香料植物の魔法を感じてみませんか?『調香師が語る香料植物の図鑑』
こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です。
今日は、香りが持つ魔法の力について本と絡めつつお話ししたいと思います。
香りは、私たちの記憶や感情に深く結びついており、その力は「プルースト効果」として知られています。
プルースト効果とは、特定の香りが過去の記憶を鮮明に呼び起こす現象のことです。
これは『失われた時を求めて』に登場する、マドレーヌの香りから幼少期の記憶が蘇るシーンに由来しています。マドレーヌを紅茶にひたすシーンはあまりに有名ですね!
香りは、記憶の鍵となり、瞬時に過去の感情や出来事を呼び起こす不思議な魔力を持っています。だからわたしは「魔法」というサブタイトルを付けてみました。
そんな香りの魔法を理解し、楽しむための1冊『調香師が語る香料植物の図鑑』を今日は紹介していきます!
この本(図鑑)は、世界屈指の調香師たちが、自身の経験や知識を基に、香料植物の世界を解説しています。イヴ・サンローランの「オピウム」、キャロンの「ナルシス・ノワール」、ゲランの「ルール・ブルー」、シャネルの「No5」など、名香を生み出した調香師たちが、その秘密を明かしています。
というか、実はすでにわたしの手元に10年近く置いてあります。
この図鑑をおすすめする理由は、美しい写真と詳細な解説によって、香料植物の魅力を余すところなく伝えているからです。
また、植物の起源や歴史、栽培方法、香りの特徴、そして香水における役割などが、調香師の視点から語られています。そこには科学的なエビデンスがあります。
あの名香の秘密がここに
「ジャドール」の官能的な「ジャスミン」の秘密……、
「フラワー バイ ケンゾー」の繊細な「すみれ」の物語……。
50種類以上の香料植物たちが、美しい写真とともに、その魅力を余すところなく語りかけてくれます。
まずはどんな人が書いているのかを紹介します。
フレディ・ゴズランについて
フレディ・ゴズランは、物理科学博士、大学助教。物理科学に基づいた香料への深い知識に裏打ちされた香水に関する本を多数出版。ゲラン、オルセー、キャロン、シーグラムグループと連携した出版物あり。
グザビエ・フェルナンデスについて
グザビエ・フェルナンデスは、化学博士。生物活性分子と食品香料化学に精通。植物研究に関して60冊以上(2013年時点)の本を上梓。
ベルナール・ガロタン
シェフ。多くのレストランで経験を積んだあと、一流料理店のシェフに。現在と過去、未来の味覚、土地と遠方の味覚を用いることが喜び。現代美術と味覚のフュージョンが得意。
具体的には、以下のような内容が掲載されています。
香りのプロが語る、奥深い植物の世界
植物のプロフィール 学名、科名、原産地、栽培地、抽出部位、香りの特徴などの詳しい紹介
美しい写真 各植物を鮮明な写真で捉え、その美しさや特徴の解説
植物のイラスト さらに植物の細部の特徴を図解
香りの表現 香りの印象を言葉で表現し、想像できるような工夫
植物にまつわる物語 歴史的な背景や文化的なエピソード、調香師の個人的な思い出などが語られ、植物への理解を深められる
香水における役割 各植物の香りの効果や役割の解説。その香りが使用された代表的なフレグランスの紹介。(製造終了品、日本国内未発売品も掲載)
この図鑑では、50種類以上の香料植物が紹介されており、それぞれについて以下の情報がさらに詳しく解説されています。
専門的な知識も満載
学名 植物を特定するためのラテン語表記
科名 植物の分類上の所属
原産 植物がもともと自生していた地域
商業的生産地 主な現在の生産地域
抽出部位 香料を抽出する植物の部分(花、葉、茎、根、果皮など)
抽出方法 水蒸気蒸留、圧搾、溶剤抽出など、香料を抽出する方法(各方法の図解あり)
香りのノート トップノート、ミドルノート、ベースノートのどの段階に分類されるか
香りのファミリー フローラル、シトラス、ウッディ、スパイシーなど、香りの系統
香りの特徴 調香師が感じる香りの具体的な表現(例、ジャスミンのように甘美で官能的、ベルガモットのようにフレッシュでフルーティなど)
植物にまつわるストーリー
歴史 香料としての利用の歴史や、文化的な背景
神話や伝説 植物にまつわる神話や伝説、民話
個人的なエピソード 調香師がその植物と出会ったときのエピソードや、思い出、いわゆるそれぞれの「プルースト効果」
香水における役割
香りの効果 リラックス効果、リフレッシュ効果、高揚感など、香りのもたらす効果
相性の良い香料 その植物と相性が良い他の香料
その他にも
付録にて香料に関する専門用語の解説あり
各ブランドの代表的フレグランス発売年一覧
まとめ
『調香師が語る香料植物の図鑑』は、香料植物の世界を深く知りたい人にとって、とても価値のある一冊です。美しい写真やイラスト、専門的な知識、調香師の視点など、様々な角度から香料植物の魅力に触れることができます。
香水の愛好家はもちろん、植物や香りに関心のある方、アロマセラピーに興味のある方にも、新たな世界を広げる一冊となるでしょう。
著者達は香料植物に深い愛情を持ち、その魅力を伝えることに情熱を注いでいます。彼らが長年培ってきた知識と経験を惜しみなく注ぎ込んだ1冊です。
感想
フレグランス製品を紹介する本に、各香料をここまで詳しく解説したものは少ないので稀覯文献として重宝しています。
香水はひとつの芸術作品と捉えられる一方で、化学・物理との結びつきも強く、科学的な根拠(エビデンス)が必要になります。その両方から詳しくアプローチしていく数少ない文献のひとつでしょう。
植物の写真レイアウトも素晴らしく、図鑑として美しい植物を楽しむ、科学の視点から香料植物への理解を深める、と様々な方面で活躍する1冊です。
あなたの感性を刺激し、香りの魔法を解き放つ、この一冊をぜひ手にとってみてください!
手に取って、香りの魔法を感じてください。
そして、あなた自身もプルーストのように香りの旅を始めてみませんか?
【編集後記】
私たちは「すべての記事を無料で、誰にでも読めるようにすること」をモットーにしています。そのため、今後も有料記事は一切公開いたしません。もし記事に価値を感じていただけたなら、ぜひサポートいただくか、リンクから本をご購入ください。次の記事の書籍代に活用させていただきます。
この記事が参加している募集
いただいたサポートは全て次回の書籍に充てられます。また次回の記事の最後に『謝辞』として、あなたのnoteを紹介する記事を追加させていただきます。