんの最近読んだ新しい本を紹介します。
今回紹介するのは、汐見夏衛さんの『たとえ祈りが届かなくても君に伝えたいことがあるんだ』という作品です。noteで汐見さんの本を紹介するのは9冊目となります。(アンソロジー『卒業』も含めれば10冊)
最近はアンソロジー収録の短編作品が多かったので、汐見さんの長編作品を読むのはとても久しぶりな感じがします。

誰からも愛される男子生徒・鈴白くんが自殺したという衝撃的なニュースから幕を開ける今作。主人公のなずなは同級生のあざみくんと共に、修学旅行の思い出が詰まった砂時計の不思議な力を利用し、何度も同じ時間をやり直して鈴白くんの死から回避しようとします。

ここまでだとよくあるタイムリープものの青春小説だと思いますが、終盤の展開では悲しい現実と向き合うヒントを描いていた箇所もあり、日々の生きづらさを描いた青春小説を得意とする汐見さんならではの物語であることに気付かされます。

鈴白くんの死に関する真実をはじめ、今作のすべてを理解する必要はまったくないと私は思いました。
しかし、鈴白くんの一連の出来事を通してなずなたちが学んだことからは、なんでも「完璧」にこだわる必要なんてないこと、そして誰かを悲しませない生き方をすることを強く感じさせてくれました。

砂時計の力でも現実を変えることはできませんでしたが、鈴白くんがくれた優しさと思い出を胸に、これからを前向きに生きようと決意するなずなたちの姿が心に沁みた傑作でした。

中でもクライマックスのなずなの魂を込めたスピーチのシーンは、ぜひ多くの人にも読んでもらいたいです!このシーンが今作最大のメッセージだと感じたので。

汐見さんの作品って学生をターゲットにした内容が多いですが、それぞれの物語で描かれる悩みとその乗り越えるヒントには、かつて学生だった私にも刺さるものがたくさんあります。
毎日の様々な気持ちと向き合うために、これからも作品を読んできたい作家さんです。

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