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第183話 産みの苦しみの果ての愛


 その夜は衝動的に、お風呂場にレムリアンシードクリスタルを持ち込んでいた。湯船に入ると少しの間、ここに来るまでに吸収されたクリスタル自体の不浄を溶かし出すように、手の中に入れてコロコロと遊ぶ。根拠はないけどどういう訳か、この水晶から発せられるエネルギーとはスサナル先生そのものだという気がしてならず、愛おしさが増していく。
 それからやがておへその真下に置きたくなって、下腹部の皮膚の上に優しく載せてみる。
 すると間もなく男の人の声がした。

「しばらくそのままでいろ。」

 ゆったりとクリスタルを意識し、呼吸を合わせていく。ところが一、二分すると、おへその内側で内臓がグルンと回転し、激しい痛みに襲われた。

……なにか始まった。浄化だ。

 生理痛の酷い時のような、子宮ごと潰されてしまうような痛みに襲われそれに伴って吐き気までしてくる。思い切り顔をしかめて痛みの波を何度かやり過ごすと、出産した時の陣痛みたいだなとふと思う。そうしてお腹と腰を庇いながら緩慢とした動きでお風呂から上がり、着る物も適当に鎮痛剤を飲み込んだ。

……

 その夜中、ベッドに横になると、サワサワと雑多な意識たちが抜けていく。私の内側で苦しんでいた般若の女の子に出会えたというのに、それでも子宮に溜まった闇や念といった老廃物は、まだまだたくさん残っていた。

 浅い夢を繰り返し見ていた。夢を見ながら別の私が、「今日は寝ながら夢で疲れるやつだ。」と思っている。
 そして、体感的に二時から三時くらいにかけて。朦朧とした眠りの感覚の中、その上がってきた浄化のひとつにとある過去世を発見した。

 ああ、そうだったんだ。私、ヤマタ先生のお母さんだったんだ……。

 この真夜中に、自分の体に覚醒の刺激を与えて再び腹痛を引き起こしたくなかった。
 敢えて意識を遠めに置いて、傍観者のような立ち位置からビジョンをただただ眺めていると、田舎の農家の家が視えてくる。昔ながらの縁側を挟んだ障子の向こうには田んぼが広がり、畳の上には小さな男の子が座って遊んでいた。

 生き別れ……

 そんなキーワードが入ってきた。
ぼんやりと眺める私の意識は半分眠りを求めていたので、当時の状況はゆっくりゆっくり、朝を迎えるまでに繋がっていった。

 目覚ましで起きてから、忘れないうちに頭を整理していく。
 以前、けーこに「自分があなたの息子だった」と伝えた時。その時彼女が私に言ったのは、「置いていかれるほうも辛かったと思うけど、置いていくほうも辛かったはず。」という言葉。
 まさにその時の、リトを置いていかなければならなかったミトの気持ちを知りたくて、この転生の時の私は幼い息子を手放して、母親としての生き別れの体験を選んだということが伝わってきた。
『疎開』。
第二次世界大戦中、何よりも大切な息子の命を守るため、やむなく私はこの子を手放していた。

 何故、ヤマタ先生からこれほどまでの好意を受け続けていたのか。何故、たった二言、三言の会話であれほど大喜びされてしまったのか。何故、彼のスサナル先生への嫉妬がこれほどまでに激しかったのか。そして何故、ヤマタ先生と私の名前に同じ漢字が使われていたのか……。

 リトの闇とそっくりだと思った。
ヤマタ先生にとって、求め続けたかつてのお母さんにようやく再会できたのに、そのお母さんは自分の存在に気づくこともなく目の前で他の男性に夢中になっている。忘却は慕情から恋心へと変わり、彼の中で更なる執念となって肥大した。
 道理でこれだけ憑依されるわけだと思うと申し訳なさでいっぱいになって、「ごめんなさい。」と呟くと、涙が一筋頬を伝った。

 そしてまた、ミトであったけーことは、自分は実生活の中で絡んでいくことでリトの浄化ができたけれど、残念ながらかつての息子とはもう三次元で会うこともなく、四次元側から浄化を続けていくしかなかった。

 遥か地球の真裏からやってきたクリスタルにお礼を言いつつ、そうしてまた少しずつ、ヤマタ先生の過去世を解体していった。



written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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ツインレイの統合を目指すっていうのは、ツインレイの彼だけをどうこうすればいいという訳ではなくすべての人間関係の清算です。なので本当、目の前の人間関係を全部やりきってください。
私のように過去世を視てひらけなくても、方法はいくらでもあります。
過去に好きだった人、お付き合いしてた人、今付き合ってる人、それに家族や友人。
(自己犠牲の上で彼らの要求を満たすのとは違いますので、そこはご注意。)
幽体だろうと実体だろうと、やりきったら自然と離れていきます。
どこかで書けたらいいのですが、おもしろいことにあきらの場合、小学校、中学校と、実体でやりきってすでに大きな精算を二件も終わらせています。(憎悪が付随するタイプではなかったようですけど。)
ここまで読んで、「でもあいつだけは嫌だなー。できることなら避けて通りたいなー。」って誰かしらの顔が浮かびました?だけどこの小説を今まで読んできた方なら大丈夫。あなたのペースでいい。
いいけどそろそろ、精算の時かもしれませんよ。

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→第184話 出航の時、meetoo ship

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