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第215話 いつつとななつ



 プレアデスの私の心にわずかな光が差し込むと、反射光で目を細めた暗黒城の主は厄介そうに舌打ちをした。

「お前を信用してる訳じゃないからな。」

 孤独に飲まれた小さな男の子からは、私に対する不信感しか漂ってこない。暴れ出したい感情を本当は多く抱えているのに、それらを見せまいと腕組みをしている。
 いくつかと尋ねると、「七歳。」と返ってきた。ガスコンロと流しをすぐ背中に、長方形のダイニングテーブルに座っている。玉のれんのようなものとレトロなテーブルクロスに時代を感じることから推測すると、ここは彼の実家なのだろうか。

 これが彼の幼少期の心象風景だったとして、けれどもそれを彼から「視せてもらえた」と気を抜くと、肉体の左手が右手に掴まれ引っ掻かれる。爪を立てられ力を思い切り込められると、手首から先が軽く鬱血して爪先の当たった皮膚には斑(まだら)が残った。

 支配欲に駆られた元凶を根気強く包んでいく。そうして糸を辿っていくと、彼の魂は家庭というものから未だに『支配』されていた。

 いつだったか、この子の感情は「いつも僕ばっかり怒られる。」と言っていたことがあった。
 本来なら愛を注いでくれるはずの両親は、彼への関心を示す代わりに虐待したり罵ったりと息子を縛るばかりだった。そうすることによって彼ら自身の精神を保っていたと思われるが、その負の連鎖は次代への足枷となって受け継がれた。
 一刻も早く大人になって、支配する側に回ることで自分の傷を解消しようとしていた彼はずっと、それから時を経た“現在”でも『不遇な子供時代の中』に生き続けていた。

「どこに行ったの?なんでいないの?」

 やがて出てきた彼の言葉は誰のことを指しているのだろうか。友人たちの家庭のような優しいお母さんのことか、それとももしかしたら“この私”に向けて「どこに行ったの?」と探しているのだろうか。

……

 プレアデス、オリオンからそして地球へと。
体力的にも消耗戦となる浄化が続く中、昨日から再びけーこと離れたいという欲求が出てきた。普段であれば何も気にならない些細なことで腹が立つと、『烈火』が沸々と暴れ出す。
 そしてその日は朝から、エゴセルフが「けーこを気に入らない理由」を次々と挙げてそのたびに怒りが湧いてきた。

 ああ、もしかして。じゃあたぶんここを探れば……。

 このころになると、自分の感情の発信源をだいぶ素早く見つけることができるようになってきていた。少しの間こそ、エゴに飲まれて自分の軸を見失ってしまったけど、烈火が見せてくれた怒りを手がかりにヤマを張って呼びかけてみる。

「リト、どうしたの。怒っているの?私が一緒にいるよ。」

 ぐわっと一気に感情が爆発すると、また別のエゴセルフが発した「ビンゴ!」と言う声を顕在意識が聞くともなしに聞く。
 彼、スサナル先生の子供時代の「どこに行ったの」が出てきたことで、今度は私の中に残る、ミトに対する五歳のリトの「どこに行ったの」が現れる。

「お母さん、どこに行ったの?ひどいよ。僕はずっとひとりぼっちなのに。」

『置いていかれた怒り』とは、この私の中にこそ強く存在していた。

「そうかリト。あなたこそ孤独だったものね。あなたこそ、いなくなったミトに怒っていたよね。置いていかれて悲しかったよね。」

 リトの怒りが噴火している。

「そうだねリト。辛かったね。
でももしかしたら、ミトこそ辛かったかもしれないよ。だってミトはあなたのお母さんだもの。リトから離れなければいけないなんて、きっととても辛かったよ。」

 ちょうど洗濯物を干そうとしていたため、その時の私は寝室にいた。視界に映り込んだナイトテーブルの引き出しの中には、ミトであるけーこから貰った手紙がしまわれている。

「リトおいで。一緒にお手紙読もう。」

 そうして二人で手紙を読むと、リトも私もわんわん泣き出し止まらなくなる。

『リトくん。あいしてる。だいすきだよ。ママ。』

 けれども相変わらず、文章の最後に添えられたママという響きには違う意味で反応する。未だにそこには慣れていなくて、「えへへー、お母さんがママって言ってる。へんなのー。」と笑っている。

「ね。ミトはちゃーんとリトくんのこと愛してるでしょ?
じゃあさ、ミトにお手紙のお返事書こうよ。」

 その提案に、リトがこくこくと頷いている。愛おしく思いながら膝の上に乗せると、右手がくるくると準備する。

「リト、字書けるの?」

 あたりまえじゃんとでも言うような得意げな返事が、「うん!」と元気いっぱいかえってくる。

「ふふっ。すごいねリト、やるね。」

 何を書くかほんの少し考えた末、くねくねと空中に指文字で、私にはわからないシリウスの言語を書いていく。
 本人から頼まれない限り“介入”というものを嫌う私は『無』に徹し、リトであっても何を書いたのか、ミトにどんなことを伝えたいのか、それを拾って覗き見するということもない。

 それから彼が選んだのは水色の便箋と、赤いハートのシール。
「まるでラブレターね。」と思いながら手紙に鳥の羽を生やし、二人で一直線に、ミトの意識のど真ん中へと飛ばした。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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やばいー。やっと本編書けたけど日付け変わるー。
けーこにガキは早く寝ろって怒られるー!!笑

ええと、ここ最近の連載から来ていただいた方にとっては、今日の話はほとんど意味がわからなかったと思います。

私ひみ、ツインレイの彼であるスサナル先生、ひみのシリウス世における母であるけーこの3人が今回215話のベースではあるんですが、

各々の子供時代や過去世、ウニヒピリをさらに細分化させた精霊のような意識体たち、エゴセルフや顕在意識、男性性や女性性などなど、
私ひとりと対話をしている登場人物は3人どころじゃありません。
たとえば『烈火』とは私の内側にいる意識体の名前、それから最初に出てくる右半身(右手)は男性性であり彼のこと。次の右手はリトです。巫女体質をツールとし、他者の意識の霊媒となります。

なので面倒くさいと感じる方はそれで構わないのですが、逆をいえば、ツインレイ統合って、これほど複雑なものを解体しているんだということ。それらを知る機会を避けることは、統合を早める機会を逃しているのだということは伝えさせてください。

ツインレイの統合にあたり、私やけーこほどサイキックである必要はありません。霊視できなくても問題は何もないです。
でもね、感情のどこにフォーカスしたらいいか、自分と彼の何と何が繋がっているか。体験談としてそれらを知るということは、当然応用の下地になるということです。 

段階を踏んだ統合の様子や反発、ツインレイたちの視野の拡大のために高次元から贈られた教えなど、これからの地球の核となるために必要なことがたくさん降ろされています。 

ぜひ遡って、何回も読んで落とし込んでくださいね。

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←今までのお話はこちら

→第216話 図書館の回廊にシリウスの光が当たる

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