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ナポリタンムッシュ② #どこにでもいる普通のサラリーマン


営業マンになってそれなりの年月がたった頃だった。私が1人で担当することになった商材ができた。

海外との取引がメインの事務所に所属をしていた為、若手としては異例の早さで大口の商売を任されることとなったのだ。出張を重ねて多くの商売を決め始めた自分は、鼻が高かった。半年後には海外出張も控えており、自分の中の「やり手のサラリーマン像」に向かっていっていると勝手に舞い上がっていた。

最初はとにかく順調すぎた。基本的に大口の商売は、物を買う前に売り先と商談をして、ほとんど商売を決めている。販売が始まってからは信じられないスピードで自分の売上日報の数字の桁が増えていく。まさに快感だった。ボーナスの額を見た時は、上がる口角を抑えきれなかった。

今まで溜まっていた欲望の火山が噴火してしまったのだろう。苦しいことに耐えた自分へのご褒美だと散々調子に乗った。ブランドの服を買ったり、高い寿司や焼肉なんかも贅沢に食べた。羽目を外して、柄にもなく先輩や友人とキャバクラなんかにも遊びに行った。

あの時の自分は、「”お徳用”独身サラリーマンの悪い所詰め合わせパック」みたいな生活を送っていた。

あんな事態が起こらなければ…。

ある日を境に突然、自分の担当する商材が全く売れなくなったのだ。

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