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黄昏の黙示録

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2022年9月より、月刊連載として小説を投稿していきます。 こちらの方にマガジンとして纏めていこうと思います。 何卒よろしくです😂
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#詩

第10章 From The Old World

第10章 From The Old World

Vol.1
 おっと。僕はあまりに読書に集中しており、新幹線の時間はもうわずかというところまでになっていた。僕は、慌てて本を閉じ、会計を済ませてカフェを後に新幹線のホームへと急いだ。駅のホームはそこそこ混んでおり、人を避けながら改札を抜けた。駅のホームへ階段を駆け上がると息が白くなっていた。鼻がツーンとするような寒さが身体をおそう。ふと空を見上げると雪がちらついていた。どおりで寒いわけだ。骨の芯ま

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第6章 アルテミスの器−2

第6章 アルテミスの器−2

時がいくつか経っただろうか。数えることよりも次の言葉を発しなければならない。そう感じていた。嘘であってほしい事実を前にした時、僕らは本質よりも幾分か違うことに頭を使い、夢であることを認識しようとしてしまうのかもしれない。目の前の男が言っていることは空耳で本当は何にもありませんでした。と。しかし、現実は非常にも押し寄せてくるのだった。

「未来はね、非常に聖杯を受け入れたがらない子だったよ。まあ無理

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第6章 アルテミスの器−1

第6章 アルテミスの器−1

Vol.1
バシャバシャ。

 水溜りというには大きすぎる水面を雨を仰ぎながら僕と黒奈は歩いていく。激しい雨のせいで歩いてきた後の足跡がすぐに消えていく。顔にあたる雨粒が痛い。そう思いなが歩いていると、いつの間にか道が川になっていた。ザーザーと鳴り止まない雨が降る中、僕は少し不安になっていた。このまま雨がしゃんと止んでくれるだろうか。このまま夜まで雨になってしまったらどうしようか。

「不安。大丈

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第5章 Utopia−1

第5章 Utopia−1

「ーのぞみ88号、間もなく発車いたします。ドア付近のお客様ご注意ください。次の停車駅はー。」

 年末ということもあり、新幹線を待つ駅のホームはとても混雑していた。キヨスクでコーヒーと卵サンドを買って指定席に座る。自由席の方を軽く見たが、立っている人もおり乗車率の高さに驚いた。まあ、これを見越して指定席を取ったのだが。地元に帰る時、普段は飛行機を使用するのだが、値段が普段の2倍近くする。そのため年

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第3章 ライ麦畑で僕を追う−2

第3章 ライ麦畑で僕を追う−2

 Vol2
 人の決意とはどんな石よりも脆いのかもしれない。僕は今それを確信しようとしている。水卜先輩との送別会が終了後、水卜先輩と二人で僕の人生について語ったあの夜。熱い想いに突き動かされていた自分はもういない。明日から頑張ろう。その言葉は永遠に僕の頭で反芻され、あっというまに1週間が立っていた。そろそろ年末も見えてくる時期だ。僕は、日々の業務見終われあの時の感情を開けることはなく、結局埃を積も

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第3章 ライ麦畑で僕を追う-1

第3章 ライ麦畑で僕を追う-1

Vol.1

 水卜先輩が会社を辞めてしまう。そんなことを考えながら日々の業務に追われ、1週間、2週間と時は進んでいき、とうとう水卜先輩がいなくなる最後の日になってしまった。先輩は変わらず、いつも通りの笑顔を咲かせながら業務をこなしていた。

「ねえ、話聞いてるの?ちゃんとやってもらわないとこまるのよ。ここ最近ミスが多すぎ、やる気あんの。」

「すみません。すぐ直しますんで。」

K先輩に怒られた

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第2章 ぐらつく2つの道-2

第2章 ぐらつく2つの道-2

それから、その男。いや、先輩とは定期的にサウナに通うようになり、たまたま一緒になった剣崎とも仲良くなって一緒に楽しむようになった。そして何やかんやあり、今に至るのだった。思い出に耽っていると横からチョップが飛んできた。

「セレン、ボーッとしない。早くいくぞ。どうせ彼女のことでも考えてたんだろ。」

「違いますよ、先輩のこと考えてました。」

「え。先輩ちょっと男の子から好意を向けられるのは初めて

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第2章 ぐらつく2つの道-1

第2章 ぐらつく2つの道-1

Vol.1
 「おはようございます。」
ミーティング会場で有るキャンパス内のカフェに着くと、もう既に3人がいた。3人はそれぞれスマホをいじりながら雑談をしていた。
「遅いぞ、セレン。また彼女とイチャイチャしてたんだろう。」
軽い冗談を真っ先に飛ばしてきたので白弓 勝。僕に目黒のお店を紹介してくれた先輩である。この毎度毎度の絡みが昔は苦手だったが最近では慣れてしまった。慣れとは恐ろしいものである。そ

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第一章 ヨハネの夢-1

第一章 ヨハネの夢-1

 
「言葉で世界を顛覆することができるだろうかー。」
 
群衆が僕の横を通り過ぎていく。子供連れの家族や白髪の老人、自転車に乗って駆け出す学生。その一人一人に物語があり、今を生きている。そして、他人のサイドストーリーとして交わっていく。僕は想う。そもそも人間は何のために生きているのだろうか?この高々80年程度で壊れてしまう器に入れられて。不自由を感じながら。
 
「何ぼさっとしているの?早くしない

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