#小説
小説 :『チョコレート』
最後にキャッチャーフライを打ち上げると、シートノックは終わりだ。
俺は監督が集まった選手に話をしているのを少し離れて聞いている。
冬の間はほとんどボールを持つことがない。
走り込みや筋力トレーニングで体を作る。
ボールを持つとしてもせいぜいキャッチボール程度だ。
2月に入ってから少しずつボールを使うようになってきた。
シートノックやバッティング練習。
投手の本格的な投げ込みも始まっている。
選抜出
『未来から来た嫌なやつ』
そもそも僕は人生に絶望していた。
ほとほと生きるのが嫌になっていた。
こんなことを言うともう長年この世界にいるように思われるかもしれないけど、まだ17年しか生きていない。
何を生意気なことをと言われるかもしれない。
でも、絶望するのに年齢制限なんかないはずだ。
そんなことを言うのなら、もっとマシな人生を用意してくれてもよかったんじゃないのか。
高校受験には失敗して、第3志望の学校に通っている。
『世界の終わりの朝食』
突然、ヘッドライトが暗闇に飲み込まれた。
急ブレーキを踏む。
道はそこで終わりだった。
その遥か向こうで月明かりに光る波頭が、その下は海であることを示している。
「ふー、ここまでか」
俺は、ヘッドライトを消し、ギアをパーキングに入れた。
シートに体を預けると、自然に小さなため息が漏れる。
「ほい」
助手席から煙草が差し出された。
「持ってたのかよ」
「うん、死ぬ前には、もう一度吸ってからと思ってね