【エッセイ】騙されたと思って食べてみて
実家に帰ると、母が料理をしてくれる。食卓いっぱいに並んだ料理を食べながら、つい話に夢中になっていると話を遮って母が言う。
「ねぇこれ食べてみて」
うん、わかっている。次に食べようと思っていた。こっちはこっちのペースで食べるつもりだから、せかさないでほしい。「わかった、わかった」と言いながら母の勧めるおかずに箸をつけ、再びくだらない話を始めたりテレビに夢中になったりしながら、ゆるゆると食事が進む。しかし母は家族の箸の進み具合が気になっているようで、こちらとしてはその気配が若干プ