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妹尾昌俊 『教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない』 : 子供たちのための〈近未来〉改変

書評:妹尾昌俊『教師崩壊 先生の数が足りない、質も危ない』(PHP新書)

あなたにお子さんがいるのなら、特に中学生以下のお子さんがあるのなら、この本に書かれていることを知らないのは、親として無責任かもしれない。
学校教育現場の現状を知るということは、「先生がたの問題」ではなく、そのまま、あなたのお子さんの問題であり、お子さんたちの「近未来の問題」だからである。

特に、学齢期に達していない、幼いお子さんをお持ちの親御さんに言っておきたい。
ここで語られる問題は、お子さんたちが学校に入ろうという段階になってから慌てても、もはや「手遅れ」だという事実である。

小中高校の教育現場は、すでに「疲弊の限界」に達しており、多くの問題を露呈させつつあるが、問題はこれに止まらず、このままでは、完全な「教育崩壊」にいたらざるを得ない。
そしてその前段として、現在、本書に描かれたような「教師崩壊」が進行中なのだ。

本書の帯には、

『 ●教師の4割は月に1冊も本を読まない
  ●毎年5000人が精神疾患で休職
  なぜ日本の教育はここまで劣化したのか』

という、いささかスキャンダラスな惹句が並んでいる。
しかし、これは誇張された話ではなく、日本の教育の現状をそのまま示すものでしかない。

本書は、こうした現実を、豊富な各種データに基づいて誠実かつ堅実に提示して、問題の本質を丁寧に説明することで告発し、子供たちの未来のためにも(そして教師たちのためにも)「変えていかなければならない」と訴えている、「警世の書」なのである。

だから、子を持つ親ならば、この「学校教育現場の惨状」を、正しく直視しなければならない。
なんとなく「先生たちは大変そうだね」では、まったく不十分なのだ。

そんなのんきな「他人事」であるかぎり、学校教育の崩壊を止めることなど、到底できない。
それを、先生がたや教育官僚たちに任せておくだけでは、まったく不十分であり、誰よりも「子供を学校に預ける親たち」が本気にならないかぎり、「学校教育の正常化」はなされないと知るべきである。

そのためにも、とにかく「現実を知ること」が必要なのだ。
そして、本書は、それに最適な、充実の良書である。

子供たちの「近未来」を本気で案ずることのできる親ならば、本書を手に取り、読んで「驚愕」し、「震撼」するべきである。
そうしないかぎり、あなたは「無責任な親」のままでしかあり得ないはずだ。

初出:2020年7月2日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)

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