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成功をつかむ24時間の使い方 (小宮山 悟)

 早稲田大学からロッテオリオンズ(現マリーンズ)へ入団、大リーグのニューヨークメッツでもプレーした投手小宮山悟氏の著作です。

 24歳でプロ入り、44歳まで現役を続けた小宮山氏の野球に取り組む考え方や姿勢が、高校から大学、さらにはプロ生活における実体験を辿りながら素直な筆致で綴られていきます。
 野球に関する教訓にとどまらず、私たちの身近な場面におけるアドバイスにも普遍化できるような有益な指摘が数多く見られました。その中から1・2、ご紹介したいと思います。

 まずは、第6章「どのデータを捨てて、何を残すのか」から。
 最近の野球の世界では、野村克也監督を例に挙げるまでもなく「過去のデータ」の活用が非常に活発になっています。そういう「データ活用」に関する小宮山氏のコメントの中で、なかなか面白いものがありました。

(p114より引用) 150キロのボールを投げるピッチャーと、130キロを投げるピッチャーでは、バッターの狙い球は違ってくる。だから、自分のデータだけを使うようにしていた。

 確かにそうですね。データ活用においては、「対象の特性を十分に考慮した事前のフィルタリングが重要だ」ということです。
 こんなことも言えます。データで直球が弱いとされているバッターでも、それはデータ収集時の相手が一流の剛速球投手ばかりだったからかもしれません。並みの投手の直球が通用するかはまったく別問題なのです。

 もうひとつ、第7章「『なぜ』を持たない人間は伸びない」での小宮山氏の主張。
 「なぜ」の重要性は、どんな世界でも、あらゆるシチュエーションにおいてよく言われることです。小宮山氏も「なぜ」に注目して、こう語っています。

(p150より引用) アドバイスされた本人が、疑問を持つかどうかが最大のポイント。「なぜ」と思わないと進歩はない。「なぜ」がない人は何をやっても伸びない。
 ボールの投げ方は体で覚えることも必要だけど、体をどう使えばいいのかをある程度頭で理解していなければスムーズに習得できない。

 面白いのは、小宮山氏の「なぜ」の探求の仕方であり、その答えの使い方です。
 小宮山氏が薦める「なぜ」には何種類かあります。ここでは、「アドバイスを受けたときの反応」としての「なぜ」。今まで問題だと思っていなかった点を指摘されて、「なぜ」と考える。そのとき生じた「なぜ」を追求するためには「ベース」となるものが必要だというのです。その「ベース」があれば、なぜの答えを見つけ出しやすくなりますし、答えを実践しやすくなるのです。

 なかなか気がつかないポイントですね。勉強になります。



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