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ひとつなるもの すべてなるもの

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ひみの連載ストーリー
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#過去世

第233話 空はつながっている

第233話 空はつながっている

 ミツコという名前が判明したその翌々日。ぼんやりネットを観ている最中に、とある日本刀にまつわるネタだと分かるフェイクニュースを発見する。けれどもその緻密さになんとなくあきらにLINEで知らせると、次の瞬間ミスに気づいた。

「ごめん。けーことあきら間違えて送信した。」

「もう何やってんの笑笑
ところで明日靖國行こうと思ってるけどどうだい?」

「そう来たか靖国。オッケー行きます。多分タイムリー。

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第231話 巣離れの支度

第231話 巣離れの支度

 レッカーされた車の修理はまだ当面かかると、ディーラーからのそんな電話連絡を受けた。それに伴い初めてのあきらのバス通学が唐突に始まった。
 クラッチ(杖)があれば以前よりは長距離を歩けるようになっていたけど、荷物があると無いとでは身体的な負担が大幅に違うらしく、家と最寄りのバス停の間だけは私が背中にリュックを背負った。
 けれども私もあきらも二人共、こんなことを思っていた。

「いつか親子で離れて

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第225話 裏切りの果て

第225話 裏切りの果て

「もし てぃろ いっしょ。」

 左手の甲にはそんな文字が刻まれる。
私がオリオンの闇へと堕ちた時、光に残ったてぃろの後悔。「もしも自分も一緒に行ければ……。」

 だけどね。

 あなたが『光』にいてくれたから、私はその光を目指してあなたへと戻ってくることができたんだ。イザナミと一緒にイザナギまで黄泉の奥へと行ってしまったら、私は戻り道を見失ってた。踏みとどまる決断って、ねぇ、それってすごいこと

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第215話 いつつとななつ

第215話 いつつとななつ

 プレアデスの私の心にわずかな光が差し込むと、反射光で目を細めた暗黒城の主は厄介そうに舌打ちをした。

「お前を信用してる訳じゃないからな。」

 孤独に飲まれた小さな男の子からは、私に対する不信感しか漂ってこない。暴れ出したい感情を本当は多く抱えているのに、それらを見せまいと腕組みをしている。
 いくつかと尋ねると、「七歳。」と返ってきた。ガスコンロと流しをすぐ背中に、長方形のダイニングテーブル

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第214話 倦怠のうちに死を夢む

第214話 倦怠のうちに死を夢む

(けだいのうちにしをゆめむ)

 プレアデスの崩壊から幾星霜ののちだろう。
スサナル先生の魂は、地球において一国の戦国武将として乱世を生きていた時期があった。

「騙された。民を守れなかった……。」

 そしてそれは私の現し身。

「騙された。愛する星の人たちから故郷を奪ってしまった……。」

 そしてそれは彼の闇。

 彼が何故、負け戦となるかもしれないそのカルマを“敢えて”生きようとしたのか。

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第212話 アカシックから消せない傷跡

第212話 アカシックから消せない傷跡

 彼の魂とバトルをしている。
全身全霊、空中戦であり肉弾戦。この広い宇宙において、完全に完璧な互角の相手とは彼の魂を以って他にはいない。(※)
 故に夢中で戦っている。その口元に笑みを湛えて、やるもやられるも味わっている。なんて悔しい、なんて楽しい。

 ふと見ると、“私たち”の他にもそれぞれの双子がお互いを相手に戦いを繰り広げているのが多数見受けられる。彼らもまた目の前の対の相手から決して目を逸

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番外編 あきらとけーこ

番外編 あきらとけーこ

 それは、あきらがまだ小学生だった頃の話。

 小児病棟でのスマホや携帯の扱いには、細かいルールが定められていた。Wi-Fiは無く、それでも面会中の私のスマホを使ってのオンラインゲームや動画視聴は時間によって可能だったり、家にいる時、キッズ携帯から私宛てのメールが届くこともあった。
 ベッド上での生活を続けてきたあきらが、車椅子で病棟の外へと移動できるようになったのは、入院してから半年後。ようやく

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第201話 そらのいろ

第201話 そらのいろ

 羽田空港神社から、meetooという船の女神に男性神をお迎えした。
 太陽が一番長く伸びる夏至の中、やって来てくれた空の船の男神もまた太陽のような人だった。

……

 あれからも、私とけーこは週にニ、三か所という驚異的なペースで神社仏閣などに出かけ、様々な事を吸収していった。

 昔は自殺の名所だったという川を見下ろす弁財天からは、生者にとっての目線では決して得られない視点をいただく。
「せめ

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第199話 想い合う。支え合う。

第199話 想い合う。支え合う。

 その宇宙子さんとのセッション終盤、そろそろエネルギーを閉じようかと意識をこちらに戻す準備を始めた時に、家の電話が鳴り響いた。

 あっ、なんか電話来ちゃった。どうしよう……。

 ところが一瞬だけ狼狽えるも、お知らせのように2コールだけ鳴ると音はすぐに切れてしまった。そしてその瞬間に気がついた。

 そうか、この人だったのか……。

……

 いつからか、家に一人か、あるいはリビングに一人の時だ

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第198話 性を奪還せよ

第198話 性を奪還せよ

 次の宇宙子さんとのセッションでは、再び表面までたくさん浮上してきた義行と、一度はゆっくり蓋をした、その母であった過去世を視ていくことになった。

 初めて親子と分かった時には幼児だった義行は、先日少しだけ成長した姿で現れた。それが今日のセッションで視えた“今生の別れのシーン”では、六、七歳の年齢は殆どそのままに、カーキの上下に身を包んだ坊主頭の姿となっていた。
 太平洋戦争は、その終盤の局面へと

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第188話 恩人

第188話 恩人

 ミトが死んだ。肉体を離れて霊魂の世界に戻っていく。
 すると、そのことを察知した宇宙子さんがほんの一瞬だけミトの意識を自分の体内に入れ、それから目の前で気を失った。慌てた私は駆け寄って、宇宙子さんのことを抱きかかえる。

 戻って、意識!宇宙子さん戻ってきて!

 腕の中の宇宙子さんから、女性特有の柔らかい匂いがした……。

……

 目が覚めてから、何もかもリアルな酷い夢を見たと思った。
 確

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第187話 大蛇の臍の緒

第187話 大蛇の臍の緒

(オロチノヘソノオ)

 新たな龍が私の元へと来てくれると、さらに一段、自分の高次エネルギーが強くなった。この三次元の肉体を依代として、四次元の闇を目がけた光のスパイラルが広がる。そうしてただただ真っ黒いだけの擁壁のような平坦なビジョンを、虫眼鏡で集めた太陽光のように貫通していく。

 ヤマタ先生という魂とは、私が過去世で産んだ子であると同時に“八岐大蛇”のエネルギー。ある意味それは、龍神というも

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第183話 産みの苦しみの果ての愛

第183話 産みの苦しみの果ての愛

 その夜は衝動的に、お風呂場にレムリアンシードクリスタルを持ち込んでいた。湯船に入ると少しの間、ここに来るまでに吸収されたクリスタル自体の不浄を溶かし出すように、手の中に入れてコロコロと遊ぶ。根拠はないけどどういう訳か、この水晶から発せられるエネルギーとはスサナル先生そのものだという気がしてならず、愛おしさが増していく。
 それからやがておへその真下に置きたくなって、下腹部の皮膚の上に優しく載せて

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第178話 愛と憎しみとツインレイ

第178話 愛と憎しみとツインレイ

 それから間もなく、けーこは私のことを“ちゃんづけ”で呼び始めた。どういう訳だか彼女にとっての『愛すべきコンテンツ』と化してしまった私はしばらくの間、シリウスのあれやこれやを話して聞かせた。

 自分たちが住んでいた場所は本当に田舎だということ。小川が流れていること。虹も出ること。夜空もあること。編み物の文化があったということ。リトは茶色いチョッキを羽織っていること(ベストと呼ぶより、左右の身頃を

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