労働遊民

長安のパチモンで子供銀行の紙幣を燃やしながら暮らすOL。アイコンは岡崎京子の『オカザキ…

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長安のパチモンで子供銀行の紙幣を燃やしながら暮らすOL。アイコンは岡崎京子の『オカザキ・ジャーナル』より。

記事一覧

昔の女

羽を折られてカゴに入れた鳥は、脚と嘴が強くなるのだろうか。 てっきり、私もそのカゴの中の鳥になるもんだとばかり思っていたが、気がついたらカゴが朽ち果てていたので…

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2年前
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遊民的中国レポート【6】日本人留学生の友人との出会いと、外国人のクラスメイトたち

前回レポート ◆◆ オリエンテーション後に一人で廊下を歩いていると、日本人の女の子に話しかけれた。 それがYさんと私の出会いだった。 「突然ごめんなさい。なんとな…

労働遊民
2年前
6

もう少し夢を見させていてほしかった

わたしには、街を歩き回るという癖がある。 好いた人や恋人がいる時には、会えない時にその人を思いながらダラダラと歩き続ける。 そういう人が特にいないときもやっぱり…

労働遊民
2年前
7

ブンコーに見学へ行った話

6年くらい前に、ブンコーに行った。 ブンコーは私が好きな小説家が通った「学校」だ。 私自身、別に小説家やライターになりたいと思っていたわけではないが、文章を書くこ…

労働遊民
2年前
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遊民的中国レポート【5】多分一生忘れないだろうなという言葉

前回レポートは以下より。 ◆◆ 教会の帰り、新しく知り合ったYや、ソウル大学からきたD、ルームメイトのHと一緒に、H&Mを訪れた。 彼女らは、早速服を買うそうで、私も…

労働遊民
2年前
7

トモダチの元カレ

「新しい投稿」というポップアップで表示されたSNSをクリックすると幼児がクレヨンで描いた顔の画像が飛び込んできた。 「2歳になりました!」と絵文字の添えられた投稿…

労働遊民
2年前
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【広告考】みじめで都合の良い女を、自立した愛され女に変換するDior

Miss DiorのCMを見て、あなたは何を思うだろう。 「愛してる」 と言い寄る恋人に 「じゃあ証明してよ」 と強気に出るナタリーポートマンが演じる女性は、魅力的な笑顔で太…

労働遊民
2年前
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遊民的中国レポート【4】韓国人たちに紛れ込んで「教会」に向かう、中国到着二日目

〈前回までの記事はこちらから〉 遊民的中国レポート【1】 遊民的中国レポート【3】 ◆◆ ルームメイトのHと私は、簡単な挨拶を交わした後、大人しく消灯して寝ることに…

労働遊民
2年前
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遊民的中国レポート【3】見送る母に望むことと、はじめてのルームメイト

政府奨学金の合格通知が届いたタイミングで私は母親に留学をする旨を告げた。 母親は素直に喜んでくれた。 というよりも、どちらかというと安心したのかもしれない。 わ…

労働遊民
2年前
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遊民的中国レポート【2】金と就職についての対策

29,800円のパッケージ旅行からの帰り道に 「一定期間この国に住んでみたい」と考えた私は、帰国後から早速、二つの問題の解決に向けて情報を探り始めた。 一つは就職の問…

労働遊民
2年前
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遊民的中国レポート【1】29,800円のパックツアーと留学生との出会い

29,800円の北京パックツアーと中国人留学生 生まれて初めて「海外」とやらに行ってみようと思ったのは22歳の時。 29,800円の中国・北京の2泊3日のツアー。当時の私にもなん…

労働遊民
2年前
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【人間考】「理解ある○○人」に救われないタイプの人間

※○○には近しい家族や恋人、友人が入ります 辛い時、苦しい時に誰かに支えてほしい、という感覚は、多くの人が持ち合わせていると思う。危機に瀕した時に、自分を見捨て…

労働遊民
2年前
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寒空のキリギリス

木枯らしの吹く空の下、赤や茶色の葉の中に、やけに綺麗な緑の葉を見つけたと思ったら、あなたはキリギリスね。 虫の息のキリギリスさん、いえ、からかっているのではない…

労働遊民
2年前
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昔の女

昔の女

羽を折られてカゴに入れた鳥は、脚と嘴が強くなるのだろうか。

てっきり、私もそのカゴの中の鳥になるもんだとばかり思っていたが、気がついたらカゴが朽ち果てていたので、驚きというものである。

カゴの中には、私が認識する限り、二羽の鳥がいた。

カゴの中にいた鳥のうち、一羽は死んでしまった。

死んだ鳥は、カゴこそが自分の居場所だと思い込んでいたようだ。
朽ちかけたカゴの中でカゴの中の鳥らしく、最後ま

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遊民的中国レポート【6】日本人留学生の友人との出会いと、外国人のクラスメイトたち

遊民的中国レポート【6】日本人留学生の友人との出会いと、外国人のクラスメイトたち

前回レポート

◆◆
オリエンテーション後に一人で廊下を歩いていると、日本人の女の子に話しかけれた。

それがYさんと私の出会いだった。

「突然ごめんなさい。なんとなく日本人だろうなと思って。さっきの説明、わかりましたか?あなた、日本人グループに入らずに参加されてたみたいですが。中国歴長いとか?」

Yさんは首都圏の大学生で、私より2歳年下だが、すでに上海で1年の留学を経験しており、中国語のレベ

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もう少し夢を見させていてほしかった

わたしには、街を歩き回るという癖がある。

好いた人や恋人がいる時には、会えない時にその人を思いながらダラダラと歩き続ける。

そういう人が特にいないときもやっぱり、これまで出会った好きなもの、映画とか音楽とか小説とか、そういうものを思い返して反芻しながら歩き回る。

歩き回ろうと歩き回らまいと、頭の中では常に反芻が起こっていて、味が無くなったガムを所在なく舌で転がすように、考える必要もないことを

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ブンコーに見学へ行った話

ブンコーに見学へ行った話

6年くらい前に、ブンコーに行った。
ブンコーは私が好きな小説家が通った「学校」だ。

私自身、別に小説家やライターになりたいと思っていたわけではないが、文章を書くことそれ自体には関心があったし、何より、どんな人がいるのか、見てみたくて、その見学会に行くことにしたのだ。
今思うと、働き始めて、初めて自由になる金と時間を得たのも大きいな。

ブンコーはK商店街を抜けた古いビルの中にあって、いかにも雰囲

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遊民的中国レポート【5】多分一生忘れないだろうなという言葉

遊民的中国レポート【5】多分一生忘れないだろうなという言葉

前回レポートは以下より。

◆◆

教会の帰り、新しく知り合ったYや、ソウル大学からきたD、ルームメイトのHと一緒に、H&Mを訪れた。

彼女らは、早速服を買うそうで、私もそれに付き添う形になった。その後も彼女らとはIKEAに行ったり、外資ブランドの多く入った百貨店に行くことが多かった。

来て早々、洋服やファッション小物を買うという感覚は私にはなかった。

おそらく、当時のほかの日本人留学生の多

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トモダチの元カレ

トモダチの元カレ

「新しい投稿」というポップアップで表示されたSNSをクリックすると幼児がクレヨンで描いた顔の画像が飛び込んできた。

「2歳になりました!」と絵文字の添えられた投稿には、絵の画像とともに、私と同い年の男性の顔の写真と、可愛い子供のツーショットが上がっている。

黒縁メガネの短髪で、チェックのワイシャツに身を包む、真面目そうな風貌はそのままだ。

彼は、私の友達の「初めての彼氏」だ。
「初めての彼氏

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【広告考】みじめで都合の良い女を、自立した愛され女に変換するDior

【広告考】みじめで都合の良い女を、自立した愛され女に変換するDior

Miss DiorのCMを見て、あなたは何を思うだろう。

「愛してる」
と言い寄る恋人に
「じゃあ証明してよ」
と強気に出るナタリーポートマンが演じる女性は、魅力的な笑顔で太陽の下を走り抜け、時には海に飛び込むダイナミックさを持つ。

彼女は最後に

「あなたは、愛のために何をする?」

と問いかけてくる。

ナタリーの溌剌とした美しさに、顔を出さずに活動するシンガーソングライターSiaの曲「c

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遊民的中国レポート【4】韓国人たちに紛れ込んで「教会」に向かう、中国到着二日目

遊民的中国レポート【4】韓国人たちに紛れ込んで「教会」に向かう、中国到着二日目

〈前回までの記事はこちらから〉

遊民的中国レポート【1】

遊民的中国レポート【3】

◆◆
ルームメイトのHと私は、簡単な挨拶を交わした後、大人しく消灯して寝ることにした。

他の国からやってくる留学生と比べても移動時間は短く、「長旅」と呼べるようなものではなったのだが、自宅から関空までの移動、関空から上海へのフライト、待ち時間を経ての数百キロのバス移動で、体感としてはかなり疲労感を覚えていた

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遊民的中国レポート【3】見送る母に望むことと、はじめてのルームメイト

遊民的中国レポート【3】見送る母に望むことと、はじめてのルームメイト

政府奨学金の合格通知が届いたタイミングで私は母親に留学をする旨を告げた。

母親は素直に喜んでくれた。
というよりも、どちらかというと安心したのかもしれない。

わたしはそれまで、金銭問題や父親の問題、そして姉弟間格差の問題について、母親に理不尽な口撃を仕掛けることが多かったのだ。

父親のやらかしたことの「後始末」をしながら家事子育てをしていた彼女に、家族の一心の期待と、私の反抗心が寄せられてい

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遊民的中国レポート【2】金と就職についての対策

遊民的中国レポート【2】金と就職についての対策

29,800円のパッケージ旅行からの帰り道に 「一定期間この国に住んでみたい」と考えた私は、帰国後から早速、二つの問題の解決に向けて情報を探り始めた。

一つは就職の問題、もう一つはお金の問題である。

※今回のnoteは中国レポートといいつつほとんど日本国内の内容になってしまった。

◆◆

当時、我が家の経済状態は芳しくなかった。

実は私が大学を受験する前に、父親が高い飲み屋でツケていたツケ

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遊民的中国レポート【1】29,800円のパックツアーと留学生との出会い

遊民的中国レポート【1】29,800円のパックツアーと留学生との出会い

29,800円の北京パックツアーと中国人留学生
生まれて初めて「海外」とやらに行ってみようと思ったのは22歳の時。
29,800円の中国・北京の2泊3日のツアー。当時の私にもなんとか払える額がそれだった。

学部時代の4年間は旅行に行くような金銭的余裕はなく、国内にしたって遠出をする機会は部活の「遠征」くらいであった。

やむを得ない事情により大学最後の春に部活を辞めることになった後、アルバイトを

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【人間考】「理解ある○○人」に救われないタイプの人間

【人間考】「理解ある○○人」に救われないタイプの人間

※○○には近しい家族や恋人、友人が入ります

辛い時、苦しい時に誰かに支えてほしい、という感覚は、多くの人が持ち合わせていると思う。危機に瀕した時に、自分を見捨てずにそばにいてくれる人がいれば、どれだけ心強いだろうか。不安な夜、誰かがそばにいてくれたら、どれほど救いになるだろうか…こんなことを、良い歳して考えてしまう人だって、少なくはないだろう。

同様に、自分自身も、自分にとって大事な誰かが苦し

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寒空のキリギリス

寒空のキリギリス

木枯らしの吹く空の下、赤や茶色の葉の中に、やけに綺麗な緑の葉を見つけたと思ったら、あなたはキリギリスね。

虫の息のキリギリスさん、いえ、からかっているのではないのよ。

貴方が死ぬまでの時間、私と少しお話しませんか。もうすぐ死んでしまう貴方の、残りの時間をくださいな。

私はね、人間という生き物なんです。
貴方たちよりも少し寿命が長い生き物です。

私はこうやって、春夏秋冬、この山道を散歩して、

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