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ことばノート

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言語・日本語に関する共感した記事と、私見、思いつきの備忘録みたいな。
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記事一覧

言葉が気持ちを作る

言葉が気持ちを作る

岡田憲治『言葉が足りないとサルになる』(亜紀書房, 2010年)

ちょっと言い過ぎだと思われそうなタイトルである。本文も情熱的で、少々主観的にすぎる感があるが、それは「豊かな言葉とたくさんのおしゃべりこそが、これからの日本を救う」という筆者の主張の、筆者自身による実践に他ならない。そして読んだ者に、肯定であれ、否定であれ、言葉を使って本の内容についての自分の考え・意見を形成・表明しなければならな

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あくまで、推測の域を出ませんが。

あくまで、推測の域を出ませんが。

以前、「発表をはじめさせていただきます」という言い方が気になるという記事を書いたが、実はもう1つ、ゼミの学生が頻繁に用いる表現で気になるものがある。それが「あくまで推測の域を出ませんが」という前置きだ。他の大学や研究室ではどうかわからないが、僕の所属する研究室ではこのフレーズが便利なものと思われているのか、レポートや研究発表の結論を導くときの前置きとして使われるのをよく耳にする。おそらく「とりあえ

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Why?

Why?

プロレスラーの木村花選手が5月23日、亡くなった。

人気番組「テラスハウス」に出演しており、その配信内容に関するSNS上での誹謗中傷に悩んでいたという。

彼女が亡くなって、「テラスハウス」で共演していたメンバーが追悼のことばを次々と発信するなかで、誹謗中傷に対するこんな意見がみられた。

「言葉は本当に、凶器になります。」
「言葉の暴力って言いますけど、それは本当なんですよ。」

同時に、共演

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敬語表現「させていただきます」をめぐる諸問題

敬語表現「させていただきます」をめぐる諸問題

昨年、大学2年生で研究室に所属するようになり、週に2度のゼミに参加するようになった。事前に時間をかけて準備してきたテーマについて、学生1人ずつが発表を行うそのゼミで、発表者が口をそろえて言う台詞がある。

「発表をはじめさせていただきます」

誰が言い始めたのかはわからないが、まず1人が言い始めてそれを次の人が真似て、という形で伝染し、気づけば皆が言うようになっていた。僕自身はこのひと言にとても違

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#63. あなたの名前に女性の響きが?

#63. あなたの名前に女性の響きが?

名前が母音の -a で終わる人は、ヨーロッパでよく女性と間違われるらしい。

大学時代に受けていた講義で、「アキラ」という名前の初老の(すみません)先生が苦労話を話してくれた。

欧米の人たちと電話でやりとりなどしていると、名前を Akira と名乗ったとたん「女性ですか?」と聞かれるそうだ。

「いやあなた、わたしの声を聞いておわかりのとおり、明らかにわたしは男ですよ」といつも先生は返すらしいが

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日本語で学べる音声学・音韻論資料のまとめ

!!!以下の記事は、コロナ禍初期の絶賛自粛中に書かれたもので、内容は少し古くなっております。ご了承ください!!!

1. 川原繁人の音声学入門をYoutubeにUPし始めました。このコロナの時代でも楽しく音声学・言語学を学んで欲しい!ということで、著作権的にアウトな部分を削ってちょっと淡泊ですが、川原なりの楽しい音声学入門の動画を撮り始めました。よかったらどうぞ。

再生リストにまとめました:

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小説『舟を編む』を読む-言語学的私感-

小説『舟を編む』を読む-言語学的私感-

先に映画で観ていた『舟を編む』ですが、映画のもとになった小説ではどのように描写されているか気になってしまい、書店で購入してきて読んでみました。映画にはなかったシーンが描かれていたり、映画とは違う設定になっていたりと、見比べてみるのもなかなか楽しいもので。
映画と同じく小説もこれまではあまり読んでこなかったものですから、話の展開がどうだ、とか一般的な小説の感想を述べるのはやめておいて、例によって言語

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文体って、一体なんのことなのか

文体って、一体なんのことなのか

2018年がもう直ぐ終わるけれど、この一年で最も素晴らしかった出来事は、文体とは何か、がわかったことだと思う。
ごめん、ちょっと興奮して、言いすぎた。
文体とは何か、の、片鱗がわかったことだと思う。

これから書くことは、ひょっとしたら、ライター1年目の人にとっても常識なのかもしれない。え、そんなことも知らずに20年近くライターやってたの?と言われるかもしれない。

なんだけど、わたしにとって、

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映画「舟を編む」を観る -言語学的私感-

映画「舟を編む」を観る -言語学的私感-

映画が好きです、と言えるほど映画を観るわけではないのですが。お薦めされたり何かきっかけがあれば、映画館へ出かけたりDVDをレンタルしてきて映画を観ています。コロナ騒ぎになってからは、専らTSUTAYAでレンタルして家で観るのみになっていますが。

さて、映画「舟を編む」を知ったのは韓国映画「マルモイ」が日本で公開されることを知ったのがきっかけでした。

最近韓国にハマっている父が、僕にこの映画を教

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