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「ノルウェーでサバを買っていたはずなのに、気づいたら厨房でビリヤニを作っていたんだ。」 【短編エッセイ】
私は新卒で入社した会社で、ノルウェーの企業からサバの買付をする仕事をしていた。世界を股にかけた仕事。長期の海外出張にも行くチャンスに恵まれ、夢にまで見た仕事だった。
しかし、そこにいた2年間、私はまるで悪魔に取り憑かれてしまったかのような顔で日々を送っていた。理想と現実のギャップ。責任と重圧からの逃避。何より、人間関係の苦しみを耐え凌ぐ術しか日々考えられなくなっていた。
そんな私は現在、東京郊外
ナポリタンムッシュ⑥ #どこにでもいる普通のサラリーマン
「へぇ、年齢にしては見た目に貫禄があると思っていたが、なかなか立派に仕事をしているじゃないか。」
自分の仕事内容を聞いた店主に感心された事に、なんだか少し嫌気がさして、それをはね返すように弱音を吐いた。
「最近は焦ってしまって、どうしたら売れるか考えすぎなんですかね?」
「商売ってのはシンプルだよ。それにタイミングってのもあるからな。いい時もあれば悪い時だってある。ただ、悪い時に頑張れる人っ
コーヒーの味はブラックホール
このカフェに来るまで、コーヒーの味といえば「苦い」とか「酸っぱい」とか「香ばしい」くらいの表現しか持ち合わせていなかった私だが、ここ最近はその違いに触れるたび、わずかながらだが新しい表現も覚えてきた。
苦いと言っても、カカオ感だとか、ロースト感だとか。はたまた、黒糖っぽい甘さを含んだ苦みだったりだとか。
酸といっても、柑橘系だとかベリー系だとか。はたまたキウイをギュッと凝縮したみたいな酸っぱさ