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また読み返す創作大賞応募作品

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応援したい2024年「創作大賞応募作品」をまとめています。①♡②コメント③感想文④note内で紹介 いずれかの方法であなたを応援しています。いっしょに創作大賞を盛り上げていきまし…
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記事一覧

大阪城は五センチ《 8 》 【創作大賞2024】

大阪城は五センチ《 8 》 【創作大賞2024】

《1》《2》《3》《4》《5》《6》
《7》《8》《9》《10》《11》《最終話》
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土曜の昼間だというのに、駅舎前は無人だった。

道路をまたいで架かる、白いペンキを塗りつけたべニアで作られたアーチの「歓迎」の文字が、薄曇りの空にはっきりと赤い。立ち止まって写真を撮ると、シャッター音があまりに駅前にひびいたので、思わずスマホのマイクを指で

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見えても見えなくても

見えても見えなくても

週末、ピアノジャズをBGMにゆっくりポテトチップをつまみにワインを飲む。娘が小さい頃は夫と定期的に楽しんでいた。この数年、そこに娘が加わるようになった。
娘はお茶、私と夫はワインでポテトチップを囲むのをいつからか「ポテチ会」と名付けられた。私と娘のどちらかが話始め、のんびりと夫がそれに答える。話したい人が話したいことを話す。日常の夕食での会話ではなかなかできない話題になることが多い。
将来のことを

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大阪城は五センチ《 1 》 【創作大賞2024】

大阪城は五センチ《 1 》 【創作大賞2024】



脱いでいた服を身につけた後は、宇治のそばにいる資格をすっかり剥奪されたような気持ちになる。

バスルームに水の音が響くのを聞きながら鏡台の前に立ち、クリーニングしたてのスラックスをしっかり引き上げ、新品のセーターの裾を整えた。申し訳程度に眉を書き足し、色付きの薬用リップを塗っただけのささやかな顔が、鏡の中から心配そうにこちらを見つめ返してくる。励ますようにショルダータイプのスマホケースを肩から

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いつか、青果売り場で売られる梨を見て泣く日がやって来る

いつか、青果売り場で売られる梨を見て泣く日がやって来る

実家で暮らす犬の好物は沢山あるが、その中でも一等好きなのが梨だ。林檎ではなく、梨だ。

林檎であれば一年を通してスーパーなどで購入出来るものの、季節の果物の梨となればそうもいかない。それに、林檎と比べれば梨は高価な果物でもある。そんな人間の懐事情もあって、可能であれば、ほんと出来る範囲内で構わないからこちらも好物として頂いて…といった具合にカットした林檎の提供を試みたこともあったのだが、ふんっと嘲

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青いセーターと、父の話。

青いセーターと、父の話。

「あのさ。こんどお義父さんに、セーターを贈るのはどうかなあ?」

息子と手をつないで休日のショッピングモールを歩いていたら、思い出したように夫が言った。
もうすぐわたしの父の誕生日なのだ。

そういえば、誕生日も父の日も夏の時期だからか、これまで父に贈るものは半袖のシャツやハーフパンツのような夏物ばかりだった。

「セーターかぁ。いいんだけど、あれがあるよ。ほら、あの青いセーター。」

「うん。で

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頑張るということ

頑張るということ

「頑張る」という言葉がある。
たいてい私達は皆、誰かに言われたことも、あるいは誰かに向けて言ったこともあるだろう。
中には「いや、初めて聞く言葉です。」という人もいるかもしれないので、念のため言葉の意味を調べてみた。

グワンばっている。

私達は皆グワンばっているのだ。
とくにこの季節。連日じめじめと蒸し暑く、ときに体温よりも高い気温の中で生きているなんて相当なグワンばりである。
加えて学校やら

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極貧神社暮らしから始まった私の人生の話

極貧神社暮らしから始まった私の人生の話

 子どもの頃、『貧乏すぎて地域の神社の奥に一家で住んでいた』、と人に言うと、ほぼ100%の確率でビビられ、
「神社って住めるの?」
 と訊かれる。多分、普通は住めないと思う。だって今まで生きてきて、『わかる〜ウチも〜』という人には会ったことがない。
 別に神主でも何でもなく、ただ住んでいるだけ。私が住んでいた神社が特殊だったんだと思う。
 うちの親は、両親ともに無職、というユニークな二人で、当然お

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ルンバよトラウマを超えていけ

ルンバよトラウマを超えていけ

我が家にルンバが来た。
踊るルンバではない。
ルンバと聞いて大多数の人がイメージする、あのお掃除ロボットルンバである。
2月に義父が亡くなり、義父の住んでいたアパートから、夫が持って帰ってきたのだった。

うちに来た時のルンバは、とても汚れていて、ゴミだらけで、埃をかぶっていて
控えめに言ってもめちゃくちゃ汚かった。

私はルンバを見下ろした。
正直全然信用してなかった。
ルンバの性能そのものに疑

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祖母の歌集

祖母の歌集

死んだ父方の祖母と私は似ている、とよく言われる。

部屋をすぐに散らかすところ、柄物の服が好きなところ、4月生まれなところ、旅行が好きなところ、家事が大雑把なところ、それでいて頭の回転は早いところ、そして、誰に頼まれるでもなく物書きをしているところ。

祖母は農業と子育ての合間に短歌を詠むことが趣味で、私が生まれるずっと前から野菜を作り、果物を作り、歌を作っていた。新聞の歌壇に投稿したり、歌会の仲

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【小説】パン屋 まよなかあひる(1/8)蘇るメロンパン

【小説】パン屋 まよなかあひる(1/8)蘇るメロンパン

第1話 蘇るメロンパン

 あーもう死んじゃお、って闇みたいな海に飛び込んでやるつもりだったのに、気がつくと猫のあとを追っていた。
 猫は、私がボストンバッグの中身を逆さまにしてざらざらと海に流していたら、いつの間にやら隣に座っていた。何かを待ち構えるように煌々と黄色い目を光らせて、残りは全て夜闇に紛れてしまいそうな黒猫。
「君も死にたいの?」
 話しかけてみるけれど、もちろん答えはない。まあ、死

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僕は母が泣いているのを見たことがない

僕は母が泣いているのを見たことがない

同世代に「母親」が増えた。
30代だ。当然のことだと思う。

「子供を風呂から上げたあとあまりの寒さと子育ての辛さで涙が出てきた」
「子連れで買い物に行ったら一杯一杯になってしまって泣きながら帰った」
そんな話を彼女たちから聞くことがある。

そうか、母親だって辛かったら泣いたりするよな。
そんな当たり前のことに気付かされる。

そしてふと思う。
僕は自分の母親が泣いているのを見たことがない。

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癖の盗人

癖の盗人

「お電話ありがとうございます。◯◯図書館です」
受話器を取って相手の名前やお問い合わせ内容をざっくり伺い、「では担当者に代わりますね」と保留を押して内線に繫ぐ。
4月に入職してから約一ヶ月、業務の三分の一くらいを電話番が占めている。
直接何かに対応するというのではなく、あくまで担当者に引き継ぐまでがいまの私の仕事だ。

先週のことである。
「はい、はい。それでは……」と言いながら担当の先輩の手が空

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タイムマシンランドセル

タイムマシンランドセル

時々不意に思い出しては、心がささくれ立つ記憶がある。
別に忘れたいともがいているわけでもないし、今の私が揺らぐわけでもない。
だけど、ピースサインを携えて笑ってくれたあの子を見て、割ともがいていたじゃないかとちょっと笑う。

夕暮れの空に安堵し、翌朝が変わらず巡ってくることが本当に嫌だったあの頃。
私はずっと、そういう風に毎日を送ることを当然と思っていた。あの頃の自分に喝を入れることで、今の私にな

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【エッセイ】色気を自在に操る子

【エッセイ】色気を自在に操る子

色気とは何ぞやと聞かれても漠然とした概念としか言いようがないのだが、人生で忘れられないほど色っぽいと感じた女の子が一人いた。
往々にして女同士の場合、色気は距離が遠い人にしか感じない。初対面で色っぽいと感じても、親しくなっていくうちに別の要素で肉付けされるせいか、どんどんその人の印象から色気というものが削がれていくのだ。

20代の頃、美術館の受付をやっていた時期があった。受付のメンバーは全体的に

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