- 運営しているクリエイター
#詩
第10章 From The Old World
Vol.1
おっと。僕はあまりに読書に集中しており、新幹線の時間はもうわずかというところまでになっていた。僕は、慌てて本を閉じ、会計を済ませてカフェを後に新幹線のホームへと急いだ。駅のホームはそこそこ混んでおり、人を避けながら改札を抜けた。駅のホームへ階段を駆け上がると息が白くなっていた。鼻がツーンとするような寒さが身体をおそう。ふと空を見上げると雪がちらついていた。どおりで寒いわけだ。骨の芯ま
第6章 アルテミスの器−2
時がいくつか経っただろうか。数えることよりも次の言葉を発しなければならない。そう感じていた。嘘であってほしい事実を前にした時、僕らは本質よりも幾分か違うことに頭を使い、夢であることを認識しようとしてしまうのかもしれない。目の前の男が言っていることは空耳で本当は何にもありませんでした。と。しかし、現実は非常にも押し寄せてくるのだった。
「未来はね、非常に聖杯を受け入れたがらない子だったよ。まあ無理
第3章 ライ麦畑で僕を追う-1
Vol.1
水卜先輩が会社を辞めてしまう。そんなことを考えながら日々の業務に追われ、1週間、2週間と時は進んでいき、とうとう水卜先輩がいなくなる最後の日になってしまった。先輩は変わらず、いつも通りの笑顔を咲かせながら業務をこなしていた。
「ねえ、話聞いてるの?ちゃんとやってもらわないとこまるのよ。ここ最近ミスが多すぎ、やる気あんの。」
「すみません。すぐ直しますんで。」
K先輩に怒られた
第2章 ぐらつく2つの道-2
それから、その男。いや、先輩とは定期的にサウナに通うようになり、たまたま一緒になった剣崎とも仲良くなって一緒に楽しむようになった。そして何やかんやあり、今に至るのだった。思い出に耽っていると横からチョップが飛んできた。
「セレン、ボーッとしない。早くいくぞ。どうせ彼女のことでも考えてたんだろ。」
「違いますよ、先輩のこと考えてました。」
「え。先輩ちょっと男の子から好意を向けられるのは初めて
第一章 ヨハネの夢-1
「言葉で世界を顛覆することができるだろうかー。」
群衆が僕の横を通り過ぎていく。子供連れの家族や白髪の老人、自転車に乗って駆け出す学生。その一人一人に物語があり、今を生きている。そして、他人のサイドストーリーとして交わっていく。僕は想う。そもそも人間は何のために生きているのだろうか?この高々80年程度で壊れてしまう器に入れられて。不自由を感じながら。
「何ぼさっとしているの?早くしない