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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2022年4月の記事一覧

日本人へ リーダー篇 (塩野 七生)

日本人へ リーダー篇 (塩野 七生)

 塩野七生さんの著作は、代表作の「ローマ人の物語」をはじめエッセイもいくつか読んでいます。

 本書は、「文藝春秋」巻頭随筆を採録して新書化したものとのことです。イタリア(ローマ)からの視点で、現代の日本の世情や各国の話題をとりあげた40章。塩野さん流の小気味よいコメントが満載です。

 たとえば、そのひとつ、「戦争の大儀について」と題する章での「日本の国際舞台での振る舞い」を語ったくだりです。

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ひとり旅 (吉村 昭)

ひとり旅 (吉村 昭)

 吉村昭氏の著作は、小説・エッセイ等取り混ぜて結構読んでいます。
 誠に淋しいことに吉村氏は2006年7月にお亡くなりになりましたが、本書は、氏の未発表の遺稿をまとめたエッセイ集です。

 吉村氏の歴史記録小説とでもいうべき数々の著作は、可能な限り現地・現物に当たり、関係者の生の声を聞くという徹底した取材活動が生み出したものです。
 収録されているエッセイの中に、こんなくだりがあります。

 こう

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実践するドラッカー【行動編】 (佐藤 等)

実践するドラッカー【行動編】 (佐藤 等)

 「思考編」に続いて読んでみました。
 こちらは「成果をあげるための具体的な方法」について記されています。

 もちろんドラッカーが語る示唆に富むアドバイスが列挙されているのですが、「行動」に焦点を当てている分、「思考編」に比べて解説が若干表層的なような印象を持ちました。
 とはいえ、引用されているドラッカー自身の言葉は、それぞれ、読者に対して改めて考え直すことを求めるものでした。

 その中から

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チェーン・スモーキング (沢木 耕太郎)

チェーン・スモーキング (沢木 耕太郎)

 沢木耕太郎氏のエッセイ集です。
 多彩な切り口の「今」を舞台にした15編の作品が収録されています。

 今といっても、本書が書かれたのは30年ほど前ですから、描かれている世情も「現在」とはかなり異なります。私と沢木氏も一回りの年齢差(私の方が年下)がありますから、完全に同時代を共有していたというわけではありません。とはいえ、描かれている風景や空気、その当時の感性等については、ごく自然に共感できる

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実践するドラッカー【思考編】 (佐藤 等)

実践するドラッカー【思考編】 (佐藤 等)

実践 知識労働者 ドラッカー氏のマネジメントの主体は「知識労働者」です。

 このドラッカー氏がいう「知識」とはどういうコンセプトなのか、本書からその点に触れられている箇所を1・2書き出してみます。いずれも氏の著作からの引用部分です。

 「知識」は「成果」をあげるために必要不可欠なものです。ドラッカー氏は「知識」を「成果」に結びつけるための具体的方法も示しています。

 知識労働者の行動の質は外

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ぼんやりの時間 (辰濃 和男)

ぼんやりの時間 (辰濃 和男)

 著者の辰濃和男氏は、朝日新聞の記者・論説委員を歴任した方で、1975年から88年にかけて「天声人語」の執筆もなさっていたとのこと。その辰濃氏の最近のエッセイです。

 テーマは「ぼんやり」「懶惰」「閑適」「無為」・・・。そういう時間の過ごし方の意味や意義を、何人かの「人々」、いくつかの「文字」を入口に語ります。

 たとえば、詩人の高木護氏を紹介している「放浪-マムシと眠る」の章から。

 私に

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100年前の世界一周 ある青年の撮った日本と世界 (ボリス・マルタン/ワルデマール・アベグ)

100年前の世界一周 ある青年の撮った日本と世界 (ボリス・マルタン/ワルデマール・アベグ)

 ちょっと前に、司馬遼太郎氏の「坂の上の雲」を読んだところですが、本書は、まさに1905年から06年の世界、日本でいえば日露戦争当時の世界の風景を映し出したものです。

 世界一周の旅をしたのは、ドイツ人ワルデマール・アベグ。
 船でヨーロッパを発ち、アメリカ東海岸に上陸。その後、アメリカ大陸を横断し、西海岸から太平洋を渡って、日本・朝鮮・中国・インドネシア・インド・スリランカなどを巡りました。

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道楽三昧―遊びつづけて八十年 (小沢 昭一/神崎 宣武)

道楽三昧―遊びつづけて八十年 (小沢 昭一/神崎 宣武)

 私が知っている小沢昭一さんは、俳優でありラジオのパーソナリティとしての姿です。小沢さんと永六輔さん・野坂昭如さんが一緒に活躍されていたことを薄っすらと記憶しています。

 本書は、民俗学者神崎宣武さんとの対談で、自らの趣味・道楽の歴史を数回にわたって語ったものの書き起こしです。
 テーマは、「虫とり」「べいごま・めんこ・ビー玉」「相撲・野球」「飲む・打つ・買う」「落語」「芝居」「大道芸」「映画」

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ソーシャルブレインズ入門―<社会脳>って何だろう (藤井 直敬)

ソーシャルブレインズ入門―<社会脳>って何だろう (藤井 直敬)

 「ソーシャルブレインズ」は「社会脳」と訳されるのですが、そう訳されたとしても何のことかよく分からないですね。

 藤井直敬氏による最もシンプルな定義はこうです。

 著者は、「ソーシャルブレインズ」の説明にあたって、「脳単独」「1対1の関係」「多数(社会)との関係性」といったフェーズに分けて論じています。
 脳の機能を解き明かそうとする従来の神経科学においては、ブロードマンの脳地図に代表されるよ

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進化するグーグル (林 信行)

進化するグーグル (林 信行)

 会社の共用文庫に寄贈されていたので読んでみました。
 発行は2009年1月ですから、この手の業界を扱ったものとしては、かなり前の内容ということになります。とはいえ、「グーグルという企業」のアウトラインをザクッと把握するには、コンパクトで手ごろな本だと思います。

 本書で紹介されている内容は、これといって特に目新しいものはありませんが、復習までにいくつか覚えを書き記しておきます。

 まずは、「

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坂の上の雲 (司馬 遼太郎)

坂の上の雲 (司馬 遼太郎)

日露戦争 2010年は、NHK大河ドラマの「龍馬伝」が大評判です。以前放映された「竜馬がゆく」を思い出しているのか、今またちょっとした司馬遼太郎氏のブームですね。
 私も以前から、司馬氏の作品はそこそこ読んでいたのですが明治期のものは「花神」ぐらいでした。

 ということで、今回は(今さらながらではありますが、)司馬氏の代表作のひとつでもある「坂の上の雲」を読んでみたというところです。
 私から、

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JAL崩壊 (日本航空・グループ2010)

JAL崩壊 (日本航空・グループ2010)

 書評の評価が非常に低いので、かえって興味を抱いて手にとってみました。
 日本航空の客室乗務員の独り語りです。

 「崩壊」の要因の大半は「労働組合」にあるとの論。
 機長らによる「管理者組合」の存在等、確かに常識をはるかに超えた「特殊論理」がまかり通っている実態はあるようです。

 とはいえ、組合問題が発生していなかった、もしくは、解決されたとして、日本航空が企業として存続・成長し続けたかという

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成功をつかむ24時間の使い方 (小宮山 悟)

成功をつかむ24時間の使い方 (小宮山 悟)

 早稲田大学からロッテオリオンズ(現マリーンズ)へ入団、大リーグのニューヨークメッツでもプレーした投手小宮山悟氏の著作です。

 24歳でプロ入り、44歳まで現役を続けた小宮山氏の野球に取り組む考え方や姿勢が、高校から大学、さらにはプロ生活における実体験を辿りながら素直な筆致で綴られていきます。
 野球に関する教訓にとどまらず、私たちの身近な場面におけるアドバイスにも普遍化できるような有益な指摘が

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いまは見えないものを見つけ出す 発想の視点力 (三谷 宏治)

いまは見えないものを見つけ出す 発想の視点力 (三谷 宏治)

比べる 三谷宏治氏の著作としては、以前「観想力 空気はなぜ透明か」という本を読んだことがありますが、今回のテーマは「発想力」です。

 ボストン・コンサルティンググループやアクセンチュアで戦略コンサルタントとして活動した経歴の持主である著者が、本書で「発想力」を高めるための方法として示したのは、「比べる」「ハカる」「空間で観る」という3つの視点です。

 まずは、「比べる」。
 三谷氏が薦める「比

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