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食す相転移「かき揚げそば」⑤〜移りゆく充実の時〜
この、かき揚げと、つゆと、蕎麦が、それぞれの形をしっかりと保っている状態を、かき揚げそばでいうところの、三相のうちの「個体」の状態といえる。人間でいえば、20代くらいの、非常に固い、ソリッドな、若々しい時代。それぞれが自分の存在を崩されまいと、ハリハリになっている。
だが、この時も長くは続かない。かき揚げがカラッと浮いているのも束の間だ。毛細管現象は無慈悲にも、黒々としたつゆを、重力に反してかき
序・日々をプリズムに分光
白色光をプリズムに通すと、屈折し綺麗に分光され、七色ともいえぬもっと豊かな光のグラデーションを描くのを、誰もがみたことがあると思う。それは本物の現象でなくても、ニュートンが出てくる教科書だったり、ピンク・フロイドのCDのジャケットだったりするだろう。色のない、真っ白な光だと思っていたものが、こんなにも鮮やかで細やかなスペクトルからなるものだと、僕はずいぶんと驚いたものである。
もしかしたら、あれも