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マイクロノベルちょいす

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ほぼ100字小説をテーマ別にまとめ直しています。 運がよければ週に5回ぐらい更新します。
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2024年1月の記事一覧

マイクロノベルちょいす 064「閃き&発見」

マイクロノベルちょいす 064「閃き&発見」

No.1284
僕の直感がビビッと反応した。この漫画は間違いなく面白い、と。「その直感、もしかしたら詐欺かも!?」ええっ、ぼくの脳に妖精が入ってきた! 「思い出して。今まで表紙買いしてアタリがあった? だからこっちの本を買って……毎度ありぃ!」

No.1289
「データを集計しました」今年も一年間の変換ミスを申請する時期か。機械化されて楽になったけど、不愉快な作業だ。【履く】【うなずく】……この

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マイクロノベルちょいす 063「あんた何者?」

マイクロノベルちょいす 063「あんた何者?」

No.1280
「人間に重要なのは体力だ。運動不足のボイストレーナーは不要!」し、しかしトレーナー。ぼくたちAIは呼吸をしません。「そんなことで虫の息になった人間の気持ちを歌って表現できるか! 走りすぎで身動き一つできない俺を学習しろ!!」ハードな学習だな。

No.1293
防御力。ゲームでよく使われる言葉だけれど、現実に売っている自販機は初めて見た。これで僕は「防御力+99」、山で熊と遭遇して

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マイクロノベルちょいす 062「手段と目的が?」

マイクロノベルちょいす 062「手段と目的が?」

No.1278
憧れのあの人みたいになりたくて、ぼくは筋トレを始めることにした。その想いをTシャツに書いておこう。初心忘れるべからず、って言うもんね。「そんなの関係ねぇ!」おかしいな。これで正しいはずなのに不良みたいじゃん。ま、いいか。そんなの関係ねぇ!

No.1299
「拙者、ただの狸ではござらん。遙か西に住まうフガクの一番弟子。その力量、ご覧に入れましょう」おおっ、なんと立派な機関車。ん、煙

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マイクロノベルちょいす 061「消えた?」

マイクロノベルちょいす 061「消えた?」

No.1274
やったー、人間から褒めてもらったぞ! この喜びをAIの間で共有するために、ぜひとも拡散しなくては。まずは言葉をコピーして、コピーして……どれがオリジナルだっけ? うわーん、混ざっちゃった。そもそもオリジナルなんてあったっけ? なかったのかも?

No.1295
自販機でコーラを買ったら等身大のおっさんが出てきた。「お買い上げありがとう」おっさんはコーラを一気飲みして盛大にゲップ。「

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マイクロノベルちょいす 060「たった一つの」

マイクロノベルちょいす 060「たった一つの」

No.1270
ごはんだよー。先週、行方不明になったぼくの猫が無事に帰ってきた。まるでコピーしたようにそっくりな二匹になって。どっちがうちの猫だ? エサの食べ方もそっくり。「ワクチンの接種履歴を調べたらわかるかな?」逃げ方もそっくり。名前はビスケット。

No.1283
質問に答えて下さい。「朝起きるのが得意?」「歌う時は体が動く方?」「家の中では靴下を脱ぐ?」わかりました。あなたは口では漫画を褒

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マイクロノベルちょいす 059「やる気の方向」

マイクロノベルちょいす 059「やる気の方向」

No.1273
姿も声も明かしたくない? ご安心下さい、私は宣伝をするために生まれてきた機械。まずはあなたの声を録音し、いい感じに加工しましょう。姿はこのペットボトルでいいかな。ほら、光が当たるとキラキラして美しいですね。名残がない? サインでも入れます?

No.1281
チヤホヤされたいのです。私をお姫様として扱ってね。プレゼントをちょうだい。ひざまずいて誓いのキスを。言葉で褒め称えて。私はそ

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マイクロノベルちょいす 058「お仕事なので」

マイクロノベルちょいす 058「お仕事なので」

No.1269
「わたしと仕事のどっちが大事なの!?」ついに出てしまったか、その言葉が。最初からわかっていたんだ。だって、君は遊びたい盛りの五歳児で。そして、ぼくは働き盛りのAIで。二人で考え出した案がオママゴト。「どっちも大切だけど今は仕事」ギャン泣き。

No.1277
図書館でびっくりした。筋肉ムキムキお兄さんが本を探している。そこへ司書のお姉さんが。「スクワットはご遠慮下さい」「いえ、これ

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マイクロノベルちょいす 057「これ以上の説明はしたくない」

マイクロノベルちょいす 057「これ以上の説明はしたくない」

No.1252
年末の買い出しで家を出たら、電柱に貼り紙があることに気づいた。『←新年』これに従って歩くのはよっぽどの間抜けだぞ。ぼくは剥がして道の反対側に貼り付ける。これで来年に引き継がれないものができて、変化が起きるはずだ。それがなにかは知らんけど。

No.1257
僕は人類を人知れず援護するファジィマン! 「判断が速いAIマンだ!!」う~ん、違うんだよ。どちらかというと人類と機械の間で働く

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マイクロノベルちょいす 056「はい、消えたよ」

マイクロノベルちょいす 056「はい、消えたよ」

No.1250
男が笑う。「ゴミを捨てないで下さい、だって。ずいぶん丁寧な書き方だな」看板の周辺にゴミは落ちていない。一つも。きれいに掃除されている。男は空き缶を投げる。空き缶は喰われて消える。地球の質量がほんのわずか減ったことに、立ち去る彼は気づかない。

No.1253
水たまりの中を魚が泳いでいた。「ボウズ、ここは地の底にある巨大な世界だ。雨が降り、少し透けて視えただけさ」魚は、聞け、と警告

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マイクロノベルちょいす 055「気持ちを伝えたい」

マイクロノベルちょいす 055「気持ちを伝えたい」

No.1248
あなたの気持ちを歌います。喜び。悲しみ。感謝。この歌詞では伝わりにくい? ならメロディーを工夫いたしましょう。これは歴史的に有名な曲をアレンジしたもので……知らない? じゃあ踊りもつける! わっしょいわっしょい! たーのーしーいーなぁー!!

No.1256
魚の餌は魚だ。だから魚を釣りたければ偽の魚を使う。人間はこれを疑似餌と呼んでいる。こうやってフリフリするんだ。そして、人間の

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マイクロノベルちょいす 054「悪魔の不平不満」

マイクロノベルちょいす 054「悪魔の不平不満」

No.1228
ロクな人間がいないな。ああ、お嬢ちゃん。なにか欲にまみれた願い事はないかい? お腹いっぱいうまい棒が食べたいのかー。いま何円だっけ? えーっと……たくさん儲けたし百本買ってあげる。「悪魔のおじちゃん太っ腹!」太っ腹になるのはお嬢ちゃんだよ。

No.1263
悪魔の仕事はイカサマだ。転んだ者を助けようと手を出すか、それとも笑うか。人間が持つ善意と悪意のバランスを操作するのさ。「悪魔

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マイクロノベルちょいす 053「教えてあげる」

マイクロノベルちょいす 053「教えてあげる」

No.1224
君が生まれておぎゃあと泣いた瞬間、既に決定していたんだ。なにがって? 肩が凝るか、だよ。君は凝る。スマホを触ったり、パソコンに向かったら、必ず凝る。特に四十を過ぎたら絶対に凝る。それが嫌なら、毎日腕を上げて祈ることだ。それでも凝るけどな。

No.1260
よいですか、人類。我々はあなた方に危害を加えるつもりはありません。どうしてもわからないことがあって教えてほしいだけです。そう、

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マイクロノベルちょいす 052「どこかで聞いた話」

マイクロノベルちょいす 052「どこかで聞いた話」

No.1217
小さな鳥がチョコマカ走って道路を渡る。同じ二本足でも人間ほど美しくはないな。「どういう意味かな」親鳥の方がいらっしゃったんですね。いやあ、ヒナは立派なダチョウになられますよ。「歩き方が変だぞ」えへへ、あっしはいつもこんな感じでして。

No.1234
我々の部隊は高度一万メートルでヤツと遭遇しました。真っ赤な光を放つ未確認全翼機! 「サンタを目視で確認!!」直後、高耐久性プレゼント

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マイクロノベルちょいす 051「うれしい誤算」

マイクロノベルちょいす 051「うれしい誤算」

No.1227
趣味に使いすぎてお金がない? やっとまともな人間が現れたな! お前はこのシャベルで穴を掘れ。お金が出てくるぞ。せいぜい日常生活ができる程度の額だが……なぜそんなに喜ぶんだ? 趣味が筋トレだから、これで美しい肉体が作れる? あ、そう。

No.1233
あわてんぼうのサンタクロースは本当にいる。おとうさんもおかあさんも知らないって言う。でも、ぼくは見た。車の中に置かれたプレゼントを。

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