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わたしの書いたお気に入りnote

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これがきっと恋だから、

これがきっと恋だから、

これはわたしと恋人との話。

付き合う前日の夜、わたしたちはデートをしていた。

付き合う前の、甘すぎるけど、ちょっとだけ苦い時間。
今しかできない会話、今だからこそ意味をなす表現、
そういったものが、確実にしっかりと存在していた。

「結婚して子どもができたら、深夜のコンビニに手を繋いでいくことが2人の特別な時間になる」

デートの帰りにコンビニに寄ったとき、ホットカフェラテを作る待ち時間に、彼

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拝啓

拝啓

あなたへ

あなたはいつも頑張っていて偉いです

あなたはいつも笑っていて偉いです

あなたはいつも毎日を必死に生きていて偉いです

あなたはいつも全ての人に優しくできて偉いです

けれど

あなたは生きていく上で必要な嘘のつき方を知らないからダメです

あなたは心が泣いているのを隠して作り笑顔をするからダメです

あなたは気持ちが萎えて死にたいと思うときにきちんと死にたいと言えないからダメです

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たやすいこと

たやすいこと

夜明けの終わり。

カーテンの隙間から差し込む明かりが、
あなたの頬にそっと色を乗せる。

これから先、私たちは

幾度となく、
同じようで全く違う、
甘くて痛い夜を越えていく。

うっすらといびきをかくあなたの、
目にかかる前髪をそっとどかし、
おでこにゆっくりと口づけをした。

それは、
とっても甘くて、
耐えられないほどに痛かった。

私の涙が、
うっすらと寝息をもらすあなたの、
私の体温が

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あたためた想い

私が「ただの映画好き」から「映画監督未満」になったのは、今から約1年ほど前の話。普段は一晩のうちに2つ以上必ず夢を見る私が一切夢を見なくなったのも、ちょうどその頃の話。映画を作ってみたいという漠然とした願望に脳内が支配された私は、お風呂に入っているとき、歯を磨いているとき、寝支度を済ませ布団に入ったとき、そんな、日常にありふれた何も考えなくてよい瞬間でさえも、答えの出ない問いを永遠に巡らせていた。

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始まりの始まり

始まりの始まり

2021年4月1日

私は、今後きっと幾度となく、今日という日を思い出すだろう。

ぱきっとしたスーツに身を包み、おろしたてのネクタイを締め、ピカピカの靴を履いて、入社式の会場へと向かう。

それは、私が経験しなかった、もう一つの日常だ。

就活中。満員電車に揉まれながら、説明会の会場に向かうときの気持ちを思い出す。

都内を走る電車の広告の大半は転職に関するものばかりで、それ以外は、大体が自己啓

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繋

週末に読みたい本をどっさり買い漁る金曜日。相変わらず、紙の本は増えるばかり。幸せな悩みだ。

そんなこんなで、これまでは「読むこと」しかしてこなかった私は、物語を「書くこと」に最近ハマっている。学生時代は国語が一番の苦手科目だった。そんな私が、いま一番関心を持っていることが物語を書くことだなんて、高校生の私からは想像もつかなかっただろう(笑)

ツイッターで何気なく書いている文章の一つ一つにも、そ

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短編小説 【 溶けた煙 】

短編小説 【 溶けた煙 】

下北沢から和泉多摩川までは、小田急線で約20分ほど。お互いにバイトを終えた夜22時ごろ、私たちは行きつけの居酒屋で待ち合わせをし、明け方まで盃を交わした。朝が夜を飲み込むころには、駅に近づくにつれてスーツを着た者から楽器を背負った者まで、夜通し下北沢の街を彩っていた人々が電柱や道路と一体化し、下を向いて項垂れている。

「水、買ってあげたい。」
「たぶん、この量だとキリがないな。」
彼はそう言って

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新しい旅

新しい旅

「泣きながら飯を食ったことがある人間は、きっとこの先、どんな困難も乗り越えられる。」

高校時代、親しくしていた先生が私に教えてくれた言葉だ。

当時の私も、昨日までの私も、きっとそんな日が訪れることなどないだろう。漠然と、そう思っていた。

しかし、そんな矢先。

「泣きながら飯を食う日」は、唐突に訪れた。

そう。まさに今日だ。

今日は、初めて泣きながら飯を食った記念日だ。

正直、涙の味で

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膨らむ音

膨らむ音

朝起きて、諸々のことを済ます間にやかんでお湯を沸かすのが私の習慣だ。

が、今日はお湯が沸くまで、じっと待っていたい気分だった。

実家のやかんは大きめだから、考えごとをするのには丁度いい時間を与えてくれそうな予感がしたのかもしれない。

水を注いで火にかける。

スタバのカウンター席に用意されたものと同じくらいの高さの椅子に腰かけて、軽いストレッチをしながら青い炎と古びたやかんを見つめていた。

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