川原繁人のnote(言語学者・音声学者)

音声学者・言語学者。更研究テーマはプリキュア、ポケモン、ラップ、メイドとか。「音声学は覚えることが多い」「言語学は何をやっているのか分からない」思われている状況を打破したい。自問自答しながら研究、教育、アウトリーチ、子育てに勤しむ毎日。

川原繁人のnote(言語学者・音声学者)

音声学者・言語学者。更研究テーマはプリキュア、ポケモン、ラップ、メイドとか。「音声学は覚えることが多い」「言語学は何をやっているのか分からない」思われている状況を打破したい。自問自答しながら研究、教育、アウトリーチ、子育てに勤しむ毎日。

最近の記事

川原繁人(言語学者)による生成AI搭載おしゃべりアプリに関する意見のまとめ

最近の私の考えている大事なトピックが、生成AI搭載おしゃべりアプリを子どもたち(とくに幼年期の子ども)に与えることへの危機感です。現場の方々で、この話題に対して関心をもっている方は少なくないようで(例えば、こちら)、私も言語学者としての意見をまとめるべきだと感じ始めました。 ひと言でいうと、私は慎重派です。現在進行形で考えをまとめている話題ですが、興味を持ってくださる方も少なくないので、ここに関連する資料をまとめておきます: 発表済みのもの 1.川原繁人(2024)生成

    • エゴサの本当の恐ろしさ

      前置き 以下の内容はとある雑誌に頼まれたエッセイがもとになっているのですが、そのエッセイが9月出版予定で、編集者さんが「もっと早く世に出した方が良いと思います……」とおっしゃってくださったので、noteに投稿することにいたしました。 本編 私は、二月の半ばから得体の知れない不安感とそれに伴う倦怠感に襲われるようになりました。体調が悪かったのは明らかで、学生に心配されるほどでした。そんな中、三月の始め、四月上旬に実施予定の大きな仕事の依頼が来たのです。その依頼は、全力で向

      • 音声学がうたう人&話す人の助けになる(かもしれない)事例

        ver 1.4: 声帯の潤い・腹式呼吸・アクセントについて加筆。 ver. 1.3:  新たな資料を参考にさまざまな箇所を加筆 ver. 1.2: 喉頭の高さと声の高さについて加筆 ver. 1.1:  最後の段落を加筆 ver. 1.0: 始めて公開したもの ゴスペラーズの北山陽一さんは、「音声学は、声を使う人ならみんなが通るべき道なんじゃないか」とおっしゃってくださっています。実際に、音声学や言語学の知見をお伝えして、歌う人々やアナウンサーたちに喜んでもらえることも増え

        • 『Fly me to the disco ball』も分析してみたよ

          ver.1.1です。初回の公開から頂いたコメントをもとに少し修正してあります。 はじめに いや、すごいですね。前回『VOXers』の韻を分析してみましたが、『Fly me to the disco ball』はもしかしたら、もっとすごいかもです。どっちのほうが良い曲とかではなくて、仕組みの複雑さがこちらの方が入り込んでいる、という感じです。正直、この曲を始めて聴いたときに「何かある!」という感覚はあったのですが、その詳細は自分でも理解できませんでした。じっくり腰を据えて分

          『VOXers』の韻を分析してみたよ

          お読みになる前に 酒井雄二さんは、私がこの記事を書くことには同意してくださいましたが、この内容に同意しているとは限りません。以下で解説する分析は、あくまで川原繁人個人の意見です。ご注意ください。 (すみません、正直に言いますと、酒井さんに最初の原稿をお見せして、私の理解が完全ではない部分に関してご指摘も受けました。私が最初の分析で気づけなかった部分は「酒井さんに教えてもらったよポイント!」と明記してあります。とは言うものの、この記事に関して、酒井さんはまったく文責を負い

          『VOXers』の韻を分析してみたよ

          北山陽一さんとの歩みをまとめてみたよ

          はじめに ゴスペラーズの北山陽一さんと出会って、もうすぐ二年半。控えめにいって、私の研究者人生を変えてくれた恩人です。数年前までの著作でくり返し言及していましたが、私は「音声学とか言語学って何の役に立つんだろう?」と悩んでいました。そんな悩みを吹き飛ばしてくれたのが北山さんです。 北山さんの尊敬すべきところは本当に沢山あるのですが、まず壁を作らないこと。正直、芸能人って「雲の上の人」だと思っていましたが、「川原=面白い人」って思ってくださったとたん、社交辞令を廃した深い

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          反論: 日本人だけが今もマスクを外せない 欧米との差を生んだ理由は「言語」にあった

          オレゴン大学の出丸先生から連絡があり、ネット上に掲載された記事が音声学的な観点から明らかに間違っている議論に基づいていることから、連名で反論させて頂きます。当該記事はこちら: https://news.yahoo.co.jp/articles/5459bfe1222cfca308cfc69b4dd56437a8462c2a?page=3 日本人がマスクを取らないのは日本語の音声学的特徴に起因するとしています。 最も問題の箇所を引用します。イタリアに長く住むオペラ歌手の意

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          私が娘に「100点なんて目指さないでいい」と言った理由

          本も無事に出版され、さらに以下のコラムの(ほぼ)全文がプレジデントオンラインに再掲されましたので、そちらをご覧下さい。 ***** 以下は7月にディスカヴァー21から出版予定の書籍のコラムの冒頭部分です。全部公開すると出版社様に迷惑がかかってしまうので、本当に冒頭だけ。なんで先行公開させて頂いたかというと、ネット上で「大学は知識を吸収するところである。知識はネットで吸収できる。だから大学はもういらない」という記事を見たからです。これはちゃんと反論しないとダメだよねってこと

          私が娘に「100点なんて目指さないでいい」と言った理由

          『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む』、校了後に見つかってしまった新たな興味深い例

          『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む~プリチュアからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで~』は、音声学者である川原繁人が娘たちや学生から学んだ面白い言語現象を元に音声学/言語学の世界を旅する書籍です。とても自然なことなのですが、書籍が出来上がってから、さらなる面白い例を娘たちが提示してくれて、「あー、本に載せればよかった〜〜」となるわけです。せっかくなので、そういった例を備忘録を兼ねてここにメモしていきます。もしかしたら、改訂版を出せるかもしれないですし。 形態素分析間違い

          『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む』、校了後に見つかってしまった新たな興味深い例

          私は、なぜ書籍3冊(ほぼ)同時出版することになったのか。

          現状の整理 私、川原繁人は2022年の前半に本を3冊出版します。 奥付だけで言いますと: 教養検定の『言語学者、外の世界へ羽ばたく〜ラッパー・声優・歌手とのコラボからプリキュア・ポケモン名の分析まで〜』が4月28日 朝日出版社の『音声学者、娘とことばの不思議に飛び込む~プリチュアからカピチュウ、おっけーぐるぐるまで~』が5月30日 大和書房の『フリースタイル言語学』が6月1日 なので、「ちょっとおかしなことになっているな」と思った人もいるかもしれません。私自身も思

          私は、なぜ書籍3冊(ほぼ)同時出版することになったのか。

          安倉さやか先生のレッスンに行ってみた

          先日、ボイストレーナーである安倉さやか先生のレッスンにお邪魔しました。音声学をベースにした指導ということで、声楽ド素人ながら、見学に行ったら目から鱗が何枚か。以下Twitterでのつぶやきのまとめ(少しだけ編集)。 ****** 先日、安倉さやか先生のレッスンを見学する機会を頂きました。私は声楽は素人なので、安倉先生のレッスンの神髄を理解した、などとはとても言えないけど、音声学者の端くれとして、感じるものはあった。 大きなテーマを二つ感じた:(1)それぞれの調音器官を一度

          安倉さやか先生のレッスンに行ってみた

          A list of my "rejection" history

          I have been learning and practicing the science of well-being, largely inspired by an online lecture by Dr. Laurie Santos at Yale, which can be found at:  https://www.coursera.org/learn/the-science-of-well-being/ As one practice, I compli

          【参考資料一覧】ラップで磨くことばの力vol.2【言語学×ラップイベント】

          みなさんこんにちは。 ラップで磨くことばの力vol.2へご参加いただきありがとうございました。 本イベント内で紹介された参考資料のまとめです📝 ラップに対して第一歩を踏み出したみなさんの 二歩目のお役に立てますように! 参考資料一覧  🎙Zeebra × 川原繁人 (2019) 日本語ラップと言語感覚. 『mandala musica/マンダラ・ムジカ ― ―普遍学としての音楽へ』 日本語ラップ界の重鎮であり、慶應義塾の訪問所員でもあるZeebraと本イベントの

          【参考資料一覧】ラップで磨くことばの力vol.2【言語学×ラップイベント】

          【講師紹介】ラップで磨くことばの力vol.2【言語学×ラップイベント】

          みなさん、こんにちは。 2021年1月17日AM10:00~に「ラップで磨くことばの力」というオンラインイベントを開催いたします。(詳細・応募はコチラ) withコロナ時代で楽しみが少なくなっている中、お金をかけなくても、外に出かけなくても、楽しめるものの一つが「ことば」だと思います。少しでもことばの魅力を知って、日常を楽しく彩ってほしいという想いから本イベントは始まりました。 日本中どころか世界中のどこにいても、小学生から大人まで何歳でも、どんな状況にある人でも参加し

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          言語学的ラップの楽しみ方

          日本語ラップには色々な楽しみ方があると思います。もちろん、純粋に曲として聞いても素晴らしい曲が多いです。それに加えて、曲のメッセージ性を楽しんでも良いですし、トラックメーカーとの相性を楽しんでも良いですし、韻を楽しんでも良いわけです。 私も色々な楽しみ方をするわけですが、その中でも韻を楽しむのが好きです。ちょっと変態チックと思われるかも知れませんが、私の韻の「言語学的な」堪能の仕方をご紹介いたします。ちなみにフリースタイルダンジョンで審査員をつとめさせて頂いたときに、韻にこ

          ひるおびの報道について音声学者として思うこと

          5/28日追記:ある先生から咳のデータを見せて頂きました。論文の公開はできないとのことですが、咳における流量は発話における流量に比べて文字通り桁違いでした。また、音圧もこれまた桁違いでした。もちろん発話時の飛沫も大事ですが、咳の恐ろしさを実感する値でした。 *** やはり我慢ができなくなり、動画を撮ってUPしました。でも、書いたのはこちらの記事が先です。 *** 5月21日ごろでしょうか、『ひるおび』という番組で、以下のような仮説が紹介されたようです。日本語で「これは

          ひるおびの報道について音声学者として思うこと