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【小説】水のない海岸
九州の片田舎の無人駅は、街と街を繋ぐ幹線道路沿いにあった。
道路にはたくさんの車が団子のように列をなしていて、どれもが異なる地名のナンバー・プレートを提げていた。運転手は誰もが退屈そうな顔をしている。
私は「ボーイスカウト・ろっかく化石発掘隊」と書かれたプラスチックの札を首にかけた小学生の間を縫って、車両の先頭にいる車掌に切符を見せた。無人駅ではこうやって降りるのが通例であるようだ。
当駅での
ある子ども 01-05
01
木曜日の夕方、部屋に続く階段を昇る音が聞こえた。
私は鉢植えに水をやっているところだった。足音の主が大家だということはすぐに分かった。やけに乾いたサンダルの音が聞こえたからだ。私はジョウロを床に置いた。
ベルが鳴ってすぐに扉を開けると、やはり彼だった。痩せた老年の男は、赤いチェックシャツの上に紺のエプロンをしていた。白髪は短く剃ってあり、適度に日焼けしているので、老いたテニスプレイヤー
【日記】旧山手通りと、寂しさ
おしゃれな旧山手通りを散歩したときに、ふと感じた寂しさを考察しました。
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先日、久しぶりに長い散歩をした。まだ涼しい朝の6時半に集合し、僕らは行く当てもなく都心へと向かった。半分くらい眠ぼけている都心の真ん中、日比谷公園のベンチにひとしきり座った。蝉が鳴いていた。並んでいるベンチには、朝の散歩をしている中年の男性が点々と座っていた。それから僕らは代々木上原に行って