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僕の言葉の森

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僕の言葉の森に植えさせて頂きたい記事をまとめています。 https://note.mu/nazewokangaeru/n/ne66199a9189f
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2019年11月の記事一覧

憧憬

誰だって願っている 世界は美しいんだって
きっとそうじゃない わかってはいるんだよ

本当に美しくないなら どんなに良かっただろう
見たくないものばかり なのに時折見える美しいもの

君と僕の違い 心が交わらないこと
その苦しさも 世界は美しさに変えようとする

わからないことばかりだ
全部僕だ 僕のことだ
言葉にしようと思った何かが見えた

照らせ 全部照らせ
僕を置いて 全部照らせ
それを眺め

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恋が終わるとき

恋が終わるとき

去ってゆこうとする彼女に、僕は何と言葉をかければよいのか、さっきから考えあぐねていた。

「私たち、初めから間違っていたんだわ」
昨夜、そう言って彼女は泣いた。
そんなことはない、と僕は答えられなかった。
ただ黙り込んだ。
寝室へ向かう彼女の小さな背中を抱きしめることもできなかった。
終わりに近づいている二人の関係を、修復できる方法はもうないのだろうか。
彼女の言うとおり、僕たちが積み重ねてきた過

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村上春樹エッセイ「おいしい牡蠣フライの食べ方」

村上春樹エッセイ「おいしい牡蠣フライの食べ方」

 村上春樹のエッセイの中で何が一番好きかと言われると、やはりこれになる。村上氏の様々な文章の中で一番好きだ。声に出して読みたい日本語みたいに、繰り返しその音韻を確かめておいしさを味わっている。

 書籍も複数の本で収録されているが、私の知っている範囲で一番古い登場は2001年出版のある哲学書の付録である。

 大庭健氏の『私という迷宮』という本の巻末に「牡蠣フライ理論」は載っている。
 私はその他

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世界はデザインでできている。

世界はデザインでできている。

おはようございます!
だいすーけです。
6日ぶりの更新となりましたが、よろしくお願いします。
今朝は、秋山具義さん著『世界はデザインでできている』について、簡潔なレビューと考えたことを述べていきたいと思います。

ではではさっそく、どうぞ。



レビュー、本の概要。『世界はデザインでできている』。
先週オーダーしたものが日曜日に届き、月曜日の午前中いっぱい集中して読んだ。
秋山具義さん、『マル

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語彙力は感性を養う

語彙力は感性を養う

私は6年前まで幼稚園教諭をしていた。
子どもたちが「先生、あのね…」と一生懸命に話をしてくれる時間が嬉しく、同時に子どもたちの成長を感じる瞬間でもあった。

ある日も"好きなご飯"の話になったことをきっかけに、報告会が繰り広げられた。
定番のハンバーグ・カレー・唐揚げをはじめ、様々なものを教えてくれていたのだが、いつもは大人しい女の子が、珍しく輪の中に入ってきた。

何かを言いたそうに、もじもじと

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印象と評価

印象と評価

私の中に湧き上がる 醜い感情と偽善の心 の戦い幼少期、自分は「特別な存在」だと思っていた。親も自分の子供はかわいいからかそのように私を扱ってきたし、根拠はないが揺るがない自信を持っていた。 上京したことやSNSを常用し始めたことをきっかけに、上には上には上には上には× n回 自分より優れている人がいることを知る。

顔、体型、就職先、服装、髪型、匂い、大学名 あらゆる指標で人は他人を推し

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おしらせ

こんばんは。
いつも読んで頂きありがとうございます。
今日はおしらせです。

詩集をつくりますこの度、詩集をつくることにしました。
本を出版するよーとかいう宣伝ではなくてですね、ただ僕が新しくマガジンをつくりますというおしらせです。

今回初めての試みとなるんですが
絵を元にして詩集をつくります。
その絵を提供してくれた方はこちら

「文学×アート」をモットーにしている抽象画家のkojiさんです。

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死と教育(666字)

死と教育(666字)

13歳にして僕は小学校の担任を全員亡くしている。
6人の先生のうち、老人だった3人は病死。1人は焼死。1人は台風の日に屋根を修理しようとして転落死した。
最後の1人が山岸先生だ。4年生のときの担任だったが、昨日遠い街で殺されて、
山岸沙織(26)
という文字列に変化してしまった。

「真野くん」
山岸先生がこの上なくクリアな発音で僕を呼び止める。
あれは6年生の夏。
「受験することにしたって?」

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入力が生活を彩り、「僕」をつくる

 折に触れて、丁寧な珈琲を飲みたくなる。苦味や酸味、深みなどの要素をつぶさに検討して魅力的な豆を選び、それを手動ミルで挽く。右の前腕にある筋肉が引き締まるのを感じながら、ミルから漂う香ばしさを楽しむ。茶褐色のペーパーフィルターに丁寧に粉を移して、ポットで沸かしたお湯で一度蒸らす。10秒ほどおいて広がる香りを楽しみ、フィルターの縁に粉が残らないように注ぐお湯を回す。そうして淹れる珈琲が日々の一部にな

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会いたいけど会えないひと

会いたいけど会えないひと

大学生のころにアルバイト先で出会ったひとがいる。

当時私は20歳の大学生で、そのひとは29歳の新婚だった。
「結婚したばかりなんだよね」といったそのひとは、
「人妻ってやつですね!」といったわたしに、
「新婚さんって言われることはあるけど、いきなり人妻って!」と爆笑してくれたことが最初の出会いだった。

残りの大学生活のなかで、アルバイトのあとにほぼ毎回といってもいいほどそのひとと居酒屋で飲んで

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ホットミルク

みんなが寝しずまった夜に、くるしくなり、くるしくなり、きみは落ち着くひと。

ミルクを飲み、煙を3度はいて、
あかるい空の下でさいごに詠むひと。

ねむるまえに読むひと。

iconをクリックして、
わたしはあなたを辿って、
あなたがわたしをまだ見れることを知って、

あなたの静かな4行を確認。

句点も読点もすくない、行間はない、
あなたの生をよみまして、
わたしは、やっとねむってもいいかな

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言葉は武器にも盾にもならない

言葉は武器にも盾にもならない

自分の書いた文章が初めて認められた時、
初めて女の子とデートに行った時のような高揚感で
夜眠れなかったのを覚えている。

夢中になってたくさん書いて
月末に口座へ金が振り込まれた時
何かとんでもない間違いをしてしまったような気がした。
小さいころ父が大切にしていた服を絵の具で汚してしまった時のような。

高揚感や微かな優越感は消えて
惰性で書き続ける日々が続いた。
月末には書いた分だけの金が入って

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バジルトマトメンチ【#夜更けのおつまみ】

バジルトマトメンチ【#夜更けのおつまみ】

「ねぇ、マスターお腹減っちゃった」

アヤカはカウンターに倒れこみながら言った。
ここは住んでいるマンションの1階に半年ほど前に出来たBARだ。カウンターとテーブルをあわせても20席もない小さな店で、マスターが一人で切り盛りしている。夜遅くまでやっていること。料理とお酒が美味しいこと。そして何よりも疲れて家まで帰ってきたら、暖かい料理でお出迎えしてくれることが、独り身には大変ありがたく、嬉しい存在

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