白水

「白水」の言葉は陶淵明の詩から拝借しました。白水は米の磨ぎ汁のことで昔はそれを煮沸して洗髪に用いたとのことです。洗い流されて跡すら残らない白水。少しでもあなたの心に触れるものがあれば幸いです。

白水

「白水」の言葉は陶淵明の詩から拝借しました。白水は米の磨ぎ汁のことで昔はそれを煮沸して洗髪に用いたとのことです。洗い流されて跡すら残らない白水。少しでもあなたの心に触れるものがあれば幸いです。

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詩 冬のパレット

公園の芝生はパレット 黄の点が散らばって 赤の点が隙間を埋める 緑は淡く浮かんでる イチョウの並木 落ち葉が散って 雨に濡れて色が濃く 黄と赤と緑の色が パレット上に彩られ 描かれるのをじっと待つ 冷たい雨で色を溶き どんな画を描こうか 眺めながら考える

    • 詩のようなもの 望月の歌

      *はじめに 今年11月16日の月は藤原道長が見た望月と ほぼ同じ形らしい。 (ニュースで知りました) その日、僕の街の夜空は曇り続きで、 月は雲の裏に隠れていた。 それから2日ほどが過ぎた夜の月は、 欠けた月がハッキリしていたけれど、 今まで見た中では一番美しかった。 今僕は、古人が1000年前に見上げた月と 同じ月を見ているのだと思った。 古人は少し欠けた月を見上げて歌を詠んだ。 僕は学校でこの歌を学び、これは古人が 我が世の春を詠んだ歌だと教わったが、 1000年の時を

      • 俳句 冬の静けさ

        前書き 静まり返った部屋 テレビは沈黙したまま 暗い部屋の中 電気は点けない 椅子に独りで座る 忍びよるもの ざわつくこころ 今始まったわけではない 冬の夜更けに 忘れたものが浮かぶ 俳句 虫の音や 聞こえぬ冬に 枯れ葉鳴る 冬の夜に 訪れもなく 更けてゆき

        • 短編小説 矢印の旅

          だいぶん昔のことだ。その頃、付き合って いた女性がいた。彼女は少し変わった ところがあって、デートで食事が終わった後 タバコを吸ってると決まってこういうのだ。 「何かお話しを聞かせてくれる?」 僕は付き合った女性が多いわけではない がデートの最中にお話しをせがんでくる女性 はあまりいない。 僕は売れない物書きのような仕事をして いたから、即興で物語を創るのは好きだ。 だから彼女に話を聞かせるのは楽しい。 彼女は話を聞いた後の感想をいうわけでは ないが、 「今日も面白い話し

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        記事

          詩 朝の光彩

          イチョウの葉の緑は映えて 雑居ビルの壁は白く光る 照り返す朝の光 空の青を透明にする 突き抜ける青の色 変わりゆく青 空の一面に満ちて 光と青は混ざり合い 空の青が溶けて 光は降りそそぐ 突き抜ける青の色 秋空の下にいた

          詩 朝の光彩

          俳句 秋の煌めき

          前書き 街の体育館の前を通る 剣道の気合の声 ビーとなる笛 黒袴を着た学生たち 空は曇っていたけれど 秋が煌めいていた 俳句 街響く 気合や届け 秋の雲 秋の空 雲の彼方に 黒袴

          俳句 秋の煌めき

          詩 ギンナン

          イチョウ並木を歩けば たくさんのギンナンが 道に落ちている 雨の日であればさらに たくさんのギンナンが落ちて 傘をさして拾う姿を見かけた 今、たくさんのギンナンが 道行く人に踏まれている 割れた殻が道端に積もる 拾う人がいなくなったのか もういらなくなったのか 踏まれて割れたギンナンの 割れた殻の山を見る ひとつひとつの殻の中 拾われたのは秋の心 拾われぬのも秋の心 雨に打たれイチョウから 落ちた心を救ってくれる 救われる日を待ち続けている

          詩 ギンナン

          詩 洗濯日和

          朝 カーテンを開けると 空は青く 晴れていた 窓を開けると冷たい空気 ベランダには冷たい風 風に揺れて 風に揺れて 横に斜めに 真っすぐに 同じ場所に 留まらず こんなに忙しく動いても この場所からは動けない お日様だけが僕を見て 僕のことを照らしてる ポカポカ温まる日差しで 気持ちよく乾くだろう

          詩 洗濯日和

          俳句 しぐれ

          前書き 雲ひとつない青い空に 晴れ切らない心が映る 袖を濡らすしぐれに 心がしみる 夜の街灯りを眺めてる 俳句 青空に 心映るや しぐれかな 秋更けて 星の瞬き 夜は濃く

          俳句 しぐれ

          詩 枇榔樹

          *はじめに 田中一村の「枇榔樹の森」を見て 感じたことを詩にしました。 * 詩 南国の深い森の中 枇榔の樹が空を覆う 薄暗い森を枇榔の葉が スコールのように降りそそぐ 真っ青な蝶が白い花にとまり 傘をさしたように そこだけ光が射している 止むことのない雨の中でも 心にさす傘はいつもあるのだと 蝶の青さが教えてくれた 遠い南国にある枇榔の森 音のないその森の中で 真っすぐ伸びる枇榔の葉に 自らを重ねて心が安らぐのは 僕だけではないはずだ

          詩 枇榔樹

          エッセイ 田中一村展

          *はじめに 画の展覧会に行ってきたのですが、 見出し画像以外、写真はないです。 文章ばかりですいません。 この感動が伝わればよいですが。 * 東京都美術館で「田中一村展」が開催中だ。 僕も行ってみた。 上野駅の公園口から一直線。正面にある 上野動物園の近くを右に曲がると東京都 美術館だ。正直、僕は驚いた。 かなり久しぶりに上野に来たのだが、 こんなにオシャレな街になっていたんだ。 途中、国立西洋美術館で「モネ睡蓮のとき 」の展覧会も行なわれていて人が溢れてた。 少しだけ、そ

          エッセイ 田中一村展

          詩 暮れる秋

          夕暮の秋の並木道を 落ちた銀杏を気にしながら歩く 目の前には手をつなぐ若い男女 白い手と手のつながりが 道に落ちた銀杏に映えていた 昼間はまだ少し暖かくても 日が暮れるにしたがい肌寒くなる 手にクリームを塗りすり合わせ 少しだけ温もりを思い出す 洗濯物をとり込みながら 暮れてゆく空を見上げる 一枚一枚をたたみながら たたんだ服を見つめている 夕餉の支度をしていれば 包丁の音がここち良いけれど 食事の時間はすぐに過ぎる 椅子に座りお茶を飲み本を読む 外から虫の声がして

          詩 暮れる秋

          詩 落ちた柿

          晴れた空が気持ちの良い日 空気は少しひんやりと 陽ざしは母の手のようにやわらかく やさしくからだを抱いている 道に落ちてる柿の実は 朱く艶やかに色づき やっと熟したというのに その喜びを分かち合う前に 道に落ちて割れていた 命の儚さを思うけれど 目の前の風景を切り取って 画にすることができるなら 画の中の落ちた柿の実は 画家の心そのものだろう やがて全てが枯れ果てる 灰色の季節が訪れる 木々は枯れて押し黙り 大地は固く冷たく閉じる 今はただひたすらに 生への感謝しかない

          詩 落ちた柿

          詩 時計がなくなった日

          時計がなくなった。 時を刻むために必要な鳥がいなくなった。 昨日、突然に。 頭の中にあった鳥が逃げてしまった。 さっきまで、鮮明に見えていたのに。 頭の中で飼っていた鳥が逃げだした。 翠と赤のきれいな鳥だった。 鳥は僕にこういった。 「君の時計はわたしが動かしている。 もう必要ないから、わたしは行かなければならない。」 鳥が飛んで行くのを眺めながら、 僕の時間がなくなったことを知った。 僕は太陽や風や木や鳥たちのように、 今しか時がなかった。 一瞬一瞬に命が燃えている

          詩 時計がなくなった日

          俳句 秋の終わりに

          俳句 川映る 流れる雲や ゆらぐ今 女郎蜘蛛 巣の真ん中で 冬を待つ 木守柿 行き先告げず 残す蔕 仰ぐ葉や 柳そよげば 緑ふる 詩 路地裏の風景 路地を一人歩いてる 塀の向こうはトタンの工場 休日で誰もいない 道の真ん中にうずくまる猫 ニャーニャーとないている 向かいの家の前を通る 孫が手を引くおじいさん 庭先に連れていかれる 空は雲に覆われてても 雨はまだ降りそうにない 白い小さな犬を連れた 白髪の婦人を追い越す 曲がり角を曲がると 出口の見えない塀が続い

          俳句 秋の終わりに

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          *はじめに この物語はフィクションです。 * 世界はすでに満員だった。この星の定員を オーバーしていた。水や食料、エネルギー など、あらゆる資源が不足し、争奪戦が 激しさを増し、あちこちで戦争がおきて いた。 世界のリーダーたちはこの事態を深刻に 受け止め、緊急の国際会議が何日も何日も 続けられた。その結果、緊急措置として、 世界はひとつの政府となった。 人類が始まって以来、初めての事である。 この世界政府によって人々は平等に職業が 与えられ、平等に食事が分け与えられ、 時

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