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2022年12月の記事一覧
ゆるキャラの中で時計の音がする
現代川柳と400字雑文 その79
ハローキティはゆるくはない。が、いわゆる「ご当地キティ」はどうか。いまもあるのかわからないが、かつて見た屋久島のご当地キティは、屋久杉に包まれたキティがまぶたを閉じているという、どこか植物の反乱を思わせるデザインだった。ゆるさとは真逆のアプローチにも思えるが、そうしたデザインがひょいと商品化されること自体になにかしらゆるさを感じる。鹿児島県には屋久杉キティの
ケルベロス相談できる人がいて
現代川柳と400字雑文 その77
3つの頭を持つ「地獄の番犬」ケルベロス。キャッチフレーズはおどろおどろしいが、3つの頭が交代に眠って残りの2つが見張りをするらしく、想像するとかわいらしいとすら思えてくる。よし、ここはいっそ「寝るの大好き!」ケルベロスにしてはどうか。あるいは「3頭なかよし!」ケルベロス、とか。もはや相手を威嚇したり、恐怖心を利用してコントロールするような時代でもない。それに
もうくまにあえないつらいくまいない
現代川柳と400字雑文 その73
処方せん薬局。ちがうのはわかっているが、どうしても「処方しない薬」の意味に読んでしまう。処方箋。たしかになじみのない字だ。ほかにもニュース等においてひらがなにひらかれがちな漢字は多くあり、いずれもふだんはほとんど見かけることのない字である。だ捕(拿捕)、警ら(警邏)、猛きん類(猛禽類)………あと、割ぽう(割烹)というのもある気がするが、これは割烹料理店が店名
ダイイングメッセージでのマヨビーム
現代川柳と400字雑文 その72
幼いころはマヨネーズが苦手だった。酢の酸味がだめで、酢の物など直接的なものはいまもかなりだめだ。マヨネーズはかなり克服できた。克服? 正確には「どうでもよくなった」というのが近い気がする。ときに人は苦手な食べ物が食べられるようになることを「克服」と言いがちだが、それはたんに感覚の鈍磨が引き起こした現象とは考えられないだろうか。だとすれば、克服どころか「衰退」
ゴミの日に生まれてゴミの日に眠る
現代川柳と400字雑文 その71
何年か前の引っ越しの際、舞台で使った小道具や衣装をまとめて廃棄した。その中に血まみれの白いシャツがあった。もちろん偽物の血、血糊というやつだ。たぶん腹を刺されたか撃たれたかしたという設定だったんだと思う。半透明のゴミ袋にシャツを入れると一気に不穏になった。うっすら透けて見える真っ赤な血の色、がすこし酸化した、茶色がかったリアルな赤色。事件だ。すくなくとも事件