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l Love You and Yours【お気に入り保存箱】

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また読み直したいものを勝手に放り込んでゆくところです。 勝手に入れますが、御容赦ください。
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#詩

眠れる椅子

眠れる椅子

もうこの脚では
人間たちの苦悩も
憂鬱も支えられないからと
粗大ゴミとして
収集場所で寝転んだ日
椅子は初めて
空の青さを知った

これで安らかに眠れる
本当に美しいものを
目の当たりにして
心に何の澱みもなく
終わりを迎えられる

椅子の脚が
ほんの少しだけ震えているのを
隣に立て掛けられた
ハンディ掃除機は見ていたが
そっとしておいてやる事にした
存分に働いたんだ
椅子にだって夢見る権利はある

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【詩】夢の跡

色とりどりの喧噪が
数多沸き立つ空間で

たった一つ
心に届いたあなたの声に
そっと寄り添う夢を見た

届く言葉の
人恋しい切なさに
そっと甘える夢を見た

差し出す手の
温もりの誠さに
そっと安らぐ夢を見た

夢と知って夢を見た

覚めると知って夢を見た

今どうしていますか

ひとすじにひかる大河の雪解けよ

ひとすじにひかる大河の雪解けよ

季語:ゆきどけ( 仲春 ) 現代俳句

雪解けは、春がきて雪が解けること

雪解けの時期、
河などの水量も一気に増えはじめるそうです

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【詩】る、る、る

【詩】る、る、る

彼の唯一の関心は素数である。
る、る、る、と私が歌ったところで全く意味はない(それでも絞りだした悲鳴が歌なのだけれど)

私はあの日あの日あの日幕張付近で京成線の踏切を渋滞する車の後部座席から眺めており――遮断機がひどく疎ましかった――風景から色彩がどんどん失われていくのを、ただ茫然と見送っていた愚かなカモメであった。だから?

もう笑うべきなのだ。ろくに弾けなかったギターの、錆びた一弦だけを使え

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詩:反骨々格

外骨格、と言って、
おれ、マジ、はんこつしんしかないから、
と、若い男たちが地べたをずらずら、
している。
酒に飲まれて?
ぴくぴくと横たわっている者もいる。
すえた空気をマスクごしに吸い込む、
人だかりの駅です。

こころ、に隆起したポリープに、
ときどきは星あかりなどと言う、
あなたたちが好きだよ。
ここは楽しいキャンプ場です。
ごちゃり、わたしの心が酔狂しています。
前世紀のレスラーが、

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おきよ

おきよ

事務机の引き出しを開けると
そこには丘陵みたいなものがあり
頂きの白っぽい通信塔から
ヒトの鼻の嗅球に
オカラみたいなものを放射する

丘陵みたいなものに立つと
向こうに海みたいなものが見えて
輪っかのある惑星みたいなものが
半分くらい沈みかけていて
惑星みたいなものに立つ建物には
おきよという事務員がいる

望遠鏡で覗いてみると
おきよは黒い腕ぬきを外し
経理の仕事を放っぽり投げて
向井のチ

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未来の詩人がお通りだ! 【詩】

未来の詩人がお通りだ! 【詩】

あいつら
いろんな格好してやって来る

エッサ ホイサ

鉢巻したり、軍服着たり、全身にLEDつけたり

エッサ ホイサ エッサ ホイサ

ピノキオの鼻つけ、白熊の毛皮着て、ユニコーンの角生やして

ユッサ ホイサ パンダ コッぺパンダ

全身タトゥーの龍さん寅さん
コワイお姉さん 頬っぺた蟲だらけ

びよーん

日が昇ってきたね
あああたたかい
小洒落たイングリッシュガーデンで
のびやかにお茶し

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【詩】霧氷

【詩】霧氷


枝に寄り添う霧氷が
眩しそうに輝きながら
溶けてゆく

散りゆく姿の可憐さに
そっと沸き立つ微笑みの
響き渡る暖かさ

いつしか笑顔は
するものになっていた
型にはまった笑い顔
奥底が冷えていく

綺麗なだけではない日々で
そういう時は
心が喜ぶものを探して

詩 「note」

詩 「note」

今日もぼくは
noteの重い扉を開け
いつものように
ここに来た

noteというのは
この図書館の名前で
今きみがいるところ

さあ
ここへどうぞ
ぼくの隣の席でいいかな

ぼくの今日のノートは
noteについて書くつもり

「note」

noteには
何万 何百万もの
椅子とテーブルと本棚があり
人々は毎日ここにやって来ては
作業をしたりノートを読んだりする

ここにいる人たちの大半は
ノー

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男の子ってバカみたい

ちんちんが付いているのは
恥ずかしい事でもなんでもないのですよ、と
シスターはロッテに語ったが
彼女は納得しなかった

どうしてこうも
美しくデザインされた人体に
こんなにも不恰好な角が
取り付けられなければならなかったのか
神を模して作られたはずの形の
なんという欠陥

ロッテの不満が
神への不信の域にまで達しようとしていた頃
隣ではイサークが鼻水を垂らしていて
彼女はハンカチで丁寧にそれを拭い

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暗渠

暗渠

山の斜面の家と家の間の、曲がりくねった歩道の裏側を下りて来た暗渠は、海岸線の国道脇に立つゴミ収集ステーションの手前でコンクリートの蓋が無くなり、幅狭な水路に変わる。だがすぐにアスファルト道路の裏側を横切り、海辺の家と家の隙間に開口する。流れ落ちる水が引き潮の砂泥に浸み込み、庇の影がその上に落ちる。左右のコンクリートの縁はもう少し続き、庭先の海岸堤防の開口部で終わる。石積み造りの突堤が湾曲しながら海

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詩56/   違和感ある日常

詩56/ 違和感ある日常

「違和感」は
僕のことが好きで
「違和感」は
いつも僕にじゃれついてくる
「違和感」は
べとべとしていて
ごろごろ転がりながら
まわりの「違和感」も
くっつけながら
巨大な「違和感」の塊になっていく
そして
自分の大きさも顧みず
いつも通り
じゃれるつもりで
僕のほうに転がってくる

こいつに関しては
よくあることだ
好かれているからといって
相手にしてはいけない
こういう時は
逃げるに限る
塊が

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春雷

春雷

薄曇りの街を引き裂いて
季節はめくられていく
眠っていた赤ん坊が
火のついたように歌い出す

明日の雨さえ幸福へ繋がっているのだと
渡り鳥は語った 強い眼差しのまま

詩 雪だるま

詩 雪だるま

踏み切り待ちの
道の脇で、

小さな雪だるまを
見つけた。

僕はその雪だるまを
見つめてる。



すると
景色は淡く揺れ、

そして
意識がボンヤリずれる。

意識が過去に飛んでいく。

意識は過去に張り付いて、
目の前の景色に重ね合う。

懐かしい感情が
僕のこころを捉えて、

記憶の底を
手繰り、手繰る。

けれども
糸は切れていて、

感情だけが
取り残される。



景色は日常へと

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