- 運営しているクリエイター
記事一覧
残業文化が変わらなければ少子化は止まらない
2022年の出生数が初めて80万人を割ったというニュースに関連し、「少子化対策」の議論が盛り上がっていますが、経済的支援や保育園等の充実はもちろん重要な一方、男性中心・長時間労働の仕事文化が変わらなければ20〜30代の女性が子どもを持とうと思うようにはならないと思うので、簡単に。まだ読み切れていませんが、次の本がデータも充実していてとても勉強になります。
少子化とワークライフバランスの問題は、私
「時給1万円で働ける人が家事をするのは非効率」という論理の乱暴さ②
時間が開いてしまいましたが、前々回の記事の続きです。
引き続き、Nancy Fraserの著書『中断された正義/Justice Interruptus: Critical reflections on the 'postsocialist' condition』(1997)の一章 'After the family wage: A post-industrial thought experime
「時給1万円で働ける人が家事をするのは非効率」という論理の乱暴さ①
「家事労働に賃金を/Wages for Housework」というフェミニズム運動が盛り上がった時期がありました。家庭の外で有給で働き、新たな「価値」を生み出す仕事を「生産/production」「生産労働/productive labour」と呼ぶのに対し、出産・育児を含め主に家庭で行われる家事は「再生産/reproduction」「再生産労働/reproductive labour」と呼ばれま
もっとみる「同性婚」議論から考える結婚・家族制度の限界
首相秘書官がジェンダー・マイノリティに関する差別発言をしたというニュースを聞いて、日本の政治界はやはりまだそんなレベルなのかと気分が暗くなりました。その世代には、心の中で差別意識を持っている人がまだ多いかもしれないということは想像できますが、首相秘書官という立場にある人が、記者の前でそういった発言をしても問題ないと一瞬でも思えたという環境の閉塞さが何よりも信じ難いです。きっと、彼個人が周りと掛け離
もっとみる私に格差を語る資格があるか
ジェンダー学を学んでいると、ジェンダーだけでなく、国・地域、人種、階級、経済状況など、ありとあらゆる権力構造の結果として虐げられている人々のストーリーを垣間見ることになります。毎週毎週、授業の準備として課題文献を読むだけで、それまで思いを馳せたことすらなかった不正義を目の前に突きつけられます。その度に、この社会、格差、差別について何か言う資格があるのかと、苦しくならずにはいられません。こんなにも不
もっとみる組織の中のジェンダー不平等——リベラル思想、構造主義、ポスト構造主義
職場、バイト先、教育機関、自治会…組織と呼べるような人の集団は私たちの生活にとってとても身近で、だからこそジェンダーに関する問題意識を得やすい場です。なぜ保育園の先生は女性ばかりで大学教授は男性ばかりなのか、なぜ秘書は女性が多く取締役は男性が多いのか、なぜ「パート」と言うと中年女性をイメージし、缶コーヒーのCMにはブルーカラーの男性が登場するのか…。私がジェンダー学に関心を持ったきっかけも、自分の
もっとみるスカートにパンプスなのを恨んで、そんな自分と社会が心底嫌になった時——生身の経験と学問
パリ、夏。女二人旅。日本から休みをとって来てくれた友人と1週間盛りだくさんの旅行をして、素敵な最後のディナーをした夜のこと。シャンパンフラッシュが見たいという彼女とエッフェル塔のふもとまで行って、日付が変わってから帰って来た。そんなに遅くなったのは私にとっては想定外だった。
最寄駅からホテルまでの15分の距離で、膨らんでいた私の気持ちは一気に萎む。怖かった。すごく治安が悪いエリアではないし、金曜